『ひょっとしたら、奥さんは後藤に殺されたかもしれないわよ。後藤ならやりかねない。あいつ、言ってたのよ。保険金をたくさんかけてあるから、いつ死んでもいいって。あいつ、あたしと結婚するつもりでいるわよ。でも、あんたが自分の子じゃないと知ったら激怒する。あたしのことも許さないわ。あたしも殺されるかもしれない。後藤が殺さなくても、後藤の息子があんたを殺すでしょうね。あいつらに見付からないようにするのよ』
DNA鑑定で親子じゃない事が後藤親子にバレたなら訴訟問題になる。養育費の返還を求められるかもしれない。詐欺罪で訴えられるかもしれない。
早いもので、あの街を出てから半年が経過している。僕は、呪文を唱えるように自分に言い聞かせていた。
「決して会ってはいけない。駄目だ。駄目なんだよ」
心の穴を埋めるように、大好きなスピッツの『夏の魔物』という曲を流した。そして、どうして、こんな事になったのか思い返していく。
僕は、生まれながらにして呪われている。死ぬ前の祖父は認知症がかなり進んでいた。時々、妙な事を口走るようになっていた。三年前、施設に面会に行った時、祖父が僕に教えてくれた内容は衝撃的だった。
『昔、おまえに旅芸人と少年の事を話した事があったね。覚えているかい? 実は、昨日、その少年がわたしの枕元に出てきたんだよ。そして、哀れむような声で囁いた。おまえは、神社に祀られている旅芸人を殺した罪人の子孫だと……』
祖父は、哀しげに溜め息を漏らしていた。
『盲目の旅芸人が死んだ。少年は盲目の旅芸人が残した金を握り締めていた。それを奪って殺すように、村長の息子をそそのかした遊女がいたんだ。遊女の子孫が、わたし達なんだ』
ゾクッと胸の芯から震えた。
僕の身体に流れる禍々しいものを感じとった瞬間だった。
『美しい遊女の子孫は呪われている。わたしは泣きながら少年に謝った。いつになったら許されるのかと問いかけると、少年は笑って答えた。お社を建てた時に赦しているよと。神社で願い事を頼まない限り、何も起こらないと言ったのだ。借りに願ったなら、恐ろしい呪いにみまわれるというのだよ。その時、背筋が凍り付いた。昔、わたしは男の子供が欲しいと神社に手を合わせて願っていたからね。妊婦だった妻は癌で亡くなった。わたしのせいで妻は死んだと気付いて愕然となった。いいな、桃李、おまえは、あの社で何も望むな。望むと、おまえは呪われる』
その後、祖父は、どんどん症状が重くなり、僕の顔も分からなくなってしまった。
あの時の僕は認知症の祖父の妄想だと思っていた。当時は、色々な幻覚に苦しめられて見えないものが見えると言って施設の人達を困らせていた。だから、てっきり、あれも嘘だと思っていた。嘘であって欲しかった。
DNA鑑定で親子じゃない事が後藤親子にバレたなら訴訟問題になる。養育費の返還を求められるかもしれない。詐欺罪で訴えられるかもしれない。
早いもので、あの街を出てから半年が経過している。僕は、呪文を唱えるように自分に言い聞かせていた。
「決して会ってはいけない。駄目だ。駄目なんだよ」
心の穴を埋めるように、大好きなスピッツの『夏の魔物』という曲を流した。そして、どうして、こんな事になったのか思い返していく。
僕は、生まれながらにして呪われている。死ぬ前の祖父は認知症がかなり進んでいた。時々、妙な事を口走るようになっていた。三年前、施設に面会に行った時、祖父が僕に教えてくれた内容は衝撃的だった。
『昔、おまえに旅芸人と少年の事を話した事があったね。覚えているかい? 実は、昨日、その少年がわたしの枕元に出てきたんだよ。そして、哀れむような声で囁いた。おまえは、神社に祀られている旅芸人を殺した罪人の子孫だと……』
祖父は、哀しげに溜め息を漏らしていた。
『盲目の旅芸人が死んだ。少年は盲目の旅芸人が残した金を握り締めていた。それを奪って殺すように、村長の息子をそそのかした遊女がいたんだ。遊女の子孫が、わたし達なんだ』
ゾクッと胸の芯から震えた。
僕の身体に流れる禍々しいものを感じとった瞬間だった。
『美しい遊女の子孫は呪われている。わたしは泣きながら少年に謝った。いつになったら許されるのかと問いかけると、少年は笑って答えた。お社を建てた時に赦しているよと。神社で願い事を頼まない限り、何も起こらないと言ったのだ。借りに願ったなら、恐ろしい呪いにみまわれるというのだよ。その時、背筋が凍り付いた。昔、わたしは男の子供が欲しいと神社に手を合わせて願っていたからね。妊婦だった妻は癌で亡くなった。わたしのせいで妻は死んだと気付いて愕然となった。いいな、桃李、おまえは、あの社で何も望むな。望むと、おまえは呪われる』
その後、祖父は、どんどん症状が重くなり、僕の顔も分からなくなってしまった。
あの時の僕は認知症の祖父の妄想だと思っていた。当時は、色々な幻覚に苦しめられて見えないものが見えると言って施設の人達を困らせていた。だから、てっきり、あれも嘘だと思っていた。嘘であって欲しかった。
