Ⅳ この想いは
①
頭が、痛い。ガンガンする。
「う~」
誰かの唸り声で意識が浮上した。目覚めながら僕の声だと気が付く。薄っすら目を開けた。身体のあちこちが痛すぎる。
「目、覚めた?」
声のほうに目を向けてみた。頭を動かせない。優しい声。これは、和田君?
「良かった。良かった。死んじゃうかと思った」
点滴の繋がる僕の右手を握って、和田君が泣いている。泣きはらした顔だ。夢だろうか。よく分からない。握られた手が温かい。
「今、医者の話をお前の親が聞いてる。さっきまで、保健室の先生がいたんだよ」
声が震えている。和田君の背中も震えている。いつもは自信に満ちた和田君なのに。
――泣かないで。どうしたの? 今日も一緒にアイス食べようよ。お祖父さん、起きているといいね。あれ? お祖母ちゃんのカーディガン、どうなったかな。
和田君を励ましたくて色々話しかけたつもりだけど、声になっていたのか分からない。
知らないうちに僕はまた眠ってしまっていた。
僕は頭を打っていて二日間の入院になった。左腕はヒビが入っていて固定されている。和田君は放課後に病院に立ち寄ってくれた。
「痛くない? 大丈夫か?」
「うん。痛み止めを飲んでるよ」
「そっか」
見舞いに来る和田君は元気がなくて辛そうだ。しょげている背中が痛々しい。
和田君は多くを話さない。思い詰めたような雰囲気で静かに傍にいる。無言の和田君が骨折していない手を握ってきた。ちょっとドキッとする。
和田君の顔は悲しそうだ。お祖母ちゃんの施設で時々僕に触れて来た和田君は愛おしそうな瞳だったのに。その違いが僕の胸にチクっと刺さる。
こんな様子の和田君にクラスの事を聞いて良いのか分からない。井上さんたちの事を言った方が良いのか分からない。僕はどうしたらいい?
和田君の心が知りたい。けれど、それを聞いて良いのか分からない。
分からない事ばかりで苦しい。
僕に出来ることは下を向くことだけだった。そんな自分が情けなかった。
病院には担任の先生や教頭先生校長先生も来た。先生は僕の両親にものすごく謝っていた。
後頭部は三針縫う傷だった。傷のところは髪が生えてこないらしいが、男だし別に構わないと思った。一週間後に縫ってある糸をとるまでは髪を洗えない。毎日の通院が必要となった。
父と母は、しばらく学校に行かなくていいと言っている。頭は痛いし、腕も痛むから、しばらく休むことにした。
お祖母ちゃんには、お母さんが僕の怪我を伝えてくれたらしい。心配かけちゃったかもしれない。
自宅の部屋から外を見る。怪我が治るまで洗濯は出来ない。お祖母ちゃんとこにも行けない。
その内に寒さが来てアイスが食べられないかもしれない。和田君にチョコミントを食べてほしかった。和田君の輝く笑顔と、病院で泣いていた顔を思い出して、胸が苦しかった。
見るだけでもいいから、和田君に会いたい。
病院に来てくれた和田君とは、退院後会えていない。
①
頭が、痛い。ガンガンする。
「う~」
誰かの唸り声で意識が浮上した。目覚めながら僕の声だと気が付く。薄っすら目を開けた。身体のあちこちが痛すぎる。
「目、覚めた?」
声のほうに目を向けてみた。頭を動かせない。優しい声。これは、和田君?
「良かった。良かった。死んじゃうかと思った」
点滴の繋がる僕の右手を握って、和田君が泣いている。泣きはらした顔だ。夢だろうか。よく分からない。握られた手が温かい。
「今、医者の話をお前の親が聞いてる。さっきまで、保健室の先生がいたんだよ」
声が震えている。和田君の背中も震えている。いつもは自信に満ちた和田君なのに。
――泣かないで。どうしたの? 今日も一緒にアイス食べようよ。お祖父さん、起きているといいね。あれ? お祖母ちゃんのカーディガン、どうなったかな。
和田君を励ましたくて色々話しかけたつもりだけど、声になっていたのか分からない。
知らないうちに僕はまた眠ってしまっていた。
僕は頭を打っていて二日間の入院になった。左腕はヒビが入っていて固定されている。和田君は放課後に病院に立ち寄ってくれた。
「痛くない? 大丈夫か?」
「うん。痛み止めを飲んでるよ」
「そっか」
見舞いに来る和田君は元気がなくて辛そうだ。しょげている背中が痛々しい。
和田君は多くを話さない。思い詰めたような雰囲気で静かに傍にいる。無言の和田君が骨折していない手を握ってきた。ちょっとドキッとする。
和田君の顔は悲しそうだ。お祖母ちゃんの施設で時々僕に触れて来た和田君は愛おしそうな瞳だったのに。その違いが僕の胸にチクっと刺さる。
こんな様子の和田君にクラスの事を聞いて良いのか分からない。井上さんたちの事を言った方が良いのか分からない。僕はどうしたらいい?
和田君の心が知りたい。けれど、それを聞いて良いのか分からない。
分からない事ばかりで苦しい。
僕に出来ることは下を向くことだけだった。そんな自分が情けなかった。
病院には担任の先生や教頭先生校長先生も来た。先生は僕の両親にものすごく謝っていた。
後頭部は三針縫う傷だった。傷のところは髪が生えてこないらしいが、男だし別に構わないと思った。一週間後に縫ってある糸をとるまでは髪を洗えない。毎日の通院が必要となった。
父と母は、しばらく学校に行かなくていいと言っている。頭は痛いし、腕も痛むから、しばらく休むことにした。
お祖母ちゃんには、お母さんが僕の怪我を伝えてくれたらしい。心配かけちゃったかもしれない。
自宅の部屋から外を見る。怪我が治るまで洗濯は出来ない。お祖母ちゃんとこにも行けない。
その内に寒さが来てアイスが食べられないかもしれない。和田君にチョコミントを食べてほしかった。和田君の輝く笑顔と、病院で泣いていた顔を思い出して、胸が苦しかった。
見るだけでもいいから、和田君に会いたい。
病院に来てくれた和田君とは、退院後会えていない。


