桜木町駅の猫喫茶~あなたを癒す、6つの物語~

(喫茶……店?)
(あったかな。こんなトコに)

飲食街の外れ。歩く人も、ほとんどいなくなったエリアに差し掛かったわたし。

いつもと違う、店の様子に気が付いた。

明らかに最近できたとは思えない……趣のあるお店。店名が書かれているはずの看板も、すでに読めなくなるほど。

40年、50年は経っていそうな、アンティークな雰囲気を漂わせている外観。

(素敵……)

出勤で毎日通っているはずの道。「何で気付かなかったんだろう?」と思いながらも、雨宿りのためと思い、入ってみる事にした。

カラン……カラン……

ドア上部に付けられた鈴の音が、店内に乾いたように響き渡る。

ギイと少しだけ開き、中を覗くと、イメージ通りアンティーク調の店内だった。8席ほどのカウンター。そしてテーブル席が、5つほど。

「……すいませーん」

こもらせるように、店の奥に向かってしゃべりかけてみた。

(あれ? もう、終わっちゃったかな)

「すいませーん……」

よく見てみると、店内にお客さんは入っていない。「きっと夕方までなのかな」と思い、ドアをゆっくりと閉めようと思ったその時

「はい」

奥から穏やかな声が聞こえ、ドアを閉じようとする手がピクリと止まった。

「あっ、すいません」
「お客さまでございましたか、これは大変申し訳ございませんでした」

少し白髪交じりの、おっとりとした男性。白いワイシャツ姿に黒いエプロンを身に付けていた。頭を下げて、わたしに言った。

「どうぞ。よろしければ」
「あっ、お店……まだやってるんですか?」
「ええ。夜の9時までになりますが」

優しく微笑みながら、男性は言った。少し寒く、雨が降る夜。「誰もいない方が落ち着けるな」と思い、わたしは温かい飲み物が欲しくなり、お店の中へと足を踏み入れた。