後藤はしらばっくれたが、高梨さんが校長にオレが後藤に殴られる映像を提出している。ちなみに、高梨さんの叔父さんは県知事。教育改革とやらに熱心な政治家なのだ。
今回の事は教育委員会で問題になったようである。以後、あっさりと、後藤達はオレから手を引くようになる。後藤も、大物政治家と関係のある高梨さんの正義の刃には形無しだ。
首謀者の後藤はともかく、柔道で推薦入試を狙っている他の二人にとって暴力沙汰は御法度である。というか、あいつらも、後藤に命令されてやっているだけなのだ。二人とも、そろそろやめたかったのだろう。
という事で、オレの生活は安らかなものへと変わっている。
あの夜、神社でお祈りした御利益なのかもしれない。
山から吹き降ろす清々しい風が木々を揺らしている。もうすぐゴールデンウィークが始まる。
ふと、決意していた。駅前のファストフードでアルバイトを始めようかな。
夏休みになったら白石のいる街を探し当てて会いに行こう。
白石のいない寂しさをまぎらわせる為に忙しく働き続けているうちに七月になっていた。半袖で通学する途中、神社の脇の田んぼに白鷺が舞い降りる光景が目に入った。あの神社で読書をしていた白石を思い出すと胸の奥がキンと痛くなる。
(白石、どこにいるんだよ?)
それは、もうすぐ夏休みというある日の正午だった。後藤の母親が首を吊って死んだという知らせが飛び込んできた。
その時は、何が起きたのかオレも分からなかった。授業中、いきなり、教頭がオレ達の教室に飛び込んできて後藤に耳打ちしたのだ。真っ青になった後藤は早退した。
その翌日、街では噂で持ちきりになった。葬儀には大勢の人が訪れたようだ。隣の家のおばさんが玄関先でオレの母に話しているのを聞いて驚いた。
「ねぇ、知ってる? 後藤さんの奥さんて、ずっーと前からノイローゼだったみたいよ。スナックの美人ママの白石さんと旦那さんが怪しいって噂があったじゃない? それで、離婚の話が出ていたみたいなの。美人の白石さんがいなくなって夫婦仲が戻るかと思いきや、おまえのせいで、あいつがいなくなったって後藤さんは怒り狂ったそうよ。それで後藤さんの奥さんは絶望して自殺したのね」
オレの母は曖昧な表情で頷いている。何しろ、後藤の父親は雇い主の事なので、あまり悪くも言えない。
それは、夫婦喧嘩の内容は、後藤の家にいる古参の家政婦さんからの情報だという。周囲の視線を憚るように隣の家のおばさんが声を潜めている。
今回の事は教育委員会で問題になったようである。以後、あっさりと、後藤達はオレから手を引くようになる。後藤も、大物政治家と関係のある高梨さんの正義の刃には形無しだ。
首謀者の後藤はともかく、柔道で推薦入試を狙っている他の二人にとって暴力沙汰は御法度である。というか、あいつらも、後藤に命令されてやっているだけなのだ。二人とも、そろそろやめたかったのだろう。
という事で、オレの生活は安らかなものへと変わっている。
あの夜、神社でお祈りした御利益なのかもしれない。
山から吹き降ろす清々しい風が木々を揺らしている。もうすぐゴールデンウィークが始まる。
ふと、決意していた。駅前のファストフードでアルバイトを始めようかな。
夏休みになったら白石のいる街を探し当てて会いに行こう。
白石のいない寂しさをまぎらわせる為に忙しく働き続けているうちに七月になっていた。半袖で通学する途中、神社の脇の田んぼに白鷺が舞い降りる光景が目に入った。あの神社で読書をしていた白石を思い出すと胸の奥がキンと痛くなる。
(白石、どこにいるんだよ?)
それは、もうすぐ夏休みというある日の正午だった。後藤の母親が首を吊って死んだという知らせが飛び込んできた。
その時は、何が起きたのかオレも分からなかった。授業中、いきなり、教頭がオレ達の教室に飛び込んできて後藤に耳打ちしたのだ。真っ青になった後藤は早退した。
その翌日、街では噂で持ちきりになった。葬儀には大勢の人が訪れたようだ。隣の家のおばさんが玄関先でオレの母に話しているのを聞いて驚いた。
「ねぇ、知ってる? 後藤さんの奥さんて、ずっーと前からノイローゼだったみたいよ。スナックの美人ママの白石さんと旦那さんが怪しいって噂があったじゃない? それで、離婚の話が出ていたみたいなの。美人の白石さんがいなくなって夫婦仲が戻るかと思いきや、おまえのせいで、あいつがいなくなったって後藤さんは怒り狂ったそうよ。それで後藤さんの奥さんは絶望して自殺したのね」
オレの母は曖昧な表情で頷いている。何しろ、後藤の父親は雇い主の事なので、あまり悪くも言えない。
それは、夫婦喧嘩の内容は、後藤の家にいる古参の家政婦さんからの情報だという。周囲の視線を憚るように隣の家のおばさんが声を潜めている。
