16歳、先生になる―女子高生社長の挑戦―

「ごめん。ダメだ。私」

やっぱり言わなきゃ良かったかなと思い、智花に謝った。

智花は何も言い返してくれない。黙って歩いて行ってしまった。

(はぁ。上手く行かないな……どうしたら良いんだろう)
(……何て言えば良かったのよ)

ため息をつきながら、少し遅れて智花の後ろを歩いていった。

◇  ◇  ◇  ◇

それ以来、智花とは少しぎこちなくなっていった。

火曜日と木曜日、真衣ちゃんに対してそれぞれ数学と英語の授業はするけど……「どうでも良い話」をお互いにしなくなっていた事に気付いた。

避けてる訳じゃ無いけど……どうにも気まずい。ただでさえ雄弁じゃ無い智花。より一層話さなくなっている気がした。

「ね、英里先生さ……智花先生と喧嘩でもした?」

智花がトイレに行っている時、小声で真衣ちゃんが聞いてきた。

(えっ……? ちょっと……)

「えっ……? そんな事無いよ? 別に、普通だよ。何か変だった?」
「んー……分からないけど……何となく、かなぁ」 

女子は鋭い。真衣ちゃんには「何かあった」と分かりやすいくらい、見抜かれていた。

(こりゃやばいな……)
(遠藤先生にアドバイスもらおかなぁー……)

また前回のように、土曜日に先生からアドバイスをもらおうと思った。……今度は私、1人で。

不思議な感じだった。いつもは光成塾に向かう時は、横には智花が歩いていて、どうでも良い話をしながら向かうのに。

話をしながらだと意識が向かなかったけど、塾へ向かう時の道路、お店……色々な景色を見る度に、自分が受験生だった時の事を急に思い出した。

(必死だったよなぁ。……懐かしいな)

勉強のやり方を教えてくれたのは光成塾。

できる喜び、楽しさを教えてくれたのも光成塾。栄ケ丘に合格させてくれたのも光成塾……。

「塾って何なんだろう?」と思いながら、塾の前に到着した。

「こんにちはぁー……せんせーい……?」

ギイッとドアを開けて、まだ暗い教室の中に、語りかける。……返事は返って来ない。

(えー……また出かけてる? でも鍵、開いてるよな。いるんじゃないの?)

「せんせーい。いますぅ?」

奥の方から「ジャー……」と音がする。どうやらまたもトイレらしい。

(あっぶな。先生、いて良かった……)