ヘブンリーブルー・スター

「日生さん、俺、マジでやばいかもしんない」
 勉強机に立てかけたスマホの向こう側で、鬱々とした中学二年生の宵の声がする。
 音声だけだから顔は見えないけど、たぶん、宵の机に頬っぺたくっつけてんだろうな。想像で俺は笑った。
「マジやばいって、まだ改稿? 終わらないんだっけ」
 宵が賞を取ったのは少し前のことで、そこから宵は受賞作の改稿に取り組み続けている。
「べつにぜんぜんいいと思うけど、おまえ、こだわり強いもんなぁ」
 話の内容もそうだけど、宵はけっこう文章に対するこだわりが強い。
 何度も何度も書き直して調整しているところを見ていたから、俺はよくよく知っている。
 小さく笑うと、同じような苦笑が届いた。
「それ、幸崎さんにも言われた」
 幸崎さんというのは、宵の担当の人のことだ。
 あまり宵の家に行かなくなってからも、こんなふうに週に二度は作業通話をしていたから、今の宵のことも俺はわりとよく知っていた。
「でも、幸崎さん、俺は学校に行ってないから、その分の時間があるからギリギリまでこだわってもいいんじゃない、とも言ってたけど」
「あー、まぁ、そっか。学校行きながらだったら、夜しかできないもんな」
「うん」
 頷いたあと、少しの間が空いて、宵が言う。 
「行ってなくてよかったじゃんって」
「はぁ? それ、その担当の人が言ったの?」
「うん。俺は才能があるんだからって」
「あのなぁ」
 あまりに衒いのない調子に、俺は思わず噛みついた。
「才能は、そりゃ、あるんだろうけど。でも、その人は十年後のおまえがどうなってても絶対責任取ってくれねぇぞ。今のおまえの責任は取ってくれるかもしれねぇけど」
 通話先で宵が黙り込む。
 あーあ、俺、なんで、こんな説教してんだろ。いまさら、こいつに。俺はただの受験生で、向こうは中学二年生で最年少受賞をした天才なのに。
 そう自分に呆れる気持ちも存分にあったものの、俺は諭す言葉を選んだ。こんなふうに宵に言えるのは自分だけだとわかっていたからだ。
「おまえ、たったひとりの天才になりたいの?」
「……ううん。ごめん。ありがとう」
「いいよ、それは」
 本当、こいつ、素直なんだよな、こういうとこ。いつのまにか癖になった「あーあ」を押し込んで笑うと、沈黙が流れた。スマホの奥で、カタカタと文字を打つ音が再開する。
 いつものそれに、俺もぺらりと参考書のページを繰った。高校受験まであと三ヶ月。合格圏内とは言われているものの、油断できる成績じゃない自覚はある。
 英語の長文を読んでいると、「日生さん」と俺を呼ぶ声がした。
「なに」
「なんで、最近、俺の家来てくれないの?」
「あー……。まぁ、俺も受験あるしなぁ。言っただろ? 終わるまで無理って」
 宵の受賞が決まって、しばらくして、夏休みに入ったころ。俺はそう言って、そっと少し距離を取った。宵に気づかれないように、細心の注意を払いながら。
「言ったけど」
 不満そうに認めた宵が、溜息を吐いたのが聞こえた。
「高校って、あれですよね。文芸部があるって言ってた」
「そうだよ」
 おまえも行きたいって言ってたじゃん、昔。まだ「僕」って言ってたころ。とは言わず、俺はおざなりに頷いた。
「あそこの文芸部、このあたりじゃ一番活動が盛んなんだよね」
「日生さん」
「ん? なに」
「やっぱり、俺、がんばって、もうちょっと中学行きます」
「なに? どうした、急に。さっきの説教?」
 からかう調子の問いにも、宵は素直に「うん」と首肯する。
「日生さんと同じ高校行って、同じ部活に入りたいから」
「あー……」
