「今日は何限で終わり?」
「4限で帰る予定、良樹は?」
「じゃあ、晴矢の事待っている」
「え、いいよ先に帰って」
「なんでだよ、俺が待っていたら嫌か?」
「なわけないだろ」
GW明け、大学に向かう道すがら今日の予定を確認する。
晴矢と俺は同じ経済学部に進学したが、選択している授業が微妙に異なるため常に一緒に居られるわけではない。
そのため、毎日予定を合わせるようにしている。
同じ家で暮らしているわけだから朝から晩まで一緒に居る必要は無いけれど、どちらかというと俺の独占欲が勝っている気がする。
それでも晴矢が拒否してこないのを見ると、迷惑ではないらしい。
「一緒に帰らないと何があるかわからないからさ」
「ねえ、俺たち二十歳だよ? いい加減大人だろ」
「でも、晴矢はいつまで経っても俺から見たら危なっかしい子供だから」
「エラそうに!」
キーちゃんにサークル活動にも参加していないと言われたが、一年の入学時に俺は体育会系のバスケ部の勧誘を嫌というほど受けた。
小学生の時からずっとバスケを続けてきたが、プロになるつもりもなかったし辞めるタイミングを計っていた為、断った。
体育会系ではないバスケのサークルも晴矢と幾つか体験入部をしたが、試合よりもその後の飲み会や合コンに力を入れている感じが無理だった。
結果、二人とも帰宅部となっている。
「バイトのことどうするの?」
「とりあえず探すけど。何がいいのかな」
「良樹がコンビニのレジに居たらちょっとビビるかも……」
「おま……まあ、わかるけど」
「だよね。じゃ……」
「先野!」
晴矢が何かを言おうとすると、晴矢を呼ぶ声が聞こえた。
「庄野! おはようー」
晴矢と同じ講義を取っている庄野圭だ。
大学で出来た新しい友達。
中学、高校とずっと内進者としかつるんでいなかった俺たちにとっては新鮮だ。
「今日レポート出す日だよな」
「うん。バッチリまとめてきたけど」
「……俺、ヤバいかも」
「え、やってこなかったのか?」
正直、俺は庄野のことはよく知らない。
たまにこうしてキャンパスの中で顔を合わす程度だが、晴矢は俺が居ない時にはよく一緒に過ごしているらしい。
「まとめてはきたけどさ……」
「じゃ、ちょっと俺の見る? 参考にするところあれば」
「悪い! っていうか先野が居なかったら俺あの講義生きていけないかも」
「大げさだな」
楽しそうに話している二人の間に入れない場合が多い。
常に庄野の周りには人が集まっている。
明るくて快活で、誰に対しても愛想よく出来るタイプ。
どちらかというと内に籠りがちな俺たちとは真逆なのに、何故か晴矢とよくつるんでいる。
庄野は俺に対しても晴矢と同じように親しげに接してはくれるけど、俺自身がそのノリについていけない。
「俺1限、K棟だから、そろそろ行くわ」
「うん。後でLINEして」
「またな手島―。でさあ、ここだけど……」
俺は何となく離れがたがったが、背を向けてK棟に向かう。
後ろでは二人の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
何も心配する必要は無いのに……嫉妬深い自分が嫌になる時がある。
こういう時、ブチが居たらどういう助言をしてくれていたのだろう。
🔸🔸🔸
1限の講義が行われる教室に入る。
広い講堂だが人気のある教授で席はいっぱいになる。
「おはよう、手島くん」
「おはよう」
大学に入って一番変わったことは、周りに女子が居ることだ。
ずっと男子しかいない環境で過ごしてきた身としては新鮮だが、最初はどう対応すべきかわからなかった。
ただ話すだけなのに意識してしまうこともあり、図体がデカいのも相俟ってヘンな奴と思われていそうだった。
そんな中、最初に仲良くなったのが伊東るり子だ。
一年生の必修科目で俺の後ろの席に座っていた彼女が俺の座高が高いため、黒板が見えないと抗議してきたことがきっかけだった。
――悪いんだけど。黒板が見えないから私と席を変わるか、移動するか、ノートを貸してくれるか三択から選んでもらえる?
