テーブルの上で開いたノートパソコンが、人気ミュージシャンのMVを淡々と流し続けている。
色味の強い照明と、感情を削ぎ落としたみたいな歌声。音はちゃんと聞こえているはずなのに、頭の中にはほとんど残っていなかった。
俺はソファに力なく沈み込み、視線だけを画面に向けたまま、右手に持った棒アイスをぼんやりと傾ける。
その拍子に、溶けた雫が指を伝って、手の甲に落ちた。
慌てて拭うでもなく、ただその一点に目を落とす。
ソーダ味の棒アイスは、人工的なくらい鮮やかな青で、角の丸くなった先端がじわじわと溶けていた。
残りにかぶりつき、垂れないように首を傾けた拍子に、後頭部がコツンと壁に当たった。
大した音じゃない。それでも、静かな部屋では妙に響く。
隣の部屋から、かすかな生活音がした直後、
――ブブッ、とスマホが震えた。
俺は深く息を吐いて、天井を仰ぐ。
『鶴見、ライブごめんね。せっかく招待してくれたのに』
『昨日は、何の用だったのかな?』
『起きてる?』
『ごめん、怒ってる?』
数日前から、藤沢からポツポツと送られてくるメッセージ。
俺は、その全部を既読無視し続けていた。
仕返しというほど大袈裟なものじゃない。
当てつけ、と言うのも少し違う。
ただ、引くに引けなくなっただけだ。
俺が勝手に勘違いして、勝手に拗ねて、勝手に距離を取っているだけ。
藤沢にしてみれば、訳がわからないに決まってる。
めんどくさいよな、俺。
自分でもそう思うし、正直、いつ藤沢が「もういいや」って連絡すらよこさなくなるんじゃないかと、内心びくびくもしている。
それでも、くだらない意地と、みっともない感情が邪魔をして、返信を打てないままだ。
そんなところに、ついに届いた一文。
『鶴見、ちゃんと話したいことがあるんだ。明日、時間作れないかな?』
――ああ、嫌だ。
こんなところで、誠実さを発揮しないでくれ。
藤沢はきっと、ちゃんと言葉にして、俺との関係を整理しようとしている。
お互い、ちょっと踏み込みすぎたよね。
でも、俺たち普通の友達だよね。そういう話をするつもりなんだ。
いいよ。
そんなの、聞きたくない。
俺だけがこんなふうに気持ちをこじらせてるみたいで、惨めになる。
だったら、いっそ、うやむやなまま距離を取ってしまいたい。
知られようがないとはいえ、こんな感情、恥ずかしくてたまらない。
抱えたまま、誰にも気づかれないようにして、藤沢の前から消えてしまいたい。
LINEアプリを閉じ、昨日ダウンロードした不動産屋のアプリを開く。
家賃、敷金、礼金――現実的な数字が、淡々と並ぶ。
「あー……金ねぇ……」
――ブブッ、
またスマホが震える。
今の独り言、となりに聞こえてしまったのかと思ったら、メッセージの送信者は藤沢ではなく、戸塚だった。
『明日練習室、空き出たらしい。この前、鶴見打ち上げ来れなかったし、軽く流してからみんなで飯行こう』
気軽な文面だ。その軽さが、今はありがたい。
夏休みも、今日を抜かせば残り二日。
翌日を気にせず過ごせる夜は、たぶん明日が最後だ。
正直、何かをする気力はあまりない。
でも、ギターはまだ預かってもらったままだし、ライブも終わった今の練習日は、肩肘張らずにだべって、適当に音を合わせるくらいの空気になるはずだ。
それに、今は隣に藤沢がいるこの部屋に、ひとりで居続けるのは少しきつい。
『オッケー』
猫が大きく丸を作っているスタンプを送り、俺はスマホをソファに放り投げた。
◇
夕方になっても、夏の名残みたいな熱がしつこくまとわりついてくる。
