16歳、先生になる―女子高生社長の挑戦―

「真衣」

お母さんが真衣ちゃんに向かって言う。真衣ちゃんは少しビクっとした。

「部活の事は、分かったわ。あまり詮索もしないから」
「……うん」

「ギターに関しては……真衣と先生方のお気持ちは分かったから。家に帰ってお父さんとも相談しないと……それは決められないな」
「……分かった。でも……お父さん、怒らないかな……」

「大丈夫。お母さんが間にちゃんと入ってあげるから」
「……本当!?」

「ええ。あなたがこんな真剣にしゃべってくれるなんて……驚いたし。それに……先生達も本当に真衣の事、考えてくれているのが分かるからね。お父さんにはちゃんと言ってあげる」
「……うん!」

にこりと真衣ちゃんは笑っていた――

手を振る真衣ちゃんを玄関先で見送り、私と智花はぼんやりと立ち尽くしていた。

何だろう。やり尽くしたという気持ちと……生徒がいなくなるという気持ち。両方が入り混じっているような感覚だった。

「……お疲れ様」

「あぁ……お父さん……今日はありがとう」
「ありがとうございます……」
私と智花はお父さんに頭を下げた。


「頭、下げなくて良いよ。君たちが社長なんだから。話合って決めた事だろ」
「まぁ……そうだけど……これで生徒、ゼロになっちゃう」

「あははっ! まぁ、そうだな。仕方無いだろう。それは」
「……そうだけど」

「とりあえずさ、無事に想いは伝えたんだから。遠藤先輩にまた話、聞いてもらったら良いよ」
「そうね。智花、行こっか」

やりきった。私と智花は、真衣ちゃんのお母さんに想いをしっかりと伝える事ができた。

不思議な充実感に包まれながら……智花と一緒に、光成塾へと向かって歩いた――。