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かつて天界には、九人の音楽の女神がおられました。そのうちのおひとりの女神が天界を抜け出し、地上へと舞い降りられたのです。
森の中でその女神が歌われると、さまざまな楽器の音色が生まれました。その旋律を耳にしたひとりの男性が、女神の存在に気づきました。
当時、人間はまだ音楽というものを知りませんでした。男性は、桃色の唇から美しい旋律を奏でられる女神に心惹かれ、女神もまた、地上で生きる野性的な彼に心を奪われました。
ふたりは恋に落ち、幾度も逢瀬を重ねました。そして男性は、人類で初めて音楽を識る者となられたのです。
しかし、神々の世界にしか存在しなかった音楽を人間に教えたことは、至上神の逆鱗に触れてしまいました。女神は男性と引き裂かれ、天界へと連れ戻されてしまったのです。
永遠の別れの時を迎え、女神は涙をこぼしながら、次のように告げられたと伝えられております。
「どうか、あなたが受け取ってくださったわたくしの音色を、たくさんの人間に伝えてくださいませ。音楽が世界中に広まれば、神々の旋律と同質の音楽を生み出す者が現れることでしょう。あなたとわたくしの愛の結晶を受け継ぐ者は、その証として音色を視ることができ、旋律によって世界を描くことができます。そして、音楽の神髄に辿り着いたその者は、音色となって神々の世界へ還ることができるのです。それは、わたくしにとって――あなたとふたたび出会うための、唯一の祈りなのです」
女神の言葉は、風に溶けるように森の木々へと染み渡り、やがて旋律となって世界へと広がっていったのです。
その女神は『ミューズ』という名を冠しておりました。そして女神はいまでも、『フィーネの旋律』を奏でられる者が、天界へと迎え入れられるのを待ち続けていらっしゃるのです。
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かつて天界には、九人の音楽の女神がおられました。そのうちのおひとりの女神が天界を抜け出し、地上へと舞い降りられたのです。
森の中でその女神が歌われると、さまざまな楽器の音色が生まれました。その旋律を耳にしたひとりの男性が、女神の存在に気づきました。
当時、人間はまだ音楽というものを知りませんでした。男性は、桃色の唇から美しい旋律を奏でられる女神に心惹かれ、女神もまた、地上で生きる野性的な彼に心を奪われました。
ふたりは恋に落ち、幾度も逢瀬を重ねました。そして男性は、人類で初めて音楽を識る者となられたのです。
しかし、神々の世界にしか存在しなかった音楽を人間に教えたことは、至上神の逆鱗に触れてしまいました。女神は男性と引き裂かれ、天界へと連れ戻されてしまったのです。
永遠の別れの時を迎え、女神は涙をこぼしながら、次のように告げられたと伝えられております。
「どうか、あなたが受け取ってくださったわたくしの音色を、たくさんの人間に伝えてくださいませ。音楽が世界中に広まれば、神々の旋律と同質の音楽を生み出す者が現れることでしょう。あなたとわたくしの愛の結晶を受け継ぐ者は、その証として音色を視ることができ、旋律によって世界を描くことができます。そして、音楽の神髄に辿り着いたその者は、音色となって神々の世界へ還ることができるのです。それは、わたくしにとって――あなたとふたたび出会うための、唯一の祈りなのです」
女神の言葉は、風に溶けるように森の木々へと染み渡り、やがて旋律となって世界へと広がっていったのです。
その女神は『ミューズ』という名を冠しておりました。そして女神はいまでも、『フィーネの旋律』を奏でられる者が、天界へと迎え入れられるのを待ち続けていらっしゃるのです。
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