イベント以降、永瀬のカッコよさに気付いた奴らが態度を変えてあいつに近付こうとしていた。
これまでの俺は、永瀬が学校でダサい格好をしていることを勿体ないと思っていたはずだったのに、いざ状況が変わったら、なんでこんなにモヤモヤ、イライラしているんだろう。
そもそもおかしかった。菫さんを羨ましいって思って、永瀬が人気者になっても喜べない。
やっと気づいたんだ。
俺、永瀬のこと好きだ。
静かな話し方が好き。ダンスに一生懸命なところも好き。あんな見た目で甘党なところもギャップがあって好き。色々考えてそうで意外と行動派なところも好き。たまに見せる笑顔も好き。
でも駄目だと思った。
俺達は男同士だし、友達だ。
永瀬は優しいから、俺の気持ちに気がついたら合わせてくれるかもしれない。そんなの駄目だ。
あいつ宛のラブレターだって平気な顔で渡してやる。静かに過ごしたいのに困っていたら助けてやる。
でも、ベランダで、いつも静かな永瀬が、堪えきれないみたいに叫んだから。
——好きな奴から、他の奴からのラブレターを渡される俺の気持ちだよ!
ハッとしたように片手で口を隠して。こんなこと言うはずじゃなかったと丸わかりの様子で狼狽えて。
後ろ姿でも、心ここにあらずなことが分かる。
好きな奴って、どういうことだろう。本当に俺の好きと同じなのか。
どうしても今確かめたい、その衝動のまま、ノートを1枚破った。
『お前のことが好き。恋愛対象として』
いつも几帳面に書かれている永瀬の字は、少し震えていた。
永瀬はこんなにかっこいいのに、俺のためにこんな風になっちゃうのか。
ずっと騒めいていた気持ちが、嘘みたいに凪いでいったと思ったら、次は色んな感情で胸がいっぱいになって、どうしても今すぐ永瀬に伝えたくなって。気が付けば隠しとおすつもりだった気持ちを伝えていた。
永瀬から貰った破れたノートのラブレターは宝物だし、生まれて初めて背中に書いたこっぱずかしいラブレターは、きっと一生忘れられないだろう。
日本史の時間、プリントを回す永瀬の顔が、一瞬笑った。手渡されたプリントには小さな紙がまぎれている。
『今日もダンスの後、コンビニに行く。一緒に帰りたい』
水曜じゃなくても、永瀬といられるから、毎日学校に行くのが楽しい。
でもやっぱり、水曜日が一番、俺達の好きな曜日なんだ。
〈了〉
