幼なじみが身も心もボロボロなので、ボクがお世話します

「……行ったか」

ふぅーと息を吐く雪哉くん。
多分、うるさいのが消えたと思っているんだろう。

「……なぁ、春斗」

「ん?どうしたの?」

「……俺、生きてるか?」

雪哉くんは時々、ボクにそう言ってくる。
自分が生きてもいいかの、確認作業だ。

「……うん、生きてるよ」

「……そうか、ありがとう」

目を伏せて、ふっと笑う雪哉くん。
あれから、家の中は辛うじて綺麗のままだ。
服を脱ぎっ放しにする癖はどうも抜けてないようだけど、その度に注意して正している。
あと、身なりは自分からできるようになった。
髪を毎日くしでといて、洗濯もして、清潔な服で学校に来ている。
……女の子にキャーキャー言われてるのは正直、気分が良くないけど、ボクの彼氏はかっこいい!って皆に知れ渡るのは嬉しいことだ。

「……ねぇ、雪哉くん。今日の夜は何食べたい?」

「……ハンバーグ」

「じゃあ、帰りにスーパー寄ろう?冷蔵庫の中にお肉ないから買わないと」

「おう」

「エコバッグ持ってる?」

「……うん」

「よし、じゃあ雪哉くんは荷物係ね?あっ、トイレットペーパーがもうすぐ切れるからドラッグストアにも寄ろうよ」

「スーパーで買えばいいだろ」

「ダメダメ!ドラッグストアの方が安いんだから、そっちで買うの!」

「わかったよ……それより、あーんは?」

「え?……もう、まだやるの?」

口を大きく開けて待っている雪哉くん。
それを見て呆れつつも、可愛いと思うボクがいた。

「はい、あーん」

弁当箱の中からトマトを差し出す。

「……あーん」

そこには幸せそうに食べる……ボクの恋人の姿があった。

◇ ◇ ◇

「美味かった」

「ほんと?」

夜――ご飯を食べて、ボクらはゆっくり団欒していた。

「けど、パン粉の量多すぎ。俺を太らせるためにかさを増やしたんだろうけど、あれ以上やるとパン味のハンバーグになるぞ」

「うっ……バレてたか」

どうやら小細工はすぐにバレるみたいだ。

「……それ以外はいい」

「え!?ご、合格範囲内?」

「あぁ……」

「あ、ありがとうございます!先生!!」

「先生はやめろ……」

そう言いつつも、雪哉くんの顔は綻んでいた。
最近はこうして笑うことも多くなってきた。

「…………なぁ、春斗」

それ以上、言葉は続かなかった。
雪哉くんの視線が、うろうろとさまよっていた。

「……いいよ」

それだけ言うと、雪哉くんは静かにボクの背中に腕を回し、抱き締めてきた。

「……嫌じゃないよな?」

「嫌じゃないよ、むしろ嬉しい」

返事をした瞬間、雪哉くんの力が強まった。
次の瞬間、腕の力が弱まったと思うと雪哉くんの顔が目の前にあった。

「あ……」

思わず声が出てしまった。
だって、何をされるかが……わかってしまったから。

鼻先が掠る。視線が絡む。
もう、逃げ場がない。
でも……逃げる気なんてなかった。

――そして、唇が、触れた。