日が落ちかけているのに、外気はまだ生ぬるくて、歩いているだけで体の内側に熱が溜まっていく感じがした。
俺は無意識にTシャツの襟元をつまんで、ぱたぱたと仰きながら、課外活動棟へ向かう。
あちこちから漏れてくる音。ドラムの低い振動、チューニング中のギター、誰かの笑い声。
いつも通りの雰囲気だ。
自販機の前で立ち止まり、冷えたお茶を一本買う。
ガコン、と鈍い音がして、取り出したペットボトルはひんやりと掌に心地よかった。
キャップを捻って一口飲むと、ようやく喉の奥が少しだけ落ち着く。
戸塚から教えられた練習室の番号を頭の中でなぞりながら、廊下へ足を踏み入れる。
まっすぐ伸びた廊下の先。
防音扉が並ぶ、その入り口の前に人影がひとつ、壁にもたれるように立っていた。
白いTシャツに見覚えのある青い開襟シャツ。一瞬で、誰だかわかってしまう。
俺は、歩く速度を緩めるべきか、そのまま行くべきか、ほんの一拍だけ迷った。
今さら引き返すのも不自然で、かといって、何も考えずに近づくほど気持ちは整っていない。
距離が縮まる。
向こうも、俺に気づいたらしい。
壁から背を離し、少しだけ姿勢を正す。
「あ……鶴見……」
藤沢は俺を見つけると、視線を泳がせた。
一時は少し近づいたと思っていた距離が、また元に戻っている。
いや、俺のここ数日の態度を思えば、そうなるのも当然だ。
どう返すか。
どんな声色で、どんな距離で、どんな顔をすればいいのか。
まだ、何ひとつ決められていない。
「ああ、悪いな……LINE、ぜんぜん返してなくて」
自分でも驚くほど、そっけない声が出た。
そのまま藤沢の横をすり抜けて、俺は練習室の扉を開ける。
中には、すでにメンバー全員が揃っていた。
一瞬でわかる。みんな、こちらの様子をうかがっている。
そわそわした視線。
気まずさをごまかすみたいな空気。
……ああ、まただ。
俺の知らないところで、何かが進んでいる。
俺から連絡が来ないから、藤沢が相談したのか。
きっかけを作ってほしくて、誰かに頼ったのか。
そんな想像が浮かんだ瞬間、胸の奥がざらついた。
ふぅ、と細く息を吐く。
その音だけで、メンバーの表情がわずかに曇るのがわかる。
悪いな、とは思う。
本当は、空気を壊すのは好きじゃない。
場の雰囲気を守るためなら、本音を隠すことくらい、いくらでもできると思ってた。
――でも、抑えきれないときって、あるんだな。
「てかさ」
思ったより、低い声が出た。
「なんで、藤沢がいんの」
誰が聞いても、苛立ちが滲んでいる声音。
俺は誰の顔も見られず、視線を中途半端な位置に落とした。
「鶴見……いや、これは――」
戸塚が慌てて言いかけるのがわかる。
他のみんなも、視線を泳がせて戸惑っている。
その輪の中で、俺だけが駄々をこねているみたいで。それが、死ぬほど嫌だった。
「悪い。俺、今日は帰るわ」
つかつかと歩いて、定位置に置かれていた自分のギターケースを肩に担ぐ。
葉山が持ち帰ってくれていたやつだ。
「ありがとな」
それだけ言って、俺は練習室を後にした。
背後で、みんなが呆然としている気配がする。
――もうダメだ。
最悪だ。
カッコ悪すぎる。
なんだよ、藤沢。
なんで、こんな整理もついてないタイミングで現れるんだ。
もう少し時間が経っていれば。
もう少しだけ、俺の中で折り合いがついていれば。
――オッケーオッケー。あんなの事故だ。
そう言って、軽く流す予定だったじゃないか。
そうやって、なかったことにするつもりだったのに。
「鶴見!」
背後から、ぱたぱたと足音が近づいてくる。
