止まない雨は無い。雨音は途絶えている。昨夜、雷を作り出していた暗雲もじきに消え去る。午後からは晴れると天気予報も言っている。
結局、オレは、二日ほど学校を休んだが無事に体調が回復する登校した。すると、さっそく、後藤達に囲まれた。
「おい、いい加減、白石の居場所を言えよ。言わないなら、これを食わせるぞ」
お昼休み。理科室などがある旧校舎前の渡り廊下で芋虫を食べろと脅されたが、醒めた顔つきで無視して虫を踏み潰してやった。
「知らないものは知らないんだよ! 探偵でも雇えばいいだろう。白石の居場所が分ったらオレに教えてくれ」
「なんだよ。その生意気な口の聞き方は!」
後藤に馬乗りにされて腹を一発殴られるが、オレは呻き声ひとつ上げなかった。耐えてみせる。
母や祖母の死んだ顔か頭にこびりついている。あれに比べたら、後藤の仕打ちなど屁みたいなもんだ。笑い飛ばしてやるよ。もう悟りの心境に達している。オレは、おまえごときに屈しない。
放課後、クラスの学級委員の高梨雫という女子がオレに話しかけてきた。
「ねぇ、先刻、後藤君に一方的に殴られていたよね? あたし、見ちゃったの。なんで、後藤君に殴られたの?」
高梨雫は政界のドンと呼ばれている国会議員の孫だ。中学二年の夏、横浜から引っ越してきたのだが、彼女の母方の祖父がこの町の出身だったらしい。高梨さんは派手な感じの美人ではないが色が白くて清潔感があり、ポニーテールの髪型が似合っている。
中学生の頃、白石は、クラスメイトの高梨さんのことが好きだと言っていた。恋愛感情があるというよりも人として尊敬しているようだった。
『高梨さんってさ、他の娘とは何か違うんた。巫女さんみたいな雰囲気がするよね。何となく神々しいよね。小さくて可愛いのに芯がしっかりしているんだ』
二年前、それを聞いた時のオレは、そうかなぁと小首をかしげていた。オレは普通の子だよと答えていたのだが、こうして、オレを見つめる高梨さんの眼差しには濁りはない。清く正しく美しくというキャッチフレーズが似合いそうな雰囲気なのだ。
白石の母親が後藤の親父の愛人だという事は伏せたままオレは説明していた。
「後藤が白石に逆恨みしているんだよ。それで、白石は転校したんだ」
オレとしては、あまり言いたくないけれども、苦笑しながらボソボソと呟いていく。
「オレが白石の居場所を吐かないから腹を立てている。だけど、オレ、本当に白石の居場所を知らないんだよ。あいつ、夜逃げみたいな感じで忽然と消えたからさ……」
「へーえ、そうなんだ。白石君って、いつも物静かだけど大人びていたよね。あたし、白石君のこと好きだった。急にいなくなって寂しいよ。白石君がいると教室の空気が浄化されてる感じがしたもの。白石君って絶対に悪口とか言わない人だったよね」
結局、オレは、二日ほど学校を休んだが無事に体調が回復する登校した。すると、さっそく、後藤達に囲まれた。
「おい、いい加減、白石の居場所を言えよ。言わないなら、これを食わせるぞ」
お昼休み。理科室などがある旧校舎前の渡り廊下で芋虫を食べろと脅されたが、醒めた顔つきで無視して虫を踏み潰してやった。
「知らないものは知らないんだよ! 探偵でも雇えばいいだろう。白石の居場所が分ったらオレに教えてくれ」
「なんだよ。その生意気な口の聞き方は!」
後藤に馬乗りにされて腹を一発殴られるが、オレは呻き声ひとつ上げなかった。耐えてみせる。
母や祖母の死んだ顔か頭にこびりついている。あれに比べたら、後藤の仕打ちなど屁みたいなもんだ。笑い飛ばしてやるよ。もう悟りの心境に達している。オレは、おまえごときに屈しない。
放課後、クラスの学級委員の高梨雫という女子がオレに話しかけてきた。
「ねぇ、先刻、後藤君に一方的に殴られていたよね? あたし、見ちゃったの。なんで、後藤君に殴られたの?」
高梨雫は政界のドンと呼ばれている国会議員の孫だ。中学二年の夏、横浜から引っ越してきたのだが、彼女の母方の祖父がこの町の出身だったらしい。高梨さんは派手な感じの美人ではないが色が白くて清潔感があり、ポニーテールの髪型が似合っている。
中学生の頃、白石は、クラスメイトの高梨さんのことが好きだと言っていた。恋愛感情があるというよりも人として尊敬しているようだった。
『高梨さんってさ、他の娘とは何か違うんた。巫女さんみたいな雰囲気がするよね。何となく神々しいよね。小さくて可愛いのに芯がしっかりしているんだ』
二年前、それを聞いた時のオレは、そうかなぁと小首をかしげていた。オレは普通の子だよと答えていたのだが、こうして、オレを見つめる高梨さんの眼差しには濁りはない。清く正しく美しくというキャッチフレーズが似合いそうな雰囲気なのだ。
白石の母親が後藤の親父の愛人だという事は伏せたままオレは説明していた。
「後藤が白石に逆恨みしているんだよ。それで、白石は転校したんだ」
オレとしては、あまり言いたくないけれども、苦笑しながらボソボソと呟いていく。
「オレが白石の居場所を吐かないから腹を立てている。だけど、オレ、本当に白石の居場所を知らないんだよ。あいつ、夜逃げみたいな感じで忽然と消えたからさ……」
「へーえ、そうなんだ。白石君って、いつも物静かだけど大人びていたよね。あたし、白石君のこと好きだった。急にいなくなって寂しいよ。白石君がいると教室の空気が浄化されてる感じがしたもの。白石君って絶対に悪口とか言わない人だったよね」
