てっきり何か文句でも言われると思っていたけど、石川の話とはお願いだった。
「俺に、お願い?」
「うん。来月にある体育祭で応援団長をして欲しいんだよね」
あまりにも予想外過ぎて、理解するのにしばらくかかってしまった。
「応援団長?!」
「そう、応援団長。一条くん背が高いし学ランが映えるよなってみんなで話してたんだ」
みんなで話してた?! そんなの初耳だけど?!
クラスごとに行われる応援団演舞は競技同様に点数がつく。
採点競技であるため、一番主要の団長の見た目も重要視される。
他のクラスメイトは体操服にはちまきだけなのに対して、団長は学ランを着て指揮演舞をしなければいけない。
でも、狂犬なんて呼ばれてクラスメイトと全く関わってない俺がクラス代表の応援団長?
無理だ。みんなの前に立って何かするとか絶対無理。
「申し訳ないけど俺にはできないわ」
「なんで? やればいいじゃん」
「結斗?!」
俺の性格をわかっていて、何を言ってるんだ。
「僕も響介の学ラン見たいし」
理由はそれかよ。
なんて無責任な発言なんだ。
けれど結斗は楽しみだなぁなんて言って、石川も「そうだよね!」と頷いている。
「やるって言ってないんだけど。それにクラスのやつらも俺が応援団長なんてやりくくないか?」
「そんなことないよ。最近表情とか髪型とか変わって、みんな一条くんに興味津々なんだから。これを機にもっと一条くんのこと知ってもらおうよ」
「それ賛成! 決まりだね」
「なんで結斗が決めるんだよ」
けれどなんやかんや押しに弱い俺は、それ以上拒否することができず、結局応援団長をすることになってしまった。
石川は満足そうにしながら、よろしく! と爽やかな笑顔で帰っていった。
俺はその笑顔に気が重くなり、思わずため息が出る。
本当に俺にできるのか?
「響介、僕たちも帰ろう」
「そうだな」
……まあ、なるようにしかならないか。
重い腰を上げ、結斗と教室を出た。
帰り道、やっぱり頭の中は応援団長のことでいっぱいだった。
不安だ。不安しかない。
俺がクラスの男子をまとめて団長をしている姿なんて想像もつかない。
「響介、ごめんね」
「え、なにが?」
歩いていると突然結斗が謝ってきたので足を止めて見下ろす。
「応援団のこと。やっぱり余計なこと言ったかなって」
「いやまあ、もう仕方ないというか、俺もはっきり断れなかったし」
出来ればやりたくなかったけど、珍しくしおらしい結斗に強くは言えなかった。
「響介がさ、学校が楽しいと感じてくれたらいいなって思ったんだよね」
「え……?」
「知ってる? 響介、再会してからまだ一回も笑ってないんだよ」
「そんなことないだろ」
「あるよ!」
結斗は悲しそうな目で俺を見上げる。
いつもの冗談でもなんでもない。真剣な表情だ。
よく考えたら、たしかに笑っていないかもしれない。
そもそも学校では人と会話すらしなかった。
結斗と再会して、一緒に過ごすようになって、楽しいとは感じていたけど、声を出して笑うなんてことはしていないかも。
「心配かけてごめん。でも俺、結斗といるのは楽しいと思ってる。これは本当だから」
「本当に?」
「本当だって」
「よかった」
くしゃりとした笑顔を向けてくる結斗に、心底安心した。
こいつが笑ってないと調子狂うな。
「それと応援団長のことは話が別だけどな」
「響介ならできるよ」
「まあ、やるしかないよなぁ」
結斗の言うように楽しいと思えたらいいんだけど、そんなに簡単に切り替えられるものでもない。
練習が始まったらなにか変わるだろうか。
「そうだ、髪やっぱり下ろして良かったね」
石川が最近表情とか髪型が変わってみんな興味津々とか言ってたな。
髪型でそんなに印象が変わるならもっと早くに変えればよかった。
結斗に言われなければ髪型で変わるなんて思いもしなかったけど。
それに雰囲気が柔らかくなったって言われたのも結斗のおかげだ。
「ありがとな」
「そんな素直にお礼言うなんて珍しいじゃん」
「俺だって礼くらい言うから」
結斗は驚きながらも、嬉しそうにしていた。
「俺に、お願い?」
「うん。来月にある体育祭で応援団長をして欲しいんだよね」
あまりにも予想外過ぎて、理解するのにしばらくかかってしまった。
「応援団長?!」
「そう、応援団長。一条くん背が高いし学ランが映えるよなってみんなで話してたんだ」
みんなで話してた?! そんなの初耳だけど?!