走って逃げられないのは、ギターを持っているせいだと、誰にするでもない言い訳を思い浮かべた。
でも、本当は。
「待って、鶴見!」
ぐっと腕を掴まれた。
唾を飲み込み、振り返ると、息を切らした藤沢が、目の前に立っている。
……最悪だ。
さっきまで、なんでいるんだって苛立ってたくせに。
この期に及んで、追いかけてきてくれたことを、『嬉しい』なんて思ってしまう自分が。
「なに」
そのくせ、意地を張ったまま、声音は棘を孕んでしまう。
藤沢は息を整えて、必死な顔で俺を見据える。
「あの、何か、怒ってるのかなって……」
「別に、怒ってねぇけど」
……ああ、俺マジでめんどくさい。
「そ、そう……なら、いいけど……」
藤沢の語尾が萎んでいく。
追いかけてきてくれて嬉しい。
俺の言葉で落ち込んでいるのが、正直、嬉しい。
でも同時に、そんなふうに感じてしまう自分が、歪んでて、意地悪で、子供っぽくて。
それがダサくて嫌で、だから腹が立つ。
「つーか、藤沢さ」
――やめろ。
頭のどこかで、自分が自分を止めている。
なのに、別の回路が勝手に動いて、言葉だけが先に零れ落ちる。
「もう、練習とか、来んなよ。みんな気使ってるけど、実際あんまり良くないと思うよ」
「……そ、そうだね。ごめん。気が回らなくて」
「それからさ」
違う。
こんなことが言いたいわけじゃない。
「別にライブ来れないのはいいけど、それなら最初から来たいとか言うなよ。なんか、すげぇ感じ悪いし」
「……うん。ほんと、ごめん」
藤沢は、しょぼんと肩を落とした。
「……もうどうでもいいや」
はぁ、と大きく息を吐く。
「藤沢さ」
「……う、うん」
「もう、俺に関わんないで」
言い放った瞬間、藤沢の顔が固まった。
豆鉄砲を食らった鳩みたいな、間の抜けた表情だ。
色味の強い照明と、感情を削ぎ落としたみたいな歌声。音はちゃんと聞こえているはずなのに、頭の中にはほとんど残っていなかった。
俺はソファに力なく沈み込み、視線だけを画面に向けたまま、右手に持った棒アイスをぼんやりと傾ける。
その拍子に、溶けた雫が指を伝って、手の甲に落ちた。
慌てて拭うでもなく、ただその一点に目を落とす。
ソーダ味の棒アイスは、人工的なくらい鮮やかな青で、角の丸くなった先端がじわじわと溶けていた。
残りにかぶりつき、垂れないように首を傾けた拍子に、後頭部がコツンと壁に当たった。
大した音じゃない。それでも、静かな部屋では妙に響く。
隣の部屋から、かすかな生活音がした直後、
――ブブッ、とスマホが震えた。
俺は深く息を吐いて、天井を仰ぐ。
『鶴見、ライブごめんね。せっかく招待してくれたのに』
『昨日は、何の用だったのかな?』
『起きてる?』
『ごめん、怒ってる?』
数日前から、藤沢からポツポツと送られてくるメッセージ。
俺は、その全部を既読無視し続けていた。
仕返しというほど大袈裟なものじゃない。
当てつけ、と言うのも少し違う。
ただ、引くに引けなくなっただけだ。
俺が勝手に勘違いして、勝手に拗ねて、勝手に距離を取っているだけ。
藤沢にしてみれば、訳がわからないに決まってる。
めんどくさいよな、俺。
自分でもそう思うし、正直、いつ藤沢が「もういいや」って連絡すらよこさなくなるんじゃないかと、内心びくびくもしている。
それでも、くだらない意地と、みっともない感情が邪魔をして、返信を打てないままだ。
そんなところに、ついに届いた一文。
『鶴見、ちゃんと話したいことがあるんだ。明日、時間作れないかな?』
