- 手のひらに、未来。 -

 17歳。
 子どもから卒業して、大人になる約1年間。きっと、このまま恋などせず、みんな、それぞれの進路で、例外なく私も、生きていくのだと思っていた。
 
 コトンッ___。

 聞き慣れたはずの、けれど、どこか懐かしい、そんな音がどこからかしてきた。
 そして、その音のすぐ後、私に安心感をくれる、履き慣れた茶色のローファーが地面を蹴る音。

 「いつもの缶コーヒー、なかったわ。」

 その声と共に、物心つく前から一緒に過ごしてきた、腐れ縁の彼が、缶コーヒーを、私の頭に優しく置いてきた。

 いつもの缶コーヒー、なんて、飲めないのに、こうしてたまに、カッコつけて、私の心を彩ろうとしてくる。


 ・・・・・・ずるい。


 「たまには頼れってことで。はい、ミルクティー。」


 缶コーヒーを手に取り、手ぶくろ越しの温かさに、彼の温もりさえも感じ取れた。


 この辺りには自販機程度の光しかない。言い換えれば、高校生にとっては抜け出したくなる、絵に描いたような、田舎。とにかく、辛すぎる。
 だから、自販機の光は、もはや希望の光ですらあって。


 何もない。それでも、生まれ育ったこの地で、彼と一緒に過ごしてしまうのは、きっと____。


 この先、願わくば、この未来に、明日に、これからも


 君がいてほしい。



 もうすぐ、私たちは大人になる。