それからも結斗とはいつも一緒にいて、上手くいっていると思う。
お互いの家に行ったときは、どちらからともなくキスをするようになった。
優しく触れるだけの唇に毎回ドキドキして、恥ずかしくて、満たされている。
でも、結斗はいろいろと我慢しているんだろうか。
俺は、結斗が好きだ。
同じ好きだと確信している。
ただ『その先』に進むことはなく、変わらない関係だった。
俺にはそれが心地よくて、このままでいたいと思ってしまう。
あれから『その先』のことは何も言われてない。
お互いに好き合ってるんだから、もっとふれあいたいと思うのは当然のことなんだろうか。
キスだけで満足するのは恋人ではないのだろうか。
結斗は、満足していないのだろうか。
「一条くん、また悩み事?」
休み時間、ボーっとしていたら石川が声をかけてきた。
俺って、そんなにわかりやすいだろうか。
「石川ってさ、前いた彼女とシた?」
「そういう話? もちろんやることはやったね。付き合ってるんだし」
「まあそうか。付き合ってどれくらいでした?」
「前の彼女は付き合う前にやったかな。なんか流れで」
「え、まじ?! 全然参考になんないわ」
付き合っていないのに、流れでってどんな流れなんだ?
お互いに気持ちを確かめ合って、付き合って、それから始めるもんじゃないのか?
するとそこに、また山本がやってきた。
なぜかすごくニヤニヤしている。
「恋バナするなら言ってよ」
「いや、恋バナじゃないから」
ある意味恋バナだが、女子の前でする話じゃない。
「山本さん、最近ラグビー部の彼氏できたよね? ずばり体の関係は?」
おいおい石川。いきなり女子になに聞いているんだよ。
でも、山本彼氏できたんだ。
それに聞かれて嬉しそうだし。
「私ね、見た目はいかついのに奥手な男子が好きなんだよね」
「そうなんだ……」
巷に聞くギャップ萌えというやつか?
いろんな好みがあるんだなと思っていたら、二人は同時に俺を見る。
異様にじろじろ見られている。
なんだ? ん?
見た目はいかついのに奥手な男子……。
もしかして、俺もその類ってことか?
だから打ち上げの時にあんなにグイグイきてたのか?
知ったのが山本に彼氏ができた後で良かった。
「山本さんは攻めたいタイプなんだね」
「強そうな男がドギマギしてるのがいいのよ。じらしてじらして少しずつ詰めていくの。だからまだ最後までやってないわ」
「うわあ。経験ないとはいえ男は欲の塊なんだからじらされるとキツイよ」
「大丈夫。ちゃんと悦んでるのを確認しながらやってるから」
二人の会話についていけない。
わかったのは、いろんなタイプと性癖があるということ。
「とにかく一条くん、主導権を握った方が勝ちよ」
「いや勝ちとか負けとかそんな話はしてないんだけど」
「彼女は山本さんみたいなタイプではないんでしょ?」
結斗はこんな特殊性癖を持ったドSじゃない。
というか、付き合ってもない。
「彼女ができたわけじゃないから」
「そうなの?」
そうだ。そもそも俺たちは付き合っているわけじゃない。
好きだと伝えただけで、恋人になった気でいた。
先へ進むかどうかより、まずは関係をしっかり築くべきなのかも。
「一条くん、やっぱり私が思っていた通り奥手だったのね」
「山本さん、浮気はだめだよ」
「心配しないで。私に興味ない人には興味ないから。それに今彼氏、いい感じに焦れてて一番楽しい時なのよ」
やっぱり、山本は変なやつだ。
見た目は可愛らしいのに。
ストーカーに困っていたとは思えないくらいタフなやつだ。
自分から話をふったものの、まさかクラスメイトとこんな話をすることになるとは思っていなかった。
でも、高校生男子って感じするな。
こういう時間もけっこう楽しいし、悪くない。
◇ ◇ ◇
その日、学校が終わったあと結斗が家に来ていた。
今日はうちで晩ごはんを食べるらしい。
ご飯までの時間、いつものように俺の部屋で過ごしているが、どこか機嫌が悪い。
俺はクッションの上ににあぐらをかいて、ベッドにもたれてスマホを見ていた。
結斗は我が物顔でベッドに寝転んでいる。
それはいつものことだが、何も話さないのだ。
俺が漫画を読んでいたり、スマホゲームをしていたっていつもちょっかいをかけてくるのに、それが一切ない。
気になる。
俺、なにかしたのか?
