「だってさ、社長は君たちだろ? 君たちの塾なんだろ? 『正解』は君の心の中にあるんじゃないのか?」
遠藤先生にお礼を言って、生徒さん達が来る前に私は光成塾を出た。
ドアを出る時に、先生は「東堂と喧嘩するなって言ったよな? ちゃんと腹を割って話合った方が良い」と、最後に付け加えてくれた。
なぜかは分からなかったけど……帰り道、私は涙が止まらなかった――。
◇ ◇ ◇ ◇
英智ゼミは生徒数1名。例え10人いようと、20人いようと受験生は一人ひとりしっかりと生徒面談も行う。
いずれ生徒さんが増えたら……智花と分担しても良いのかも知れないけど、今はまだ1人だから、智花と2人で面談を行う。
「真衣ちゃんってさ、部活……吹奏楽部だから引退が遅いよね」
「うん。……あっ、はい。確か……最後の演奏会が9月だったと思います」
面談といっても、普段勉強を教えながら話をしている事の延長でしかない。
別に生徒さんが新しく入ってくれたら、あまり聞かれたく無い事もあるだろうから、教室内で進路について話をする事も無いだろうけど。
「……だよねぇ。遅いよね」
ほとんどの部活動は6月の最終週か、7月の第1週に引退する。
もちろん勝ち進んでいくような強い部活なら、8月中旬だったり、全国大会に進めば……9月だったりするけど、まぁそんな部活はあまり無い。
「はい」
「困ったよね。部活も応援したいしさ」
「んー……本当は辞めたいんですけどね。前も言ったけど……」
真衣ちゃんのこの言葉を聞いて、智花が質問した。
「もうすぐ引退なのに? 辞めたいの?」
「はい……」
ちょっと下を向いて、小声で答える真衣ちゃん。「何かあるのかな……」と直感的に私は何か感じた。
「本当は、やっぱりギターやりたいんですよねぇー……。部活は良いかなって」
「そうなんだねぇ。ね、行きたい高校とか……どんな感じなの? やっぱり……あまり興味無い?」
「うーん……」
真衣ちゃんの成績では、高校はほとんど選ぶ事はできない。恐らく私立高校に専願や単願という形で……何とか、どこか行くところがあれば……という感じになるはず。
それは智花も分かっていると思う。
(聞いてもねぇー……分かんないだろうなぁ)
そもそもあまり興味が無いように感じる。
……ただ、その興味の無さが、本当に高校自体に興味が無いからなのか……自分の成績じゃ行ける高校なんて無いという思いから、考えを止めてしまっているからなのか……
それは私たちには分からない。
「高校にあまり興味無いって、言ってたもんねぇ……難しいね」
優しく智花が話かけた。真衣ちゃんは何か言いたげ。じっとうつむいて、何かを考えているようにも見えた。
「お母さんは? 何て言ってるのかな。真衣ちゃんの高校」
「前から変わらないかなぁ……私に公立高校行って欲しいと思ってますね。最近、よく言われます」
「そっかぁ……」
本当に難しいパターン。「栄ケ丘高校に行きたいです!」と具体的に名前を出してもらえれば、「じゃぁ、これくらい勉強していこうね!」って言えるのに……
そもそも高校に興味無いと言われてしまったら……何て話を続けていけば良いのか、分からなくなってしまった。
「どっちに進むにしても……基本ができていないと無理だから……先ずはこれからも基本的な問題、しっかり身に付けていきましょうか」
(ん……智花、話をまとめようとしてんのかぁ……)
「はい、頑張ります」
「うん。がんばろ!」
面談は終わった。でも私の心の中は、更にもやぁー……っとしたものが渦巻くようになった。
最初のお母さんの面談で、真衣ちゃんは高校にすら興味が無いらしかった。それは今でもそうらしい。でも……その理由は何だろう。
そしてお母さんはどう思っているんだろう……?
遠藤先生にお礼を言って、生徒さん達が来る前に私は光成塾を出た。
ドアを出る時に、先生は「東堂と喧嘩するなって言ったよな? ちゃんと腹を割って話合った方が良い」と、最後に付け加えてくれた。
なぜかは分からなかったけど……帰り道、私は涙が止まらなかった――。
◇ ◇ ◇ ◇
英智ゼミは生徒数1名。例え10人いようと、20人いようと受験生は一人ひとりしっかりと生徒面談も行う。
いずれ生徒さんが増えたら……智花と分担しても良いのかも知れないけど、今はまだ1人だから、智花と2人で面談を行う。
「真衣ちゃんってさ、部活……吹奏楽部だから引退が遅いよね」
「うん。……あっ、はい。確か……最後の演奏会が9月だったと思います」
面談といっても、普段勉強を教えながら話をしている事の延長でしかない。
別に生徒さんが新しく入ってくれたら、あまり聞かれたく無い事もあるだろうから、教室内で進路について話をする事も無いだろうけど。
「……だよねぇ。遅いよね」
ほとんどの部活動は6月の最終週か、7月の第1週に引退する。
もちろん勝ち進んでいくような強い部活なら、8月中旬だったり、全国大会に進めば……9月だったりするけど、まぁそんな部活はあまり無い。
「はい」
「困ったよね。部活も応援したいしさ」
「んー……本当は辞めたいんですけどね。前も言ったけど……」
真衣ちゃんのこの言葉を聞いて、智花が質問した。
「もうすぐ引退なのに? 辞めたいの?」
「はい……」
ちょっと下を向いて、小声で答える真衣ちゃん。「何かあるのかな……」と直感的に私は何か感じた。
「本当は、やっぱりギターやりたいんですよねぇー……。部活は良いかなって」
「そうなんだねぇ。ね、行きたい高校とか……どんな感じなの? やっぱり……あまり興味無い?」
「うーん……」
真衣ちゃんの成績では、高校はほとんど選ぶ事はできない。恐らく私立高校に専願や単願という形で……何とか、どこか行くところがあれば……という感じになるはず。
それは智花も分かっていると思う。
(聞いてもねぇー……分かんないだろうなぁ)
そもそもあまり興味が無いように感じる。
……ただ、その興味の無さが、本当に高校自体に興味が無いからなのか……自分の成績じゃ行ける高校なんて無いという思いから、考えを止めてしまっているからなのか……
それは私たちには分からない。
「高校にあまり興味無いって、言ってたもんねぇ……難しいね」
優しく智花が話かけた。真衣ちゃんは何か言いたげ。じっとうつむいて、何かを考えているようにも見えた。
「お母さんは? 何て言ってるのかな。真衣ちゃんの高校」
「前から変わらないかなぁ……私に公立高校行って欲しいと思ってますね。最近、よく言われます」
「そっかぁ……」
本当に難しいパターン。「栄ケ丘高校に行きたいです!」と具体的に名前を出してもらえれば、「じゃぁ、これくらい勉強していこうね!」って言えるのに……
そもそも高校に興味無いと言われてしまったら……何て話を続けていけば良いのか、分からなくなってしまった。
「どっちに進むにしても……基本ができていないと無理だから……先ずはこれからも基本的な問題、しっかり身に付けていきましょうか」
(ん……智花、話をまとめようとしてんのかぁ……)
「はい、頑張ります」
「うん。がんばろ!」
面談は終わった。でも私の心の中は、更にもやぁー……っとしたものが渦巻くようになった。
最初のお母さんの面談で、真衣ちゃんは高校にすら興味が無いらしかった。それは今でもそうらしい。でも……その理由は何だろう。
そしてお母さんはどう思っているんだろう……?



