夏生くんは秋平先輩の腕を引いて部室から出ていく。
さっきまで騒がしさが嘘みたいに、時計の音が耳につく。
……二人だけになってしまった。
雪哉くんは、先程あったことなんて知らんと言わんばかりに早くしろと口を開けて待っていた。
「……早く」
「う、うん……」
包装を剥がす音がやけに大きい。
チョコを指で掴むだけで、指先が震える。
「あーん……」
指先が、唇に触れる。
ボクの手から雪哉くんの中にチョコが渡る。
そのままもぐもぐと雪哉くんは咀嚼した。
「お、美味しい?今日のはね、期間限定のハスカップ味なんだよ」
「……酸っぱい」
「あれ?美味しくなかった?」
「…………不味いとは言ってないだろ」
「そう、なんだ……」
どうやら美味しいらしい。
「…………ん」
また口を開ける雪哉くん。
「ま、またぁ?」
「……ダメか?」
「だ、ダメとは言ってないよ!」
カバンからまたチョコを取り出す。
雪哉くんはなにも言わずに、ただじっと口を開けたまま待っている。
逃げ場なんてここにはない。
羞恥に震えながら、口元にチョコを近づける。
「あ、あーん……」
声も震えている。
目をぎゅっと閉じて、食べてくれるのを待つ。
――一瞬の沈黙
はむっ――
「えっ……あっ!」
指先にあたたかい感触が広がる。
恐る恐るまぶたを開ける。
目の前には、ボクの指ごと食べている雪哉くん。
「な、ななななな!!?」
「……美味い」
指が唇から離れる。
しれっとした顔をして、雪哉くんは顎を動かして、チョコを食べていた。
「な、なんで食べたの!?ボクの指は食べ物じゃないよ!?」
指先が、じんと熱い。
「…………春斗」
名前を呼ばれるだけで、声が止まった。
雪哉くんの目が笑っていない……。
「……ちゃんとここにいるって……確かめたかった」
その言葉が胸の奥にしみた。
さっきまでの怒りが急速に冷えていく。
「寂しかったの……?」
雪哉くんは返事をしない。
代わりに、口をもう一度開けて待っていた。
「……ダメか?」
「だ、ダメっていうか……」
ボクは息を吸って、言い聞かせるみたいに笑った。
「こ、今度は指食べないで……ほんとに、嫌いになるから……」
雪哉くんの喉が小さく鳴った。
一瞬、視線が揺れて――
「……じゃあ、やめる」
そう言った。
すんなり引いたのが、逆に怖かった。
「春斗……俺、今すごく怖いんだ。」
「……怖い?」
「お前が離れるんじゃないかって……」
重々しい口調でそう言った。
胸が痛い。……今は嬉しいからじゃない。
「ボクは雪哉くんから離れないよ。ここにいる。」
「じゃあ……」
雪哉くんが、少しだけ近づいた。
呼吸が触れる距離。
「キス、してほしい」
さっきまで騒がしさが嘘みたいに、時計の音が耳につく。
……二人だけになってしまった。
雪哉くんは、先程あったことなんて知らんと言わんばかりに早くしろと口を開けて待っていた。
「……早く」
「う、うん……」
包装を剥がす音がやけに大きい。
チョコを指で掴むだけで、指先が震える。
「あーん……」
指先が、唇に触れる。
ボクの手から雪哉くんの中にチョコが渡る。
そのままもぐもぐと雪哉くんは咀嚼した。
「お、美味しい?今日のはね、期間限定のハスカップ味なんだよ」
「……酸っぱい」
「あれ?美味しくなかった?」
「…………不味いとは言ってないだろ」
「そう、なんだ……」
どうやら美味しいらしい。
「…………ん」
また口を開ける雪哉くん。
「ま、またぁ?」
「……ダメか?」
「だ、ダメとは言ってないよ!」
カバンからまたチョコを取り出す。
雪哉くんはなにも言わずに、ただじっと口を開けたまま待っている。
逃げ場なんてここにはない。
羞恥に震えながら、口元にチョコを近づける。
「あ、あーん……」
声も震えている。
目をぎゅっと閉じて、食べてくれるのを待つ。
――一瞬の沈黙
はむっ――
「えっ……あっ!」
指先にあたたかい感触が広がる。
恐る恐るまぶたを開ける。
目の前には、ボクの指ごと食べている雪哉くん。
「な、ななななな!!?」
「……美味い」
指が唇から離れる。
しれっとした顔をして、雪哉くんは顎を動かして、チョコを食べていた。
「な、なんで食べたの!?ボクの指は食べ物じゃないよ!?」
指先が、じんと熱い。
「…………春斗」
名前を呼ばれるだけで、声が止まった。
雪哉くんの目が笑っていない……。
「……ちゃんとここにいるって……確かめたかった」
その言葉が胸の奥にしみた。
さっきまでの怒りが急速に冷えていく。
「寂しかったの……?」
雪哉くんは返事をしない。
代わりに、口をもう一度開けて待っていた。
「……ダメか?」
「だ、ダメっていうか……」
ボクは息を吸って、言い聞かせるみたいに笑った。
「こ、今度は指食べないで……ほんとに、嫌いになるから……」
雪哉くんの喉が小さく鳴った。
一瞬、視線が揺れて――
「……じゃあ、やめる」
そう言った。
すんなり引いたのが、逆に怖かった。
「春斗……俺、今すごく怖いんだ。」
「……怖い?」
「お前が離れるんじゃないかって……」
重々しい口調でそう言った。
胸が痛い。……今は嬉しいからじゃない。
「ボクは雪哉くんから離れないよ。ここにいる。」
「じゃあ……」
雪哉くんが、少しだけ近づいた。
呼吸が触れる距離。
「キス、してほしい」