――ああ、嫌だ。
こんなところで、誠実さを発揮しないでくれ。
藤沢はきっと、ちゃんと言葉にして、俺との関係を整理しようとしている。
お互い、ちょっと踏み込みすぎたよね。
でも、俺たち普通の友達だよね。そういう話をするつもりなんだ。
いいよ。
そんなの、聞きたくない。
俺だけがこんなふうに気持ちをこじらせてるみたいで、惨めになる。
だったら、いっそ、うやむやなまま距離を取ってしまいたい。
知られようがないとはいえ、こんな感情、恥ずかしくてたまらない。
抱えたまま、誰にも気づかれないようにして、藤沢の前から消えてしまいたい。
LINEアプリを閉じ、昨日ダウンロードした不動産屋のアプリを開く。
家賃、敷金、礼金――現実的な数字が、淡々と並ぶ。
「あー……金ねぇ……」
――ブブッ、
またスマホが震える。
今の独り言、となりに聞こえてしまったのかと思ったら、メッセージの送信者は藤沢ではなく、戸塚だった。
『明日練習室、空き出たらしい。この前、鶴見打ち上げ来れなかったし、軽く流してからみんなで飯行こう』
気軽な文面だ。その軽さが、今はありがたい。
夏休みも、今日を抜かせば残り二日。
翌日を気にせず過ごせる夜は、たぶん明日が最後だ。
正直、何かをする気力はあまりない。
でも、ギターはまだ預かってもらったままだし、ライブも終わった今の練習日は、肩肘張らずにだべって、適当に音を合わせるくらいの空気になるはずだ。
それに、今は隣に藤沢がいるこの部屋に、ひとりで居続けるのは少しきつい。
『オッケー』
猫が大きく丸を作っているスタンプを送り、俺はスマホをソファに放り投げた。
◇
夕方になっても、夏の名残みたいな熱がしつこくまとわりついてくる。
日が落ちかけているのに、外気はまだ生ぬるくて、歩いているだけで体の内側に熱が溜まっていく感じがした。
俺は無意識にTシャツの襟元をつまんで、ぱたぱたと仰きながら、課外活動棟へ向かう。
あちこちから漏れてくる音。ドラムの低い振動、チューニング中のギター、誰かの笑い声。
いつも通りの雰囲気だ。
自販機の前で立ち止まり、冷えたお茶を一本買う。
ガコン、と鈍い音がして、取り出したペットボトルはひんやりと掌に心地よかった。
キャップを捻って一口飲むと、ようやく喉の奥が少しだけ落ち着く。
戸塚から教えられた練習室の番号を頭の中でなぞりながら、廊下へ足を踏み入れる。
まっすぐ伸びた廊下の先。
防音扉が並ぶ、その入り口の前に人影がひとつ、壁にもたれるように立っていた。
白いTシャツに見覚えのある青い開襟シャツ。一瞬で、誰だかわかってしまう。
俺は、歩く速度を緩めるべきか、そのまま行くべきか、ほんの一拍だけ迷った。
今さら引き返すのも不自然で、かといって、何も考えずに近づくほど気持ちは整っていない。
距離が縮まる。
向こうも、俺に気づいたらしい。
壁から背を離し、少しだけ姿勢を正す。
「あ……鶴見……」
藤沢は俺を見つけると、視線を泳がせた。
一時は少し近づいたと思っていた距離が、また元に戻っている。
いや、俺のここ数日の態度を思えば、そうなるのも当然だ。
どう返すか。
どんな声色で、どんな距離で、どんな顔をすればいいのか。
まだ、何ひとつ決められていない。
「ああ、悪いな……LINE、ぜんぜん返してなくて」
自分でも驚くほど、そっけない声が出た。
そのまま藤沢の横をすり抜けて、俺は練習室の扉を開ける。
中には、すでにメンバー全員が揃っていた。
一瞬でわかる。みんな、こちらの様子をうかがっている。
そわそわした視線。
