強く、踏み込んで



正直、青春や友情とは少し違う気がする。
女子同士ならともかく、男同士で花を見に行くことはそうそうない。
下手すると怪しまれそうだと思ったが、意を決して質問した。
俊美は腕を組み、記憶を辿る。

「都内にも有名なところはあるけど。……確か昔、兄さんが風月を向日葵畑に連れて行ったことがある。写真が一枚残ってたから覚えてたよ」
「ほんとですか!」
「あぁ。ちょっと待っててくれ。ええと、これだな」

翳されたスマホの画面には、幼い風月とその父親である青年が笑顔で映っていた。

「よく咲いてるよな。……風月も、これを覚えてたのかもしれないな。向日葵が好きだなんて、俺も初めて知ったから」

……。

嬉しそうに笑ってる。お父さんのことが本当に大好きだったのだと一目で分かった。

胸の中が熱くなる。この感情の正体は、まだ分からないけど。

「ありがとうございます。……ここ、どこか分かりますか?」
「あー、ここは確か……」

連絡先を交換し、互いにスマホを仕舞う。
俊美に御礼を言って頭を下げたとき、風月がうんざりした顔で帰ってきた。
「サンキューな、風月。売店混んでたか?」
「いやぁ、ひとは全然いなかったんだけど、レジのおばさんが他のおばさんと話し込んでてさ。……でも無事に買えたよ。早く線香上げよ!」
風月はまるで勝利のトロフィーを手に入れたかのように、お線香を掲げた。

「幸耶、本当にありがとな」
「……ううん。俺の方こそ」

お線香に火をつけ、手を合わせる。懐かしい香りと、時が止まったような静寂。

今ここにいられることに感謝して、幸耶は瞼を伏せた。

( 幸耶のお父さん。……俺は…… )

絶対、またここに来ます。

心の中でそう呟き、青すぎる空を仰いだ。
隣で瞼を伏せる、大切な存在。彼が動き出すまで、こっそり見つめていた。


その後は軽くドライブをして、俊美イチオシのサービスエリアでグルメ巡りをした。
帰る頃には満腹で眠ってしまい、気付いたら風月のアパートの駐車場に着いていた。

「お疲れー。着いたぞ、若人達」
「あ! ね、寝てた……すみません、俊美さん」
「いーのいーの。たまには大人に甘えな」

エンジンを止め、三人で車を降りる。

「はー、腰痛いな」

後部座席で変な寝方をしてしまっていたのか、あちこち痛い。風月はぐっと背伸びし、俊美に振り返った。
「叔父さん、今日はありがとうございました」
「おー。それじゃ、俺はそろそろ帰るけど……何かあったら連絡しろよ」
「はい」
頷くと、また頭を撫でられた。
叔父は結婚しているけど、子どもがいない。だからか、昔からとても世話を焼いてくれるひとだった。

父が亡くなったときは一番に迎えに来てくれた。……いつもはつい素っ気ない態度をとってしまうけど、本当に大切な存在だ。

「叔父さんも、俺にできることがあったら言ってくださいね。あ、あとおばさんにも宜しく」
「あぁ、言っとく。……今度は俺の家に来な。幸耶君も連れて」

それを聞いた幸耶の頬は少し赤らんでいた。
どうしたのか分からないけど、素直に礼を言い、愛車で帰る彼を見送った。