晴れ空と太陽と、君と僕


 昼休み。
 移動教室から戻ると、僕のカバンが無かった。どうして? 僕は疑問だらけになりながら無意識に机の中を見た。机の中に覚えのないメモがある。心臓がバクバク鳴る。震える手で、二つ折りのそれを開いた。

『昼休みにB棟の二階外階段に来い』
 一言書かれている。女子の字だ。告白とかそんな感じじゃないのは、僕にも分かる。
 カバンにはお祖母ちゃんのカーディガンが入っている。あのカーディガンは、お祖母ちゃんのお気に入りだ。汚されたら困る。慌てて外階段に向かった。

「あ、来たじゃん」
「早かったねぇ」
「ここ、あっつい。早く済まそ」
 ジュースとパンやお菓子を立ち食いしている女子たちがいる。陽が当たるから暑い日は誰も来ない外階段。

「影山、ちょっと言いたいことあってさぁ」
 僕のカバンは女子の足元に置いてある。彼女たちは、時々僕に悪意の悪口を向けてくる四人組。

 ――僕、何もしてないと思ったけど、何かした? 僕のカバン、どうして? 
 喋りたいことはあるのに、緊張で口が震えて声が出ない。

「もー、立ってるだけでキモイんだけど」
 リーダー格の井上さんは僕より五センチ以上背が高い。他の三人は僕と同じくらい。迫力が、怖い。この雰囲気だけでも身体が震える。化粧と香水の強い匂いが鼻につく。

「最近、ガッチャンと仲いーじゃん?」
 井上さんが顔を斜めにして僕を睨む。
「気に障るんだよ。影山のくせに、何調子こいてんだよ!」
 肩をどつかれる。よろける。恐怖で動けない。
「男だろうが。なよってんじゃねーよ」
 笑い声。

 ――何? 僕が和田君と仲良くしたからいけなかった? クラスのみんなほど仲良しじゃないよ。
 考えがグルグル回る。よく分からない。

「ガッチャンに取り入って、自分も人気者気取りかよ! 何がアイドル男子だ! オカマかよ! 気持ち悪いんだよ!」
 何か怒鳴るように言われるが、頭に入ってこない。身体の震えが止まらない。どうしよう。カバンを返してほしいのに、言えない。汗が止まらない。

「なんか言えよ! お前、ほんとキモイ。女物の服なんて持ち歩いて! クラスのみんなに女装趣味の変態って言いふらしてやろっか?」
「うわ、キモイ服。ババァかよ」
「趣味悪すぎでしょ~~」
 僕のカバンのビニール袋から、お祖母ちゃんのカーディガンが出されている。それは、ダメだ。

「か、返して、ください。返して」
 手を伸ばすが井上さんが高くにあげてしまう。僕は必死に追いかけた。

「近づくな! キモイんだよ!」
 ドンっと突き飛ばされた。

 ――あ、空が見えた。

 背中に重力がかかる。そのまま仰向けに階段を落下する。ゴチンっと衝撃が走った。頭がガンガンする。身体中が熱くて痛くて、動けない。日光が強い。目が回る。

「やだ! 知らない!」
「あ、ちょっと~!」
 複数の声と足音が耳にワンワン響く。

 ――ちょっと、待って。お祖母ちゃんの、服は?