初対面でいきなり三択を提示されたことに驚きつつ、その話し方や考え方がサバサバしていて、女子への免疫がほぼ無い俺でも普通に会話していた。
見た目はおしゃれな女子だが、言い方は悪いが女性を意識させないところがあり、俺は必要以上に気を遣うことなく接することが出来る。
二年生になった今でも同じ講義を取ることが多く、俺にとっては彼女も新しい友達だった。
「近いうちに抜き打ちテストするって噂よ」
「マジで? そんな変化球する先生だっけ?」
「よくわかんないけど。だから予習している」
「エラいなー伊東さんは」
「そうは言うけど大して勉強しなくてもいざとなったらAとか普通に取るんでしょ、手島くんは」
「ん-どうかな」
「うわっ! その自信満々な感じがムカつく」
伊東さんとの会話は楽しい。
晴矢と三人で同じ講義を取ることもあり、既に紹介済みだ。
ただ、俺と晴矢との関係は知らない。
「この間、サークルの後輩に言われたんだけど。今の一年に先野くんのファンが多いらしいよ」
「ファン?」
「そうそう。彼って附属高校の時から有名だって聞いたけど。私、地方に住んでいたから知らないけど」
「……そうなのかな」
「手島くんのファンもいるらしいけど」
「いるらしいって……。俺にファンなんか居ないだろう。どっちかっていうと怖がられてそうだけど」
「そうかな? 私はどっちかっていうと手島くんの方がいいけどね」
「はぁ?」
伊東さんは俺をからかうように楽しそうに笑っているが、俺は晴矢のファンが多いという彼女の言葉が引っかかった。
高校の時でも晴矢は目立つようなことはしていなかったから、有名だったという言葉に違和感がある。
バレンタインの時期になると人気の学生は校門の外や最寄りの駅で女子高生が出待ちのように待っていることも多かったが、晴矢に関しては一度もなかった。
「私が同じ講義取っていたりするからか、紹介してくださいとか言われてハッキリ断ったところ」
「ふーん、そうなんだ」
「……先野くんに彼女はいないの? あ、こういうのセクハラっていうかプライバシー侵害になるかな……」
俺はどう答えるべきか迷った。
『彼女』は居ないが、『恋人』はいる。
っていうか、君の横に。
「俺が話す事じゃないよな」
「だよね。ごめん。聞き流して」
伊東さんの良いところはこういう潔いところだ。
回りくどい言い方もしないし、しつこく聞いてくることもない。
だから話しやすい。
晴矢が女子から人気があっても不思議ではないが、それを聞いた俺自身は面白くはない。
男子高という閉じた世界から共学の大学という開いた世界に足を踏み込んだ今、様々な変化に未だ戸惑っている自分がいる。
🔸🔸🔸
『昼飯、庄野も一緒でもいい?』
晴矢からLINEが着た。
庄野とまだ一緒に居るらしい。
ただ昼飯を一緒に食べるだけだとしても、俺は少し不満に思ってしまう。
そんな心の狭さに自分でウンザリしている。
『いいよ。学食で待っている』
心の中で思っている事と反対の返事をする。
「二人ともサークル入らないんだなー。なんで?」
学食でラーメンをすすりながら庄野が唐突に聞いてくる。
そんなにサークル活動って重要なことなのか?