持っていたスマホを置いて、後ろを振り返る。
ベッドに頬杖をつくようにして、寝転ぶ結斗と目を合わせた。
「なんかあったのか?」
「別になにもないよ」
「なにもないことないだろ。ずっと大人しいじゃん」
「ちょっと拗ねてるだけだからほっといて」
素直に拗ねてるっていうなんて可愛いやつだな。
ほっとけって言われてほっとけるわけないだろ。
「なんで拗ねてるんだ? 俺、なんかした?」
「最近、クラスですごく楽しそうだなと思って。今日も石川くんと可愛い女子となんか盛り上がってたし」
教室で話してたの見てたんだ。
まあ俺も廊下にいる結斗を見てるし、お互い気にするよな。
「でも、結斗だって告白してきた女子といつも話してるだろ」
「そうだよ。だから響介のこと責められなくて黙って拗ねてるんだ。僕、自分勝手だから」
枕に顔をうずめる姿が可愛い。
「結斗、こっち向いて」
顔を上げた結斗に、そっとキスをする。
すると後頭部に手が伸びてきて、何度もちゅ、ちゅ、と音を立てながら角度を変えて唇が触れる。
だんだん息が苦しくなってきたところで、手が離された。
俺からしたって、いつも主導権は結斗になる。
「響介も、ヤキモチやいてた?」
「当たり前だろ」
「ごめんね。響介のクラスでの様子見たくて廊下に出たらいつもついてくるんだよ。友達として仲良くしようって言われてるからきつくも言えないし」
俺のことを見るために廊下にでてたんだ。
なんだ知らなかった。
「いいよ。その分こうやって一緒にいればいいんだから」
「響介、好き」
結斗がベッドの上から抱きついてきた。
俺は背中に手を回し、トントンと優しくたたく。
「俺も好きだ」
「もっと、もっと好きになってよ」
やっぱり、結斗の言葉からどこか不安を感じられる。
どうすれば、俺の気持ちが伝わるのだろう。
体の関係ではなく、恋人っぽいことってなんだろう。
デートとか?
「結斗、今度の休み出かけようぜ。遊園地とか好きだっただろ?」
「遊園地……いいの?」
「誘ってるんだからいいだろ」
結斗は嬉しそうに「行く」と頷いた。
前回誘ったときは結局映画を観ることになったから、出かけるのかこれがはじめてだ。
楽しみだな。
お互いの家に行ったときは、どちらからともなくキスをするようになった。
優しく触れるだけの唇に毎回ドキドキして、恥ずかしくて、満たされている。
でも、結斗はいろいろと我慢しているんだろうか。
俺は、結斗が好きだ。
同じ好きだと確信している。
ただ『その先』に進むことはなく、変わらない関係だった。
俺にはそれが心地よくて、このままでいたいと思ってしまう。
あれから『その先』のことは何も言われてない。
お互いに好き合ってるんだから、もっとふれあいたいと思うのは当然のことなんだろうか。
キスだけで満足するのは恋人ではないのだろうか。
結斗は、満足していないのだろうか。
「一条くん、また悩み事?」
休み時間、ボーっとしていたら石川が声をかけてきた。
俺って、そんなにわかりやすいだろうか。
「石川ってさ、前いた彼女とシた?」
「そういう話? もちろんやることはやったね。付き合ってるんだし」
「まあそうか。付き合ってどれくらいでした?」
「前の彼女は付き合う前にやったかな。なんか流れで」
「え、まじ?! 全然参考になんないわ」
付き合っていないのに、流れでってどんな流れなんだ?
お互いに気持ちを確かめ合って、付き合って、それから始めるもんじゃないのか?
するとそこに、また山本がやってきた。
なぜかすごくニヤニヤしている。
「恋バナするなら言ってよ」
「いや、恋バナじゃないから」
ある意味恋バナだが、女子の前でする話じゃない。
「山本さん、最近ラグビー部の彼氏できたよね? ずばり体の関係は?」
おいおい石川。いきなり女子になに聞いているんだよ。
でも、山本彼氏できたんだ。
それに聞かれて嬉しそうだし。
「私ね、見た目はいかついのに奥手な男子が好きなんだよね」
「そうなんだ……」
巷に聞くギャップ萌えというやつか?
いろんな好みがあるんだなと思っていたら、二人は同時に俺を見る。
異様にじろじろ見られている。
なんだ? ん?
見た目はいかついのに奥手な男子……。
もしかして、俺もその類ってことか?
だから打ち上げの時にあんなにグイグイきてたのか?
