④
教室に着くと緊張した。横に和田君がいなければ入れなかった。
「あ、影山じゃん。おはよ~」
「お、もう大丈夫か?」
すぐに数人が声をかけて来た。これまで話したこともないような人たちが優しい声で僕を呼ぶ。有り得ない状況に汗が出る。言葉で返事ができずコクコクと頷き自分の席に着いた。和田君が席まで付き添ってくれる。すると、和田君の友達が近くに来た。
「影山、手伝うよ。腕が使えなくて大変だろ?」
「俺も、何でも言って」
彼らは僕の髪をピンで留めた人たちだ。心配そうな顔をしている。だけど、人が近くにいるほうが緊張して震えてしまう。
「いいよ。自分で出来るから」
そう声をかけるが彼らは傍の席に座ってしまう。椅子を近づけてくる。
「影山、ほんとゴメン。俺たち、あの日お前の髪ピンで留めて、それがキッカケのひとつになってしまって」
「本当にごめん。あの日、昼休みに謝りたかったんだ。本当なんだ」
僕はピンの事など忘れていなのに、彼らはずっと気にしていたのかもしれない。
「もう、気にしていないし、大丈夫。あの、心配してくれて、ありがとう」
一生懸命伝えたけれど小声でしか話せなかった。それでも二人ともが笑顔になった。
「かげやま~! 小鳥ボイス~! なんて可愛いんだ」
一人が僕に抱きつこうとして、和田君に阻止される。僕は本当に抱きつかれるかと思い驚いた。
「ガッチャン意地悪~ちょっとだけ~」
「だめだ! お触り禁止!」
そんな言い合いに笑ってしまった。
「井上、謝れよ」
「おぉ、謝れ」
冷たい声がクラスに飛んだ。びっくりして後ろを見ると、運動部の男子たちが声を上げていた。
井上さんは下を向いたままだ。僕は、こういう雰囲気に弱い。僕が怒られているかのように怖くなってしまう。
井上さんは、ガタンと大きな音を立てて立ち上がり、教室を出て行ってしまった。僕はどうしていいか分からず、和田君を見た。
和田君は怖い顔で井上さんを睨んでいた。こんな顔、見たことなかった。
和田君が一言をこぼす。
「影山は、気にしなくていい」
井上さん以外の僕を呼び出した女子三人が近くに来る。僕は混乱で座ったまま動けなかった。教室がシーンと静まる。三人とも泣いている。
「ごめんなさい。あたしたち友香に言われただけなの。階段から落とそうなんて、考えてなかったの」
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」
教室の空気が怖くて緊張する。とにかくコクリと頷いた。変な汗が流れた。
和田君が立ち上がって、三人と僕との間の壁になる。
「許すかどうか、影山がゆっくり考えたらいいよ。今、答えなくていい」
僕にすごく優しい顔を向けているが、三人の女子には完全拒絶の雰囲気を出している。和田君が、怒っている。
何だろう。これまで教室に居るかいないか分からない存在だった僕が、みんなの空気をおかしくしている。嫌な汗が滲んだ。
ホームルームで僕が復学したことを先生が言い、みんなが拍手をした。
「影山の骨折はまだ治っていない。腕が使えないから、皆で手助けするように」
「はーい」
「了解~」
ばらばらと返事が聞こえる。妙な一体感だ。
僕は居心地が悪くて、下を向いたままぺこりとお辞儀した。
そのホームルームに井上さんはいなかった。
教室に着くと緊張した。横に和田君がいなければ入れなかった。
「あ、影山じゃん。おはよ~」
「お、もう大丈夫か?」
すぐに数人が声をかけて来た。これまで話したこともないような人たちが優しい声で僕を呼ぶ。有り得ない状況に汗が出る。言葉で返事ができずコクコクと頷き自分の席に着いた。和田君が席まで付き添ってくれる。すると、和田君の友達が近くに来た。
「影山、手伝うよ。腕が使えなくて大変だろ?」
「俺も、何でも言って」
彼らは僕の髪をピンで留めた人たちだ。心配そうな顔をしている。だけど、人が近くにいるほうが緊張して震えてしまう。
「いいよ。自分で出来るから」
そう声をかけるが彼らは傍の席に座ってしまう。椅子を近づけてくる。
「影山、ほんとゴメン。俺たち、あの日お前の髪ピンで留めて、それがキッカケのひとつになってしまって」
「本当にごめん。あの日、昼休みに謝りたかったんだ。本当なんだ」
僕はピンの事など忘れていなのに、彼らはずっと気にしていたのかもしれない。
「もう、気にしていないし、大丈夫。あの、心配してくれて、ありがとう」
一生懸命伝えたけれど小声でしか話せなかった。それでも二人ともが笑顔になった。
「かげやま~! 小鳥ボイス~! なんて可愛いんだ」
一人が僕に抱きつこうとして、和田君に阻止される。僕は本当に抱きつかれるかと思い驚いた。
「ガッチャン意地悪~ちょっとだけ~」
「だめだ! お触り禁止!」
そんな言い合いに笑ってしまった。
「井上、謝れよ」
「おぉ、謝れ」
冷たい声がクラスに飛んだ。びっくりして後ろを見ると、運動部の男子たちが声を上げていた。
井上さんは下を向いたままだ。僕は、こういう雰囲気に弱い。僕が怒られているかのように怖くなってしまう。
井上さんは、ガタンと大きな音を立てて立ち上がり、教室を出て行ってしまった。僕はどうしていいか分からず、和田君を見た。
和田君は怖い顔で井上さんを睨んでいた。こんな顔、見たことなかった。
和田君が一言をこぼす。
「影山は、気にしなくていい」
井上さん以外の僕を呼び出した女子三人が近くに来る。僕は混乱で座ったまま動けなかった。教室がシーンと静まる。三人とも泣いている。
「ごめんなさい。あたしたち友香に言われただけなの。階段から落とそうなんて、考えてなかったの」
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」
教室の空気が怖くて緊張する。とにかくコクリと頷いた。変な汗が流れた。
和田君が立ち上がって、三人と僕との間の壁になる。
「許すかどうか、影山がゆっくり考えたらいいよ。今、答えなくていい」
僕にすごく優しい顔を向けているが、三人の女子には完全拒絶の雰囲気を出している。和田君が、怒っている。
何だろう。これまで教室に居るかいないか分からない存在だった僕が、みんなの空気をおかしくしている。嫌な汗が滲んだ。
ホームルームで僕が復学したことを先生が言い、みんなが拍手をした。
「影山の骨折はまだ治っていない。腕が使えないから、皆で手助けするように」
「はーい」
「了解~」
ばらばらと返事が聞こえる。妙な一体感だ。
僕は居心地が悪くて、下を向いたままぺこりとお辞儀した。
そのホームルームに井上さんはいなかった。