「特に入りたいサークルも無かったし。興味ないところに時間かけたくないし」
「うわー。先野って見た目と違ってドライだよな。大学って一番自分が解放される場所だと思っていたけど、内進者は違うのかな?」
「どういう意味?」
「いや、普通は高校生活って部活もしつつ大学受験に向かって三年間勉強に心血注ぐわけよ。で、希望の大学に入れた瞬間、その抑圧されていたものから全て解き放たれて自由をゲットできるわけよ。そういう段階を経て今があるからさあ、何でもやりたいって思うんじゃないのかなって」
「……そうなのかな」
「でもこの大学の附属校に通っていたってことはそれなりに裕福で、受験の心配もないし高校生活も自由に送れていたんだろうなと思うと、今さら大学デビューでもないのかな」
庄野の言いたいことは理解できた。
確かに俺たち内進者は大した苦労もなくそのまま大学へ進学出来ているし、高校三年間かなり自由に過ごせてお金の苦労もしていない。
そういう意味では内進者と外進者とは少し溝があるのかもしれない。
「それとサークルを結び着けるのはちょっと短絡的すぎない? 俺たちは興味あるものが無かったっていうそれだけの理由だけど」
晴矢がスプーンで皿をつつきながら不機嫌そうに話す。
確かに勝手な推測で線引きされたくはない。
「でもさ、手島はバスケ部から勧誘されていたんだろ? 高校選抜にも選ばれたぐらいなのに断る理由がわかんないけどなー」
「俺はもうバスケは散々やってきたし、プロになるわけでもないのに体育会系の厳しい所に身を置きたくないだけだよ」
「そういうもんなのかね~。何不自由なく青春を謳歌してきた内進者の気持ちは田舎者の俺にはよくわからないや」
庄野の言い方が鼻に付く。
自分で話を振っておいて自分の納得がいく答えを得られなかったからといって自虐的な物言いをする。
「まあ、いいや。で、4限終わったらどこ行く、先野?」
「え……うん……」
晴矢は俺をちらっと見ると言いにくそうに顔を下に向けた。
4限が終わった後に庄野とどこかに行く予定があるのか。
「……良樹も一緒にどうかな?」
相変わらずスプーンで皿をつつきながら晴矢が遠慮がちに言う。
前に座る庄野はラーメンをすするのに忙しいが、恐らく俺が一緒に行くことを想定していないだろうと推測する。
「……俺は用事ができたから無理。二人で行って来いよ」
俺は残っていた味噌汁をかっこみ、晴矢の反応を目に入れないようにした。
「わりぃなー手島。今度誘うよ」
俺の返事に庄野の声が一段と大きくなったような気がした。
俺はイラつく気持ちを抑えながら微妙な笑顔で返した。
新しい友達……その関係性は維持すべきだがやはり面白くはなかった。
「4限で帰る予定、良樹は?」
「じゃあ、晴矢の事待っている」
「え、いいよ先に帰って」
「なんでだよ、俺が待っていたら嫌か?」
「なわけないだろ」
GW明け、大学に向かう道すがら今日の予定を確認する。
晴矢と俺は同じ経済学部に進学したが、選択している授業が微妙に異なるため常に一緒に居られるわけではない。
そのため、毎日予定を合わせるようにしている。
同じ家で暮らしているわけだから朝から晩まで一緒に居る必要は無いけれど、どちらかというと俺の独占欲が勝っている気がする。
それでも晴矢が拒否してこないのを見ると、迷惑ではないらしい。
「一緒に帰らないと何があるかわからないからさ」
「ねえ、俺たち二十歳だよ? いい加減大人だろ」
「でも、晴矢はいつまで経っても俺から見たら危なっかしい子供だから」
「エラそうに!」
キーちゃんにサークル活動にも参加していないと言われたが、一年の入学時に俺は体育会系のバスケ部の勧誘を嫌というほど受けた。
小学生の時からずっとバスケを続けてきたが、プロになるつもりもなかったし辞めるタイミングを計っていた為、断った。
体育会系ではないバスケのサークルも晴矢と幾つか体験入部をしたが、試合よりもその後の飲み会や合コンに力を入れている感じが無理だった。
結果、二人とも帰宅部となっている。
「バイトのことどうするの?」
「とりあえず探すけど。何がいいのかな」
「良樹がコンビニのレジに居たらちょっとビビるかも……」