気まずさをごまかすみたいな空気。
……ああ、まただ。
俺の知らないところで、何かが進んでいる。
俺から連絡が来ないから、藤沢が相談したのか。
きっかけを作ってほしくて、誰かに頼ったのか。
そんな想像が浮かんだ瞬間、胸の奥がざらついた。
ふぅ、と細く息を吐く。
その音だけで、メンバーの表情がわずかに曇るのがわかる。
悪いな、とは思う。
本当は、空気を壊すのは好きじゃない。
場の雰囲気を守るためなら、本音を隠すことくらい、いくらでもできると思ってた。
――でも、抑えきれないときって、あるんだな。
「てかさ」
思ったより、低い声が出た。
「なんで、藤沢がいんの」
誰が聞いても、苛立ちが滲んでいる声音。
俺は誰の顔も見られず、視線を中途半端な位置に落とした。
「鶴見……いや、これは――」
戸塚が慌てて言いかけるのがわかる。
他のみんなも、視線を泳がせて戸惑っている。
その輪の中で、俺だけが駄々をこねているみたいで。それが、死ぬほど嫌だった。
「悪い。俺、今日は帰るわ」
つかつかと歩いて、定位置に置かれていた自分のギターケースを肩に担ぐ。
葉山が持ち帰ってくれていたやつだ。
「ありがとな」
それだけ言って、俺は練習室を後にした。
背後で、みんなが呆然としている気配がする。
――もうダメだ。
最悪だ。
カッコ悪すぎる。
なんだよ、藤沢。
なんで、こんな整理もついてないタイミングで現れるんだ。
もう少し時間が経っていれば。
もう少しだけ、俺の中で折り合いがついていれば。
――オッケーオッケー。あんなの事故だ。
そう言って、軽く流す予定だったじゃないか。
そうやって、なかったことにするつもりだったのに。
「鶴見!」
背後から、ぱたぱたと足音が近づいてくる。
走って逃げられないのは、ギターを持っているせいだと、誰にするでもない言い訳を思い浮かべた。
でも、本当は。
「待って、鶴見!」
ぐっと腕を掴まれた。
唾を飲み込み、振り返ると、息を切らした藤沢が、目の前に立っている。
……最悪だ。
さっきまで、なんでいるんだって苛立ってたくせに。
この期に及んで、追いかけてきてくれたことを、『嬉しい』なんて思ってしまう自分が。
「なに」
そのくせ、意地を張ったまま、声音は棘を孕んでしまう。
藤沢は息を整えて、必死な顔で俺を見据える。
「あの、何か、怒ってるのかなって……」
「別に、怒ってねぇけど」
……ああ、俺マジでめんどくさい。
「そ、そう……なら、いいけど……」
藤沢の語尾が萎んでいく。
追いかけてきてくれて嬉しい。
俺の言葉で落ち込んでいるのが、正直、嬉しい。
でも同時に、そんなふうに感じてしまう自分が、歪んでて、意地悪で、子供っぽくて。
それがダサくて嫌で、だから腹が立つ。
「つーか、藤沢さ」
――やめろ。
頭のどこかで、自分が自分を止めている。
なのに、別の回路が勝手に動いて、言葉だけが先に零れ落ちる。
「もう、練習とか、来んなよ。みんな気使ってるけど、実際あんまり良くないと思うよ」
「……そ、そうだね。ごめん。気が回らなくて」
「それからさ」
違う。
こんなことが言いたいわけじゃない。
「別にライブ来れないのはいいけど、それなら最初から来たいとか言うなよ。なんか、すげぇ感じ悪いし」
「……うん。ほんと、ごめん」
藤沢は、しょぼんと肩を落とした。
「……もうどうでもいいや」
はぁ、と大きく息を吐く。
「藤沢さ」
「……う、うん」
「もう、俺に関わんないで」
言い放った瞬間、藤沢の顔が固まった。
豆鉄砲を食らった鳩みたいな、間の抜けた表情だ。
