名前を呼ぶ距離



それから俺は、意識的に隼人の『幼馴染』をやめようと距離を取り始めた。

連絡はしない。
会っても、挨拶ぐらい。

悠人が話しかけてくれば応じるけれど、自分からは踏み込まない。
ただふんふんと返事をするだけの、まるでロボットのよう。

だけどそれが、大人になるということだと思った。

幼稚園から続いていた関係が、大学で終わることだって、珍しくない。

「仕方ない」
そう言葉にしてみて、何か……思った以上に苦しくなった。

でも、戻らないと決めたんだ。
名前を呼ぶ距離が遠くなったのなら、無理に縮めなくていい。

***

夏が近づくにつれて、悠人の世界はさらに広がっていった。

SNSに流れてくる写真。
笑っている悠人。
知らない人たち。

俺は『いいね』を押さなくなった。

見なければ、考えずに済む。
そうやって、少しずつ、他人になる準備をしていく。

名前を呼ばない日が、当たり前になって、この関係は役目を終えた。

だけど心のどこかで、ずっと、呼ばれるのを待っていた。

我ながらマジで女々しい。
なんなの俺。
俺はあいつの彼女じゃねぇぞ。

そう思うのに、もやもやはなんか、消えてくれないんだ。

あぁ……もう、厄介だ。