クラスごとに行われる応援団演舞は競技同様に点数がつく。
採点競技であるため、一番主要の団長の見た目も重要視される。
他のクラスメイトは体操服にはちまきだけなのに対して、団長は学ランを着て指揮演舞をしなければいけない。
でも、狂犬なんて呼ばれてクラスメイトと全く関わってない俺がクラス代表の応援団長?
無理だ。みんなの前に立って何かするとか絶対無理。
「申し訳ないけど俺にはできないわ」
「なんで? やればいいじゃん」
「結斗?!」
俺の性格をわかっていて、何を言ってるんだ。
「僕も響介の学ラン見たいし」
理由はそれかよ。
なんて無責任な発言なんだ。
けれど結斗は楽しみだなぁなんて言って、石川も「そうだよね!」と頷いている。
「やるって言ってないんだけど。それにクラスのやつらも俺が応援団長なんてやりくくないか?」
「そんなことないよ。最近表情とか髪型とか変わって、みんな一条くんに興味津々なんだから。これを機にもっと一条くんのこと知ってもらおうよ」
「それ賛成! 決まりだね」
「なんで結斗が決めるんだよ」
けれどなんやかんや押しに弱い俺は、それ以上拒否することができず、結局応援団長をすることになってしまった。
石川は満足そうにしながら、よろしく! と爽やかな笑顔で帰っていった。
俺はその笑顔に気が重くなり、思わずため息が出る。
本当に俺にできるのか?
「響介、僕たちも帰ろう」
「そうだな」
……まあ、なるようにしかならないか。
重い腰を上げ、結斗と教室を出た。
帰り道、やっぱり頭の中は応援団長のことでいっぱいだった。
不安だ。不安しかない。
俺がクラスの男子をまとめて団長をしている姿なんて想像もつかない。
「響介、ごめんね」
「え、なにが?」
歩いていると突然結斗が謝ってきたので足を止めて見下ろす。
「応援団のこと。やっぱり余計なこと言ったかなって」
「いやまあ、もう仕方ないというか、俺もはっきり断れなかったし」
出来ればやりたくなかったけど、珍しくしおらしい結斗に強くは言えなかった。
「響介がさ、学校が楽しいと感じてくれたらいいなって思ったんだよね」
「え……?」
「知ってる? 響介、再会してからまだ一回も笑ってないんだよ」
「そんなことないだろ」
「あるよ!」
結斗は悲しそうな目で俺を見上げる。
いつもの冗談でもなんでもない。真剣な表情だ。
よく考えたら、たしかに笑っていないかもしれない。
そもそも学校では人と会話すらしなかった。
結斗と再会して、一緒に過ごすようになって、楽しいとは感じていたけど、声を出して笑うなんてことはしていないかも。
「心配かけてごめん。でも俺、結斗といるのは楽しいと思ってる。これは本当だから」
「本当に?」
「本当だって」
「よかった」
くしゃりとした笑顔を向けてくる結斗に、心底安心した。
こいつが笑ってないと調子狂うな。
「それと応援団長のことは話が別だけどな」
「響介ならできるよ」
「まあ、やるしかないよなぁ」
結斗の言うように楽しいと思えたらいいんだけど、そんなに簡単に切り替えられるものでもない。
練習が始まったらなにか変わるだろうか。
「そうだ、髪やっぱり下ろして良かったね」
石川が最近表情とか髪型が変わってみんな興味津々とか言ってたな。
髪型でそんなに印象が変わるならもっと早くに変えればよかった。
結斗に言われなければ髪型で変わるなんて思いもしなかったけど。
それに雰囲気が柔らかくなったって言われたのも結斗のおかげだ。
「ありがとな」
「そんな素直にお礼言うなんて珍しいじゃん」
「俺だって礼くらい言うから」
結斗は驚きながらも、嬉しそうにしていた。


