押し倒された腕は、簡単には押し返せない。
可愛い顔してけっこう力強いな。
泊まる約束はした気がするけど、一緒に寝るって……そんな約束したっけ。
よく覚えてるよな。
「ねえ響介、約束ちゃんと守ってよ」
「約束っていってももう小学生じゃないし」
「小学生じゃないといけないって意味じゃないでしょ」
「そうかもしれないけど、そもそも狭くて寝られないだろ」
「大丈夫だよ。くっついて寝れば」
かぶさっていた結斗の身体がだんだん沈んでくる。
いや大丈夫じゃないだろ。
てかこんな妙な雰囲気、耐えられない。
「結斗、眠いならベッド貸してやるから寝とけよ」
俺はそっと横に避けて抜け出した。
「別に眠いわけじゃないんだけどな」
起き上がってベッドに座り込んだ結斗は頬を膨らませてこっちを見る。
その無駄に可愛い表情やめろよな。
俺はベッドの下にあぐらをかいて座り、床に転がっていた漫画の本を手に取った。
何かしてないと落ち着かないので読むことにする。
別に今読みたかったわけじゃないけど、読み始めると面白くて入り込んでしまう。
なんかこのヒロイン、結斗に似てるな。
可愛いくて人懐っこいタイプなのに、時々やたら色っぽくて。能天気そうに見えてけっこう芯のあるタイプ……ってなに考えてるんだ。
物語に集中しよう。
と思っていたら、ベッドに座ったままの結斗が後ろから俺の髪をわしゃわしゃする。
「なにするんだよ」
「ひまー。かまって」
「子どもかよ。そこに漫画あるから適当に読めよ」
本棚を指差すけれど、結斗は見向きもしない。
「ねえ、なんでこんなに髪ツンツンさせてるの? 昔みたいに下ろしたほうが似合ってるよ」
「俺はお前みたいにサラサラじゃないからこうやってセットしないとまとまらないんだよ」
「そうかな? 下ろして毛先だけセットしたらいい感じだと思うけど」
そのいい感じが難しいから適当にワックスをつけて適当に立てるしかないんだよ。
わしゃわしゃにされた髪を適当に押さえてまた漫画に視線を落とした。
結斗もかまってもらうことを諦めたのか、本棚から漫画を手に取ってベッドに寝転んで読み始める。
めっちゃくつろいでるな。まあいいけど。
それからしばらくして母さんがご飯だよと呼びにきた。
メニューはみたこともないような鶏肉のグリル料理にバゲット、おしゃれなサラダとスープ、食後にはデザートまであった。
今日は結斗が帰ってきたお祝いなんて言っていたけど、気合い入り過ぎだろう。
俺の誕生日だってこんな料理作ってもらったことないのに。
結斗は終始美味しいと言いながら食べていて、母さんも嬉しそうだった。
ご飯を食べた後はすぐ自分の家へと帰っていった。
まだ両親は帰っていないようだったけど、一人で留守番できないような年じゃない。
特に心配することなく見送った。
その日の夜、ベッドに入って考えていた。
今日一日あっという間に過ぎてしまったけれど、よく考えれば俺の十年間続いていた初恋が終わってしまったんだ。
終わるどころか、始まってもいなかった。
ユイちゃんという女の子はいなかったのだから、俺の初恋は幻想のようなものだった。
会わなくなっても、周りに彼女ができ始めても、俺はユイちゃんをずっと想っていたのに。
再会した瞬間、全部消え去ってしまった。
結斗からすると迷惑な話か。勝手に勘違いして勝手にショックを受けるなんて。
でも、十年ぶりに再会したあいつは見た目こそわかりやすく男だったけど、それ以外はほとんど変わっていなかった。
明るくて、人懐っこくて、表情がコロコロ変わって可愛い……。
まあ、何せいいやつなんだよなあ。
高校に入ってから全然友達ができなかった俺にはもったいないくらい。
せっかく再会したんだし、初恋のことは忘れて、友情を育んでいこう。
うん、そうしよう。
しっかり考えがまとまったところで眠りについた。