 声だけでもわかるまっすぐのきらきらした宣言に、俺は曖昧な声をもらした。
「宵さぁ」
 持つだけになっていたシャーペンを揺らしながら、呼びかける。
 同じ高校に行って、同じ部活に入りたい、というのは、今よりももっと小さかった宵も言っていたことだ。
 いや、嘘。正確に言うと、不登校で引きこもり気味の宵が心配になって、兄貴ぶって俺が提案した。「一緒の高校行って、同じ部活に入ったら楽しいんじゃない?」って。でも。
「おまえ、出席日数大丈夫だったら、もっと偏差高いとこ行けるだろ。そっちのほうがいいんじゃない?」
 ちなみにだけど、宵の不登校はいじめとかそういうのが原因ではない。宵いわく「なんか、授業もぜんぶわかるのに教室に座ってるのがすげー無意味って感じで馬鹿らしいんですよね」らしかった。いや、マジかわいくねぇな。天才。
 同学年だったら、俺も絶対持て余してたと思うよ。
「日生さんと一緒がいい」
「あー……、そっか」
 はっきりとした返事に、俺は苦笑を浮かべた。音声通話でよかったな、と思いながら、シャーペンを握り直す。
「なら、まぁ、がんばれよ」
 だって、さぁ。ちょっと距離置きたいって思ったところで、それはぜんぶ俺の勝手なわけで。だったら、もうそう言うしかないじゃんね。

 ――つまり、俺って、いいやつでいようとして、自爆してんだよな、マジで。
 そうして、時間が流れ、今。高校二年生になった俺には、その自覚が十分にあった。
 何年も愛用しすぎて若干挙動のおかしいノートパソコンの前で、俺は「あーあ」とひとりごちた。
 パソコンを開いているのは、自分の部屋の勉強机。
 ぱっと見は小学生のころから変わらないけど、気持ちはぜんぜん違っている。
 まぁ、そもそも、学校の宿題程度しかやることのなかったあのころと、バイトだなんだと時間を使っている今とでは異なっていてあたりまえなんだろうけど。
 ひとつ伸びをして、俺は部室から持ってきたラノベをぱらぱらとめくった。
 バイトが終わって、風呂に入ったりなんだとしていたら、あっというまに二十二時を過ぎている。
 ――いや、本当、よく書いてるよな、マジで。
 宵もだけど、文芸部のみんなも。三年生なんて受験もあるだろうに。つまり、俺の「時間がない」は言い訳だということだ。
 ひとりきりの部屋で溜息を吐き、スマホに手を伸ばし直す。
 もっともっと書きたいって思って、時間が足りないって思ってたあのころの気持ちって、いったいどこに行ったんだろうな。

 ※

「日生先輩。締切まであと一週間ですけど、大丈夫ですか? 部誌の書評」
「うん。まぁ、たぶん?」
 いや、マジ、それ、俺が聞きたいよ、という自虐を呑み込んで、俺はへらりと笑った。
「たぶんって」
 軽薄な態度が気に食わなかったらしい宵が、わかりやすくムッとする。かわいいけど、かわいくねぇな、マジで。
 あーあ、と口の中で呟いて、俺はリュックを背負い直した。放課後にばったり部室に向かうところだった宵と出会ったことが、完全に運の尽き。
 逃げそびれて、結局、俺も部室に向かうことになってしまった。まぁ、べつに、文芸部が嫌いなわけじゃないんだけど。
「日生さんは書いたらちゃんと書けるのに」
「はい、はい、はい、はい」
 口うるさい母親のような小言をいなしながら、足を速める。こうなったら、適当に本を選んでさっさと帰るしかない。
「俺、書評もすげぇ楽しみにしてるんですけど」
「……おまえ、俺に物語書いてほしかったんじゃなかったの?」
「それはもちろん書いてほしいですけど、正直、日生さんの書く文章だったらなんでもいいっていうか」
 と言ったところで、宵ははたと口をつぐんだ。ちらりと隣を見れば、宵が微妙に俺から視線を外す。