「おま……まあ、わかるけど」
「だよね。じゃ……」
「先野!」
晴矢が何かを言おうとすると、晴矢を呼ぶ声が聞こえた。
「庄野! おはようー」
晴矢と同じ講義を取っている庄野圭だ。
大学で出来た新しい友達。
中学、高校とずっと内進者としかつるんでいなかった俺たちにとっては新鮮だ。
「今日レポート出す日だよな」
「うん。バッチリまとめてきたけど」
「……俺、ヤバいかも」
「え、やってこなかったのか?」
正直、俺は庄野のことはよく知らない。
たまにこうしてキャンパスの中で顔を合わす程度だが、晴矢は俺が居ない時にはよく一緒に過ごしているらしい。
「まとめてはきたけどさ……」
「じゃ、ちょっと俺の見る? 参考にするところあれば」
「悪い! っていうか先野が居なかったら俺あの講義生きていけないかも」
「大げさだな」
楽しそうに話している二人の間に入れない場合が多い。
常に庄野の周りには人が集まっている。
明るくて快活で、誰に対しても愛想よく出来るタイプ。
どちらかというと内に籠りがちな俺たちとは真逆なのに、何故か晴矢とよくつるんでいる。
庄野は俺に対しても晴矢と同じように親しげに接してはくれるけど、俺自身がそのノリについていけない。
「俺1限、K棟だから、そろそろ行くわ」
「うん。後でLINEして」
「またな手島―。でさあ、ここだけど……」
俺は何となく離れがたがったが、背を向けてK棟に向かう。
後ろでは二人の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
何も心配する必要は無いのに……嫉妬深い自分が嫌になる時がある。
こういう時、ブチが居たらどういう助言をしてくれていたのだろう。
🔸🔸🔸
1限の講義が行われる教室に入る。
広い講堂だが人気のある教授で席はいっぱいになる。
「おはよう、手島くん」
「おはよう」
大学に入って一番変わったことは、周りに女子が居ることだ。
ずっと男子しかいない環境で過ごしてきた身としては新鮮だが、最初はどう対応すべきかわからなかった。
ただ話すだけなのに意識してしまうこともあり、図体がデカいのも相俟ってヘンな奴と思われていそうだった。
そんな中、最初に仲良くなったのが伊東るり子だ。
一年生の必修科目で俺の後ろの席に座っていた彼女が俺の座高が高いため、黒板が見えないと抗議してきたことがきっかけだった。
――悪いんだけど。黒板が見えないから私と席を変わるか、移動するか、ノートを貸してくれるか三択から選んでもらえる?
初対面でいきなり三択を提示されたことに驚きつつ、その話し方や考え方がサバサバしていて、女子への免疫がほぼ無い俺でも普通に会話していた。
見た目はおしゃれな女子だが、言い方は悪いが女性を意識させないところがあり、俺は必要以上に気を遣うことなく接することが出来る。
二年生になった今でも同じ講義を取ることが多く、俺にとっては彼女も新しい友達だった。
「近いうちに抜き打ちテストするって噂よ」
「マジで? そんな変化球する先生だっけ?」
「よくわかんないけど。だから予習している」
「エラいなー伊東さんは」
「そうは言うけど大して勉強しなくてもいざとなったらAとか普通に取るんでしょ、手島くんは」
「ん-どうかな」
「うわっ! その自信満々な感じがムカつく」
伊東さんとの会話は楽しい。
晴矢と三人で同じ講義を取ることもあり、既に紹介済みだ。
ただ、俺と晴矢との関係は知らない。
「この間、サークルの後輩に言われたんだけど。今の一年に先野くんのファンが多いらしいよ」
「ファン?」
「そうそう。彼って附属高校の時から有名だって聞いたけど。私、地方に住んでいたから知らないけど」
「……そうなのかな」
「手島くんのファンもいるらしいけど」
「いるらしいって……。俺にファンなんか居ないだろう。どっちかっていうと怖がられてそうだけど」
「そうかな? 私はどっちかっていうと手島くんの方がいいけどね」
「はぁ?」
伊東さんは俺をからかうように楽しそうに笑っているが、俺は晴矢のファンが多いという彼女の言葉が引っかかった。
高校の時でも晴矢は目立つようなことはしていなかったから、有名だったという言葉に違和感がある。
