少年エレジー

 でも、僕のママは神社でバーキンが欲しいと願ったら、ママが何よりも大切にしている犬が死んでしまっている。あれは偶然なんかじゃない。今ならそれが分かる。生まれながらに呪いがかけられてる。それなのに、僕は神社で願ってしまった。 

 本当は会いたい。和哉の元へと駆け出していきたい。

(でも、もう駄目なんだ)

 大小の鉢植えが並び、野良猫が気ままにうろつく路地裏の小さなアパートの角部屋に西日が差してきた。僕の顔が茜色に染まり寂しさに埋もれそうになる。万華鏡のようにキラキラと弾む思い出の欠片か不意に飛び出してきた。

『白石ーーー。見ろよ。双子流星群だぞ。すっげぇな』

 中二の冬、北風が吹く季節に二人で流れ星を見に行った。山城の石垣に立った時、僕達の心は宇宙に吸い込まれていった、ガタガタ震えながら温かいカイロを握り締めた。君といつまでも一緒にいたかったけど、そんな幸せを受けとる資格がない。

 フリーメールも使えないようにするしかなかった。こうするしかない。自らに言い聞かせていく。心に呪文をかける。

 ピッ。永遠にさようなら……。 

 パソコンの蓋を閉じる。

 帰りたくても帰れない。どうしようもない。唇を噛み締めて目を閉じる。

 僕は、夕闇が漂う部屋にポツンと取り残されている。ふと、部屋の片隅で夏の魔物がキキキッと意地悪く鳴いたような気がした。

                

           おわり