「…………飢えてるんですよ、笑ってください」
「いや、笑えねぇし」
 マジでまったくひとつも笑えねぇし。呆れたように返し、さらに足を速めると、ごく自然と隣を歩いていた宵の歩行速度も速くなった。
 こちらの様子を窺う視線が気になったものの、もう部室が目の前だ。
 ――面倒くせぇな、なんか。
 本日二度目の「あーあ」を押し込み、扉に手をかけようとしたタイミングで中の声が聞こえた。林先輩の声だ。
「日生くん、今回書評なんでしょ~? 正直うまく逃げたよね」
「だって、私も嫌だもん。プロと一緒とか公開処刑じゃん。比べられたくないに決まってるって」
 同調しているのは、たぶん、同じ三年生の三宅先輩。
「あ、でもぉ。宵くん言ってましたよぉ。日生先輩はすごい才能があるんだって」
「なに、それ。嫌味じゃん」
「違いますって。だって、宵くん、めちゃ真剣でしたもん」
 きゃらきゃらと笑う一年女子の声に、俺はドアノブに伸ばそうとしていた手を引っ込めた。
 馬鹿にされていることは明白なのに、不思議なほど腹は立たなかった。少なくとも、部室にいる女子たちには。
「宵」
 なのに、なんで、おまえがそういう顔するんだよ。怒鳴りたい感情を堪え、俺は呼びかけた。
「……嫌味じゃないです」
「知ってるよ」
 いっそ嫌味だったらよかったって思ったことは数えきれないくらいあるけど。
 おまえがそういうことを言うやつじゃないってことは、扉一枚隔てた部室の中にいる誰よりも俺が一番知っている。
 だから、ずっと、嫌いになれなかった。
「知ってる」
 扉を睨むように凝視している宵に、淡々と繰り返す。
「だから、その顔やめろ。あと、腕下ろせ」
 そう言うと、はっとしたように宵が力を抜いた。
 もしかしたら、ドアノブに手を伸ばしかけたのも、無自覚だったのかもしれない。そういうやつでもあった。
 知らなくてもいいことばかり、俺は知ってしまっていた。掴んでいた宵の手首から手を離す。
「帰るぞ、宵」
 返事を待たず、俺はくるりと背を向けた。宵は俺についてくるとわかっていたからだ。
 案の定と言うべきか、しばらくして慣れた足音がすぐ背後で響く。その音に、腹が立つ半面、なんだか無性にほっとした。

 でも、それは、残念なことに、校舎を出るまでの短いあいだった。隣を歩く宵の不機嫌オーラにうんざりして、溜息まじりに宥める声をかける。
「つうか、そんな拗ねんなよ」
「拗ねてないです。怒ってるんです」
「怒ってるって。べつに、間違ったこと言ってないだろ」
「間違ってます」
「いや、……」
 こっちが必死に「なんでもないこと」にしようとしているのに、宵がいかにも自分が真っ当だという顔ではっきりと言い切るから。
 たまらなくなって、俺は吐き出した。
「だからさ。おまえが怒るほど、俺が虚しいんだって、マジで」
 いや、虚しいというのは正しくないかもしれない。言葉にした直後に、俺は思い直した。
 悔しい。居た堪れない。腹が立つ。でも、どこかで少しだけ馬鹿な自尊心がくすぐられている。そんな自分がなによりも嫌だった。
 みっともない。それが、俺がずっと抱えていた感情のひとつだったのだと思う。
 宵の成功を素直に喜べない自分がみっともない。
 そのくせに嫉妬を認めることが嫌で、嫉妬を出すことが嫌で、いつもずっと薄っぺらいなんでもない顔をしていた。
 それしかプライドを守る方法がなかったからだ。でも、――そんなことをしているうちに、なにも書けなくなった。
 俺は、天才じゃなかったから。
 それなのに、宵の隣にいると、自分も天才なんじゃないかって。まだ誰にも見つかってないだけなんじゃないかって。