バレンタインの時期になると人気の学生は校門の外や最寄りの駅で女子高生が出待ちのように待っていることも多かったが、晴矢に関しては一度もなかった。
「私が同じ講義取っていたりするからか、紹介してくださいとか言われてハッキリ断ったところ」
「ふーん、そうなんだ」
「……先野くんに彼女はいないの? あ、こういうのセクハラっていうかプライバシー侵害になるかな……」
俺はどう答えるべきか迷った。
『彼女』は居ないが、『恋人』はいる。
っていうか、君の横に。
「俺が話す事じゃないよな」
「だよね。ごめん。聞き流して」
伊東さんの良いところはこういう潔いところだ。
回りくどい言い方もしないし、しつこく聞いてくることもない。
だから話しやすい。
晴矢が女子から人気があっても不思議ではないが、それを聞いた俺自身は面白くはない。
男子高という閉じた世界から共学の大学という開いた世界に足を踏み込んだ今、様々な変化に未だ戸惑っている自分がいる。
🔸🔸🔸
『昼飯、庄野も一緒でもいい?』
晴矢からLINEが着た。
庄野とまだ一緒に居るらしい。
ただ昼飯を一緒に食べるだけだとしても、俺は少し不満に思ってしまう。
そんな心の狭さに自分でウンザリしている。
『いいよ。学食で待っている』
心の中で思っている事と反対の返事をする。
「二人ともサークル入らないんだなー。なんで?」
学食でラーメンをすすりながら庄野が唐突に聞いてくる。
そんなにサークル活動って重要なことなのか?
「特に入りたいサークルも無かったし。興味ないところに時間かけたくないし」
「うわー。先野って見た目と違ってドライだよな。大学って一番自分が解放される場所だと思っていたけど、内進者は違うのかな?」
「どういう意味?」
「いや、普通は高校生活って部活もしつつ大学受験に向かって三年間勉強に心血注ぐわけよ。で、希望の大学に入れた瞬間、その抑圧されていたものから全て解き放たれて自由をゲットできるわけよ。そういう段階を経て今があるからさあ、何でもやりたいって思うんじゃないのかなって」
「……そうなのかな」
「でもこの大学の附属校に通っていたってことはそれなりに裕福で、受験の心配もないし高校生活も自由に送れていたんだろうなと思うと、今さら大学デビューでもないのかな」
庄野の言いたいことは理解できた。
確かに俺たち内進者は大した苦労もなくそのまま大学へ進学出来ているし、高校三年間かなり自由に過ごせてお金の苦労もしていない。
そういう意味では内進者と外進者とは少し溝があるのかもしれない。
「それとサークルを結び着けるのはちょっと短絡的すぎない? 俺たちは興味あるものが無かったっていうそれだけの理由だけど」
晴矢がスプーンで皿をつつきながら不機嫌そうに話す。
確かに勝手な推測で線引きされたくはない。
「でもさ、手島はバスケ部から勧誘されていたんだろ? 高校選抜にも選ばれたぐらいなのに断る理由がわかんないけどなー」
「俺はもうバスケは散々やってきたし、プロになるわけでもないのに体育会系の厳しい所に身を置きたくないだけだよ」
「そういうもんなのかね~。何不自由なく青春を謳歌してきた内進者の気持ちは田舎者の俺にはよくわからないや」
庄野の言い方が鼻に付く。
自分で話を振っておいて自分の納得がいく答えを得られなかったからといって自虐的な物言いをする。
「まあ、いいや。で、4限終わったらどこ行く、先野?」
「え……うん……」
晴矢は俺をちらっと見ると言いにくそうに顔を下に向けた。
4限が終わった後に庄野とどこかに行く予定があるのか。
「……良樹も一緒にどうかな?」
相変わらずスプーンで皿をつつきながら晴矢が遠慮がちに言う。
前に座る庄野はラーメンをすするのに忙しいが、恐らく俺が一緒に行くことを想定していないだろうと推測する。
「……俺は用事ができたから無理。二人で行って来いよ」
俺は残っていた味噌汁をかっこみ、晴矢の反応を目に入れないようにした。
「わりぃなー手島。今度誘うよ」
俺の返事に庄野の声が一段と大きくなったような気がした。
俺はイラつく気持ちを抑えながら微妙な笑顔で返した。
新しい友達……その関係性は維持すべきだがやはり面白くはなかった。