知ったのが山本に彼氏ができた後で良かった。
「山本さんは攻めたいタイプなんだね」
「強そうな男がドギマギしてるのがいいのよ。じらしてじらして少しずつ詰めていくの。だからまだ最後までやってないわ」
「うわあ。経験ないとはいえ男は欲の塊なんだからじらされるとキツイよ」
「大丈夫。ちゃんと悦んでるのを確認しながらやってるから」
二人の会話についていけない。
わかったのは、いろんなタイプと性癖があるということ。
「とにかく一条くん、主導権を握った方が勝ちよ」
「いや勝ちとか負けとかそんな話はしてないんだけど」
「彼女は山本さんみたいなタイプではないんでしょ?」
結斗はこんな特殊性癖を持ったドSじゃない。
というか、付き合ってもない。
「彼女ができたわけじゃないから」
「そうなの?」
そうだ。そもそも俺たちは付き合っているわけじゃない。
好きだと伝えただけで、恋人になった気でいた。
先へ進むかどうかより、まずは関係をしっかり築くべきなのかも。
「一条くん、やっぱり私が思っていた通り奥手だったのね」
「山本さん、浮気はだめだよ」
「心配しないで。私に興味ない人には興味ないから。それに今彼氏、いい感じに焦れてて一番楽しい時なのよ」
やっぱり、山本は変なやつだ。
見た目は可愛らしいのに。
ストーカーに困っていたとは思えないくらいタフなやつだ。
自分から話をふったものの、まさかクラスメイトとこんな話をすることになるとは思っていなかった。
でも、高校生男子って感じするな。
こういう時間もけっこう楽しいし、悪くない。
◇ ◇ ◇
その日、学校が終わったあと結斗が家に来ていた。
今日はうちで晩ごはんを食べるらしい。
ご飯までの時間、いつものように俺の部屋で過ごしているが、どこか機嫌が悪い。
俺はクッションの上ににあぐらをかいて、ベッドにもたれてスマホを見ていた。
結斗は我が物顔でベッドに寝転んでいる。
それはいつものことだが、何も話さないのだ。
俺が漫画を読んでいたり、スマホゲームをしていたっていつもちょっかいをかけてくるのに、それが一切ない。
気になる。
俺、なにかしたのか?
持っていたスマホを置いて、後ろを振り返る。
ベッドに頬杖をつくようにして、寝転ぶ結斗と目を合わせた。
「なんかあったのか?」
「別になにもないよ」
「なにもないことないだろ。ずっと大人しいじゃん」
「ちょっと拗ねてるだけだからほっといて」
素直に拗ねてるっていうなんて可愛いやつだな。
ほっとけって言われてほっとけるわけないだろ。
「なんで拗ねてるんだ? 俺、なんかした?」
「最近、クラスですごく楽しそうだなと思って。今日も石川くんと可愛い女子となんか盛り上がってたし」
教室で話してたの見てたんだ。
まあ俺も廊下にいる結斗を見てるし、お互い気にするよな。
「でも、結斗だって告白してきた女子といつも話してるだろ」
「そうだよ。だから響介のこと責められなくて黙って拗ねてるんだ。僕、自分勝手だから」
枕に顔をうずめる姿が可愛い。
「結斗、こっち向いて」
顔を上げた結斗に、そっとキスをする。
すると後頭部に手が伸びてきて、何度もちゅ、ちゅ、と音を立てながら角度を変えて唇が触れる。
だんだん息が苦しくなってきたところで、手が離された。
俺からしたって、いつも主導権は結斗になる。
「響介も、ヤキモチやいてた?」
「当たり前だろ」
「ごめんね。響介のクラスでの様子見たくて廊下に出たらいつもついてくるんだよ。友達として仲良くしようって言われてるからきつくも言えないし」
俺のことを見るために廊下にでてたんだ。
なんだ知らなかった。
「いいよ。その分こうやって一緒にいればいいんだから」
「響介、好き」
結斗がベッドの上から抱きついてきた。
俺は背中に手を回し、トントンと優しくたたく。
「俺も好きだ」
「もっと、もっと好きになってよ」
やっぱり、結斗の言葉からどこか不安を感じられる。
どうすれば、俺の気持ちが伝わるのだろう。
体の関係ではなく、恋人っぽいことってなんだろう。
デートとか?
「結斗、今度の休み出かけようぜ。遊園地とか好きだっただろ?」
「遊園地……いいの?」
「誘ってるんだからいいだろ」
結斗は嬉しそうに「行く」と頷いた。
前回誘ったときは結局映画を観ることになったから、出かけるのかこれがはじめてだ。
楽しみだな。