 幻覚だってもう十分に――宵が一発で受賞したときに思い知ったはずなのに。
 俺はなにものにもなれない。
「日生さん」
 戸惑いきった宵の声が居た堪れなくて、俺はうつむいた。
 今なら、まだ、「冗談」、「ちょっと苛立っただけ」と言えば挽回できる。そうわかっていたのに、選べなくて。震える息を吐く。
 もしかしたら、限界だったのかもしれない。もうずっと、ずっと。抱え込んでいたなにかがあふれ出す、そのタイミング。
「取るなよ」
 うつむいていたから、宵の顔は見えなかったけど、驚いていることは雰囲気でわかった。
 天才って、傲慢だ。腹立つくらい無自覚に。嫌いになれないくらい、無邪気に。
「おまえ、もうなんでも持ってるじゃん。あのころの宵と違って。だから」
 自分でもなにを言っているのかわからなくて、黙り込む。
「取れないですよ」
 なんとも言えない沈黙のあと、宵が小さく呟いた。
「取れないです、なにも」
「…………」
「取れるわけがない」
 これで、もし、宵が、俺を憐れんでいたら。宵の言葉がまったくの本心じゃなかったら。俺は救われたんだろうか。
「ひなせは、日生先輩は、俺を救ってくれた。でも、俺は誰も救えない」
「いや、おまえが知らないだけで救われてるやつはいるだろ、たぶん」
 おまえ、俺の話の何百倍読まれてると思ってんの。あーあ、本当に、なに言ってんだ、こいつ。
 息を吸い、俺はどうにか顔を上げた。宵を見つめ、笑う。
「俺、おまえのそういうとこもかわいいって思ってたつもりだけど」
 いや、今も、なんだかんだ言ってかわいいと思ってるけど。
「でも、さすがにそれは傲慢だと思うわ」
 俺に呆れたのか、純粋に言葉がなかったのか、宵はそれ以上なにも言わなかった。

「ただいまー……って、なにこれ」
 疲れ切った気分でリビングの扉を開けたところで、問いかけがこぼれる。テーブルに市の広報誌がででんと置かれていたからだ。
「あ、それ。うちの広報。宵くんが載ってるって聞いたから貰ってきちゃった。四部貰ったから、一部あげるよ」
「いや、なんで四部」
「えー、読む用と保存用と布教用と。あと洸平の。なに、いらないの?」
 あっけらかんと答えた姉ちゃんが、不思議そうに首を傾げる。
「あんた、宵くんのことかわいがってたじゃない。せっかく貰ってきてあげたのに。喧嘩でもしたの?」
「……してねぇし」
 というか、事実、あれは喧嘩なんてものじゃない。ただの俺の癇癪だとわかっている。
 困惑して困り果てたようだった宵の声が鼓膜によみがえり、俺は誤魔化すように市の広報誌を受け取った。
 そのままリビングを出て、階段を上り、自分の部屋に入る。
 勉強机に置いた広報誌がばさりと床に落ちて、俺は小さく舌打ちをした。でも、落ちたままにしておけなくて、ぐしゃりと開いたそれを手に取る。
 ――尊敬している先輩がいるんですけど、その人に出会って、自分の世界は色づいたんです。だから、すごく、その人に感謝しています。
 目に入った瞬間、はっと乾いた吐息がもれた。なんのインタビューだよ、いまさら、これ。なんて笑うこともできない。
 いや、いや、いや、いや。色づいたって。俺の世界はおまえのせいで真っ白になったんだわ。
「――本当、なんなんだよ、あいつ」
 八つ当たりでしかないことをひとりごちて、俺は立ち上がった。指の力で皺が入った広報誌を広げ、勉強机の引き出しにしまう。
 そこでまた視界に入ったものに、俺は大きく溜息を吐いた。
『ヘブンリーブルー』
 青色が美しい、宵のデビュー作の単行本。ひとりぼっちだった少年が、一歩を踏み出す物語。
