恋人になってからというもの、麺太はほとんど稲穂の自宅で過ごしている。
学校から帰っても過ごすのは稲穂の家、夕食も稲穂の家、風呂も稲穂の家、寝る時も稲穂の隣。休みの日だって稲穂の傍だ。
勉強する時は静かな環境がいいのか、自宅に戻る。教科書や服もそっちに置いてあり、必要なものを用意してから稲穂の家にやってきた。歯ブラシなどは稲穂の家に置いているが、あまり迷惑を掛けたくないと思っているのか、麺太の私物は少ない。
土曜日。
稲穂も麺太も休みのこの日、二人はリビングで寛いでいた。ソファーの足元を背もたれにして、床に直接座っている。稲穂の父がちゃんと座れよと言っても、二人はそのような座り方を続けていた。
稲穂も麺太もスマホをそれぞれ見ている。稲穂の動きは少ないが、麺太の指は忙しなく動いていた。どうやら小説を書いているらしい。
稲穂は麺太の様子をちらりと横から見る。あどけない顔は無表情そのもの、完全に物語の世界に没入している。少しでも意識があれば、稲穂の視線に喜ぶというもの。
視線をスマホに戻し、稲穂も物語の世界に戻る。──麺太の書いたBL小説を読んでいた。
麺太は自分の書いた小説を投稿サイトに上げており、そのどれもがBL作品。攻めの髪型は、髪色が違っても、どれも天パだった。
自分と麺太をモデルに書いていると分かるし、そう考えると気恥ずかしくなるが、まあ、読める。面白い。意外と国語が得意なんだなと、褒めたこともある。麺太も嬉しそうだった。
今読んでいる物語は、攻めが金持ちの息子で、受けは息子の親に買われた獣人らしい。そんな彼らが恋に落ちる物語。普通に面白い。
恋愛ものはたまに読んでいて苛立つこともあるが、麺太の作品はストレスが少なく読みやすかった。攻めの親が嫌な奴ではなく、むしろ息子達の恋を応援してるのもいいのかもしれない。
黙々と読み続け、最新話まで辿り着く。まだ続くみたいで、先が気になってきた。
「これ、続きは?」
「これ? ……ああ、読んでたんだ。今書いている所」
ちらりと稲穂を見て、すぐに視線をスマホに戻した麺太。指は相変わらず忙しない。
「どうなるんだ?」
「それは読んでからのお楽しみ。明日には投稿するから」
「……ほーん」
「……そんなに気になってくれたんだ。面白い?」
「まあな」
「モデルが誰か、分かってる?」
指は止めないまま、からかうような口調で麺太が訊ねてくる。
「……この天パ、人気あんの?」
質問には答えず、稲穂が訊ね返す。
「かっこいいですねってよく言われるよ。良かったね」
「……ふんっ」
「メンメンメンマさんは本当に天パ攻めが好きですね、とも言われる」
「そのペンネーム変だって」
変えろよ、と言っても、麺太は頑なに変えない。これがもう一つの自分の名前だと、胸を張って答える。
メンメンメンマで胸を張るなと、いつも稲穂は思っていた。もっとまともな名前を付けろと。
……せっかく、物語はいいのに、名前で忌避されることだってあるだろうから、なんか勿体ないなと。
「僕の名前は?」
「麺太だろ?」
「めんまじゃなくて?」
「……めんただろ」
わりと根に持つタイプだなと思っていると、麺太が稲穂の肩に頭をもたれてきた。スマホはテーブルの上に置いている。
「書けたのか?」
「休憩。お腹空いたし、何か食べようよ」
「それもそうだな」
なんて会話をしているのに、どちらもすぐには立ち上がらない。
稲穂が立ったら、麺太が立ったら。そんな風に考えて、しばらくはその状態でいた。
学校から帰っても過ごすのは稲穂の家、夕食も稲穂の家、風呂も稲穂の家、寝る時も稲穂の隣。休みの日だって稲穂の傍だ。
勉強する時は静かな環境がいいのか、自宅に戻る。教科書や服もそっちに置いてあり、必要なものを用意してから稲穂の家にやってきた。歯ブラシなどは稲穂の家に置いているが、あまり迷惑を掛けたくないと思っているのか、麺太の私物は少ない。
土曜日。
稲穂も麺太も休みのこの日、二人はリビングで寛いでいた。ソファーの足元を背もたれにして、床に直接座っている。稲穂の父がちゃんと座れよと言っても、二人はそのような座り方を続けていた。
稲穂も麺太もスマホをそれぞれ見ている。稲穂の動きは少ないが、麺太の指は忙しなく動いていた。どうやら小説を書いているらしい。
稲穂は麺太の様子をちらりと横から見る。あどけない顔は無表情そのもの、完全に物語の世界に没入している。少しでも意識があれば、稲穂の視線に喜ぶというもの。
視線をスマホに戻し、稲穂も物語の世界に戻る。──麺太の書いたBL小説を読んでいた。
麺太は自分の書いた小説を投稿サイトに上げており、そのどれもがBL作品。攻めの髪型は、髪色が違っても、どれも天パだった。
自分と麺太をモデルに書いていると分かるし、そう考えると気恥ずかしくなるが、まあ、読める。面白い。意外と国語が得意なんだなと、褒めたこともある。麺太も嬉しそうだった。
今読んでいる物語は、攻めが金持ちの息子で、受けは息子の親に買われた獣人らしい。そんな彼らが恋に落ちる物語。普通に面白い。
恋愛ものはたまに読んでいて苛立つこともあるが、麺太の作品はストレスが少なく読みやすかった。攻めの親が嫌な奴ではなく、むしろ息子達の恋を応援してるのもいいのかもしれない。
黙々と読み続け、最新話まで辿り着く。まだ続くみたいで、先が気になってきた。
「これ、続きは?」
「これ? ……ああ、読んでたんだ。今書いている所」
ちらりと稲穂を見て、すぐに視線をスマホに戻した麺太。指は相変わらず忙しない。
「どうなるんだ?」
「それは読んでからのお楽しみ。明日には投稿するから」
「……ほーん」
「……そんなに気になってくれたんだ。面白い?」
「まあな」
「モデルが誰か、分かってる?」
指は止めないまま、からかうような口調で麺太が訊ねてくる。
「……この天パ、人気あんの?」
質問には答えず、稲穂が訊ね返す。
「かっこいいですねってよく言われるよ。良かったね」
「……ふんっ」
「メンメンメンマさんは本当に天パ攻めが好きですね、とも言われる」
「そのペンネーム変だって」
変えろよ、と言っても、麺太は頑なに変えない。これがもう一つの自分の名前だと、胸を張って答える。
メンメンメンマで胸を張るなと、いつも稲穂は思っていた。もっとまともな名前を付けろと。
……せっかく、物語はいいのに、名前で忌避されることだってあるだろうから、なんか勿体ないなと。
「僕の名前は?」
「麺太だろ?」
「めんまじゃなくて?」
「……めんただろ」
わりと根に持つタイプだなと思っていると、麺太が稲穂の肩に頭をもたれてきた。スマホはテーブルの上に置いている。
「書けたのか?」
「休憩。お腹空いたし、何か食べようよ」
「それもそうだな」
なんて会話をしているのに、どちらもすぐには立ち上がらない。
稲穂が立ったら、麺太が立ったら。そんな風に考えて、しばらくはその状態でいた。



