『実はな、もう一個あるんだよ。うちのばぁちゃんが、昨日、色んなパンを持ってきたんだよ。オレ、メロンパンは好きだけどさ餡子は苦手なんだ。でも、残すと悪いしさ、どうしようかなあって思ってたんだ。ここにお供えしようかと思ったりもしたけど、やっぱり、やめた。おまえにやる。おまえと仲良くなりたい』
『あ、ありがとう』
勢いに押されて受け取ると和哉かジッと僕の顔を覗き込んで不安そうに尋ねてきた。
『おまえ顔色が悪いけど、身体、弱いのか?』
『ううん。そんなことないよ』
『おまえ、すっげぇ綺麗な顔してるな。オレら、最初、おまえの事を女子だと思って騒いでたんだ。ずげぇ美少女の転校生だって喜んでいた奴等はガッカリしてるよ』
『……えっ?』
まさか女の子と間違われていたとは知らなかった。和哉は可笑しそうに微笑んでいた。
『オレ、隣のクラスの葭原。よろしくな。オレ、暇なんだ。一緒に遊ばないか? オセロゲーム得意なんだ。みんなネットゲームをする方がいいって言うけど、オレの家、ネット環境が整ってなくて、そういうのが無理なんだ』
『オセロ?』
『やったことあるか?』
『おじいちゃんとやってるよ。ていうか、囲碁の方か得意かもしれない』
『おう、囲碁でもいいぞ。オレの家に来いよ』
こうして、僕に友達が出来た事に僕は興奮に似た感動を抱いた。僕と和哉人は見た目も性格も違うけれど、一緒にいる事が心地良かった。和哉はお喋りだった。
『無農薬の酒米を作る為にカブトエビを水田に放流しているんだぜ』
初夏から秋にかけて白鷺がいる事や野生のアライグマが意外に凶暴なことなどを話す姿を見るのが好きだった。和哉は元気な野生動物のように生き生きしている。
夜中、不意に聞える悲鳴の様な声は何なのかと尋ねると、あれは狐の鳴き声だよと言った。
和哉の家も、僕の家も母子家庭という事もあり、子供同士で過ごす事が多かった。僕は、解き放たれた野生動物のように野山を駆け巡るようになった。
和哉といれば、その場所の空気がキラキラと輝いているかのように思えた。
和哉の家まで自転車で十五分。放課後和哉の自宅は山裾にある。僕等は人間と自然が響きあう緑が豊かな場所で遊んだ。いつも一緒だった。農道をサイクリングしたり、好きなゲームやアニメの話で盛り上がったりして長い時間を共に過ごしてきた。
十四歳の夏休み、スタンドバイミーという映画のように線路沿いを歩いた。どこまで行けるか試した。僕等は寝袋を持っていた。三日間歩いたところで和哉の母親が心配して帰るように電話してきたので、僕等はバスに乗って帰った。飾り気がなくてサバサバしている和哉の傍にいるだけで幸せだった。和哉の隣で高校生活を続けたかった。けれども、ママのせいで、後藤が僕に憎しみをぶつけるようになった。
『あ、ありがとう』
勢いに押されて受け取ると和哉かジッと僕の顔を覗き込んで不安そうに尋ねてきた。
『おまえ顔色が悪いけど、身体、弱いのか?』
『ううん。そんなことないよ』
『おまえ、すっげぇ綺麗な顔してるな。オレら、最初、おまえの事を女子だと思って騒いでたんだ。ずげぇ美少女の転校生だって喜んでいた奴等はガッカリしてるよ』
『……えっ?』
まさか女の子と間違われていたとは知らなかった。和哉は可笑しそうに微笑んでいた。
『オレ、隣のクラスの葭原。よろしくな。オレ、暇なんだ。一緒に遊ばないか? オセロゲーム得意なんだ。みんなネットゲームをする方がいいって言うけど、オレの家、ネット環境が整ってなくて、そういうのが無理なんだ』
『オセロ?』
『やったことあるか?』
『おじいちゃんとやってるよ。ていうか、囲碁の方か得意かもしれない』
『おう、囲碁でもいいぞ。オレの家に来いよ』
こうして、僕に友達が出来た事に僕は興奮に似た感動を抱いた。僕と和哉人は見た目も性格も違うけれど、一緒にいる事が心地良かった。和哉はお喋りだった。
『無農薬の酒米を作る為にカブトエビを水田に放流しているんだぜ』
初夏から秋にかけて白鷺がいる事や野生のアライグマが意外に凶暴なことなどを話す姿を見るのが好きだった。和哉は元気な野生動物のように生き生きしている。
夜中、不意に聞える悲鳴の様な声は何なのかと尋ねると、あれは狐の鳴き声だよと言った。
和哉の家も、僕の家も母子家庭という事もあり、子供同士で過ごす事が多かった。僕は、解き放たれた野生動物のように野山を駆け巡るようになった。
和哉といれば、その場所の空気がキラキラと輝いているかのように思えた。
和哉の家まで自転車で十五分。放課後和哉の自宅は山裾にある。僕等は人間と自然が響きあう緑が豊かな場所で遊んだ。いつも一緒だった。農道をサイクリングしたり、好きなゲームやアニメの話で盛り上がったりして長い時間を共に過ごしてきた。
十四歳の夏休み、スタンドバイミーという映画のように線路沿いを歩いた。どこまで行けるか試した。僕等は寝袋を持っていた。三日間歩いたところで和哉の母親が心配して帰るように電話してきたので、僕等はバスに乗って帰った。飾り気がなくてサバサバしている和哉の傍にいるだけで幸せだった。和哉の隣で高校生活を続けたかった。けれども、ママのせいで、後藤が僕に憎しみをぶつけるようになった。