 もう何年も、ずっと入りっぱなしになっていたそれを、俺は手に取った。

 ※

「あ」
「あ」
 一時間目が始まるまでに十分に余裕のある朝の時間の文芸部。
 こんな時間なら俺しかいないと思っていたのに、なぜかばったり宵とエンカウントしてしまった。
 珍しく決まりの悪そうな顔の宵と目が合い、しかたなくへらりと笑う。昨日のことなんて、なにもなかったというそれで。
「なに、宵。どうしたの? 早いじゃん」
「あ、えっと」
「それとも、いつもこの時間に来てたりしたの? だったら、悪かったな。邪魔して。でも、書評置きに来ただけだから」
「あの、日生さん」
 部長の机に出してしまおうと目論んでいた書評をリュックからごそごそとしていると、宵が意を決したような声を出した。
「ん?」
 顔を上げると、真面目な調子で宵が意味のわからないことを言った。
「俺、やめます」
「は?」
「俺がやめて、日生先輩がまた書けるようになるなら、そのほうが」
「ふざけんなよ」
 そこで、俺は宵が手にしていたものが退部届だったと気がついた。
 昨日、ここで。林先輩たちが好き勝手に言っていたときとは比べものにならない怒りが湧いて、宵を睨みつける。
「おまえにとっての作家ってそんなもんなのかよ」
「違う」
 宵に明確な怒りを向けたのは、昨日を除いたらはじめてだったけど、こんなふうに絞り出した宵の声を聞いたのもはじめてだった。
 虚を突かれて、黙り込む。その俺から目を逸らして、宵が続ける。
「でも、それよりも先輩の書くものが好きで」
 俺が書くものが好き。俺の話が好き。
 昔から、宵がずっと。ずっと言ってくれていたことだった。
 ……本当に、こいつしょうがねぇな。
 なんだか本当にどうしようもない気分で、俺は小さく溜息を吐いた。
「それ以上言ったら殴るからな」
「え」
「俺がおまえを殴ったら、上級生から下級生への暴力で、下手したら部活動停止になるからな」
「…………困ります」
「じゃあ、言うな」
「………………困ります」
「マジしょうがねぇな、おまえ」
 真面目に困惑して悩んでいることがまるわかりのそれに、苦笑をこぼす。
「はじめて会ったときから、ずっと、今も」
 驚いたように、宵の瞳が見開かれる。その瞳をまっすぐに見つめ、俺は取り出した書評を宵に突き出した。
「交換」
「え?」
「俺の書評と、おまえの退部届」
「え、でも」
 宵の手に半ば無理やり書評を握らせ、俺は笑った。
「読んでいいよ、んで、読み終わったら破って」
「破ってって……」
「それ、ヘブンリーブルーの書評。っつうか、ぶっちゃけおまえへの恨み言」
「え」
 完全に固まった宵の反応に満足した気分で、くすくすと笑う。こんなふうに笑うのは、なんだかすごくひさしぶりな気がした。
「うーん、違うな。俺の決意表面。面白いけど、腹立ちました。素直に喜べない自分に。だから、書きます」
 後半は今言っただけで、そこに書いてはないんだけど。こいつが証人だったら、それだけで問題はないはずだ。
「おまえが破ったら、しょうがないから。必死になって短編書くよ」
「……俺、日生さんの話が本当に好きなんです」
「うん」
「救われたんです」
「うん」
 知ってるよ、と俺は宵の気持ちを受け取った。
「そう言ってくれるやつがいること、そう言ってくれるやつのために書きたいってこと忘れてた」 
 ――めちゃくちゃおもしろいです、これ。本当に。
 ――日生さん。
 ――先輩。
 嫉妬していないわけがない。苦しくないわけがない。
 それでも、俺には俺の書きたいものがあるんだって。喜んでくれる人がいるんだってことを、思い出した。