晴れ空と太陽と、君と僕


「影山、おはよ」
 和田君が微笑んでいる。

「……え? あれ? 和田君……?」
 会いたい人に会えた感動が走り、喜びと驚きがごちゃごちゃと混じって、上手く言葉が出ない。

「修が学校行くって連絡したら、送り迎えしてくれるって。和田君、ありがとう。お願いします」
 後ろから母さんの声がする。いつの間にやり取りする仲になっていたのだろう。

「おはようございます。俺の自転車、どこに置いたらいいですか?」
 テキパキと和田君が動いて、僕の荷物をひょいっと持ってくれる。右手に持っていた荷物を簡単に奪われた。僕は、ただ、和田君から視線を外せなかった。夢みたいだ。
「……自分で、持つよ」
 やっと僕の口から一言が出た。

「いいから。行こう。バス、遅れるとヤバい」
 僕に笑顔が向けられる。この顔をどれだけ思い浮かべたか。隣に和田君がいる事が信じられなくて、何度も彼を見上げた。朝の和田君はいつもより輝いている。

「あの、遠回りだよね。えっと……」
 すごく話したいのに、何から喋っていいのか分からない。

「学校、行く気になってよかった」
 微笑みがまぶしい。和田君から光が降り注ぐみたいだ。この笑顔を見たかった。胸が熱くなる。

「あ、えっと、家まで来てくれていたって知らなくて。あの、ありがとう」
 和田君の輝きに顔が火照る。和田君が立ち止まった。つられて僕も歩みを止めた。

「影山に、会いたかったから」
 強い視線と言葉に射貫かれる。息が止まるかと思った。心臓が身体をバクバク走りまわる。でも、僕も伝えたい。

「ぼ、僕も。和田君に会いたくて、学校行きたかった。あ、会えて、すごく、すごく、嬉しい」
 声が震えた。伝えることが出来た。ドキドキが激しくなっている。深呼吸して息を整えた。僕をまっすぐ見ている和田君の顔が徐々に紅潮する。和田君が口を大きな手で隠した。

「すげー。心臓が破裂しそう……」
 和田君の手の隙間から言葉が漏れた。僕と同じ気持ちなのだと思った。嬉しかった。

 ふわりと前髪をよけられ、大きな手が頬に触る。これも久しぶりだ。気持ちがいい。体温が懐かしい。手に頬をすり寄せてしまう。

 ――僕に影が落ちた。僕の額に、ふっと触れて、すぐに離れる唇。

「……行こ」
 和田君が真っ赤な顔で僕の手を引く。和田君より僕のほうが真っ赤だろう。大きな熱い手が少し汗ばんでいる。
 朝の景色がキラキラ輝いて見えた。

 バスの中では和田君が人にぶつからないように気遣ってくれて、時々腕の中に包み込まれる。そんな時は、和田君の身体の厚みや心臓の音、匂い、体温、すべて独り占めしているように感じた。
 普段あまり利用しないバス通学が特別なモノに思えた。