16歳、先生になる―女子高生社長の挑戦―

しばらくの間、私と智花は真衣ちゃんを見守った。大きな声で泣く訳じゃ無かったけど……落ち着くまで。しばらく待った。

(やっぱり……そうだったんだな……)
(……何かずっと、こう……引っかかってたんだよなぁ……そういう事か)

「……落ち着いた?」
私は真衣ちゃんに、そっと尋ねた。

「……はい。すいません」
「良いんだよ? 嫌な事あったんでしょ? 私たちは真衣ちゃんの味方だからね! ……ね! 智花?」

「そうだよ。何でも話聞くから。ゆっくりで良いから……教えてね」
「……はい。楽譜とか、無くなっちゃって」

「楽譜? 無くなったの……?」
「はい……3年生になる前くらいから、部室で私のものが無くなる事が増えて」

「……そっか」
「……疑ってるわけじゃ無いんですけど……なんか、疑心暗鬼っていうか。気にし出しちゃって……部活にも行きにくくなっちゃって。だから部活行っても、誰ともしゃべってないです」

「なるほどねぇ。……大変だったね」

部活の事。一気に腑に落ちた。だから……高校に関しても自暴自棄になっていたのかな?とも思う。でもそれはまだ分からない。

「ギターやって、バンドは? 割とガチな感じでやりたいのかな」
「ガチですよ! 勉強しないで……毎日ずっと家で練習してますもん!」

真衣ちゃんがにこっと笑いながら言った。「勉強も少しやんなさいよね」と思ったけど……今は空気を読む事にした。

「そっか。……そっか。部活の事は、お母さんには言って無いんだね」
「……はい。言ってないです。それは別に良いかなって。ギターが楽しいし、とにかく私はギターをやりたから。そっちは言ってますよ」

ようやく真衣ちゃんの気持ちを聞くことができて……これまでの私の疑問は全て、解消した。

真衣ちゃんは真衣ちゃんなりに……覚悟というか、決意を持って中学3年生を過ごしていたんだ。私は真衣ちゃんに強く、強く……励まされた気がした。

◇  ◇  ◇  ◇

「ね、智花……ちょっと話があるんだ。良いかな」
「ん? ……真衣ちゃんの事?」

「うん。いつものさ……カフェに行かない?」

面談が終わり、真衣ちゃんが帰った後の英智ゼミ。これまではどこかぎこちなくて……昔のような関係じゃ無いような気がしていた。

でも、私たちは社長だ。

こんな事をしている場合じゃ無い。私は思い切って、智花に声をかけた。

「うん。良いよ。掃除が終わったら、磯子駅に行こう」

智花も同じ事を思っていたようで、久し振りに優しい笑顔を見る事ができた。

アイスココアを注文して、狭い階段を地下へと下りる。

この景色を見ると……塾を始めたくて、お父さんをここに呼んできた時の事が、昨日の事のように蘇ってくる。

「あそこにしよっか」
座る場所も……やっぱりあの時と同じ場所。

「真衣ちゃんの事なんだけどさ」

ストローをアイスココアに差し込んで、くるくるとかき混ぜる。下に溜まったココアがもあっ……と全体に混ざっていった。