可愛い顔してけっこう力強いな。
泊まる約束はした気がするけど、一緒に寝るって……そんな約束したっけ。
よく覚えてるよな。
「ねえ響介、約束ちゃんと守ってよ」
「約束っていってももう小学生じゃないし」
「小学生じゃないといけないって意味じゃないでしょ」
「そうかもしれないけど、そもそも狭くて寝られないだろ」
「大丈夫だよ。くっついて寝れば」
かぶさっていた結斗の身体がだんだん沈んでくる。
いや大丈夫じゃないだろ。
てかこんな妙な雰囲気、耐えられない。
「結斗、眠いならベッド貸してやるから寝とけよ」
俺はそっと横に避けて抜け出した。
「別に眠いわけじゃないんだけどな」
起き上がってベッドに座り込んだ結斗は頬を膨らませてこっちを見る。
その無駄に可愛い表情やめろよな。
俺はベッドの下にあぐらをかいて座り、床に転がっていた漫画の本を手に取った。
何かしてないと落ち着かないので読むことにする。
別に今読みたかったわけじゃないけど、読み始めると面白くて入り込んでしまう。
なんかこのヒロイン、結斗に似てるな。
可愛いくて人懐っこいタイプなのに、時々やたら色っぽくて。能天気そうに見えてけっこう芯のあるタイプ……ってなに考えてるんだ。
物語に集中しよう。
と思っていたら、ベッドに座ったままの結斗が後ろから俺の髪をわしゃわしゃする。
「なにするんだよ」
「ひまー。かまって」
「子どもかよ。そこに漫画あるから適当に読めよ」
本棚を指差すけれど、結斗は見向きもしない。
「ねえ、なんでこんなに髪ツンツンさせてるの? 昔みたいに下ろしたほうが似合ってるよ」
「俺はお前みたいにサラサラじゃないからこうやってセットしないとまとまらないんだよ」
「そうかな? 下ろして毛先だけセットしたらいい感じだと思うけど」
そのいい感じが難しいから適当にワックスをつけて適当に立てるしかないんだよ。
わしゃわしゃにされた髪を適当に押さえてまた漫画に視線を落とした。
結斗もかまってもらうことを諦めたのか、本棚から漫画を手に取ってベッドに寝転んで読み始める。
めっちゃくつろいでるな。まあいいけど。
それからしばらくして母さんがご飯だよと呼びにきた。
メニューはみたこともないような鶏肉のグリル料理にバゲット、おしゃれなサラダとスープ、食後にはデザートまであった。
今日は結斗が帰ってきたお祝いなんて言っていたけど、気合い入り過ぎだろう。
俺の誕生日だってこんな料理作ってもらったことないのに。
結斗は終始美味しいと言いながら食べていて、母さんも嬉しそうだった。
ご飯を食べた後はすぐ自分の家へと帰っていった。
まだ両親は帰っていないようだったけど、一人で留守番できないような年じゃない。
特に心配することなく見送った。
その日の夜、ベッドに入って考えていた。
今日一日あっという間に過ぎてしまったけれど、よく考えれば俺の十年間続いていた初恋が終わってしまったんだ。
終わるどころか、始まってもいなかった。
ユイちゃんという女の子はいなかったのだから、俺の初恋は幻想のようなものだった。
会わなくなっても、周りに彼女ができ始めても、俺はユイちゃんをずっと想っていたのに。
再会した瞬間、全部消え去ってしまった。
結斗からすると迷惑な話か。勝手に勘違いして勝手にショックを受けるなんて。
でも、十年ぶりに再会したあいつは見た目こそわかりやすく男だったけど、それ以外はほとんど変わっていなかった。
明るくて、人懐っこくて、表情がコロコロ変わって可愛い……。
まあ、何せいいやつなんだよなあ。
高校に入ってから全然友達ができなかった俺にはもったいないくらい。
せっかく再会したんだし、初恋のことは忘れて、友情を育んでいこう。
うん、そうしよう。
しっかり考えがまとまったところで眠りについた。


