「千夏ちゃんが塾を辞めて、真衣ちゃんも辞めてしまうんじゃないか」
私と智花がずっと心に引っかかっていた事。意外にも、真衣ちゃんの想いは違ったらしい。
「千夏ちゃん……塾、辞めたくないって言ってます……」
真衣ちゃん1人になった教室。隠しても仕方が無いし、すぐにバレてしまう事だから……私と智花は真衣ちゃんと千夏ちゃんの話になる。
でも、「千夏ちゃんは続けたがっている」と聞いて、驚いた。
「そうなんだねぇ……続けたいって言ってくれてるんだぁ……」
「そうですよ!? 『お母さんが勝手に決めた』って……学校で落ち込んでますもん……」
「……そっか」
この時初めて、私は気付いた。
カフェみたいなお店は、コーヒーを飲みたい人が、コーヒー代を払うけど、塾はコーヒーを飲みたい人と、お金を払う人が違うという事に。
どうしようも無い事もあるんだ……。
「いつかまた……戻ってきてくれると良いなぁ……」
真衣ちゃんは寂しそうな表情で、ぽつりと呟いた。「絶対1人じゃ寂しいよな」という想いもあったけど……
「真衣ちゃんは辞め無さそうだな」と安心している自分もいる事に気が付いた。
(何なの……この気持ち……)
複雑な想いを抱えながら、週に2回。火曜日と木曜日、私と智花は真衣ちゃんの指導に全力を注いでいった。
部活動で遅れながらも、キチンとサボる事無く通い続ける真衣ちゃん。亀の歩みではあるけど……少しずつ塾にも慣れて、勉強もできるようになっていった。
ただ……私の中で、真衣ちゃんに対して気になる想いがむくりと目を覚ました事に、ある日気付いたのだった。
「真衣ちゃん、英単語……全然覚えられてないけど、家での勉強時間、増えてるみたいなんだよね」
英智ゼミの戸締りをして、薄暗い脇道を歩きながら、智花が少し明るい顔で言った。
「……そっか」
「数学は? どんな感じ?」
「まぁ……なかなか厳しいよねぇー……計算でギリギリ。応用問題はね……」
真衣ちゃんは分からない問題はしっかりと質問してくれる。それに対して、私が説明すると、彼女なりに理解してくれるのだ。
「じゃ、良いんじゃない? 質問してくれないよりは全然良いと思うけどね」
「まぁ。そういう意味では……すっごい良い子なんだけどさ」
「……何よ。何か気になるの?」
「うん……何ていうかさ」
ここ最近、ずっと気になっていた事。智花に言うべきがどうか悩んだ。
「……うーん」
「何よ。ちゃんと言いなさいよ」
「そうだなぁ。悪い意味じゃ無いんだけどさ……真衣ちゃん、勉強に向いていないんじゃないかなぁ」
「はぁ? 何よ、その言い方。そんな言い方……無いんじゃない?」
智花が怒ったように言い返してきた。ごもっともだと思う。
私も……上手く言えないけど、そういう事が言いたいんじゃ無いんだけど、言葉が見つからない。
「そういう意味じゃ無いってば」
「じゃ、どういう意味よ」
「勉強が苦手だから……うちに来てくれてるってのは分かるよ。それにうちは、そういう塾だし」
「そういう生徒に、分かりやすくしっかり教える塾なんじゃ無いの?」
「だからさ……そういう事が言いたいんじゃ無いんだよ。上手く言えないけどさ……」
「……」
明らかに不愉快な色を滲ませる智花。
そりゃそうだろうな……私が逆の立場でも、同じようなリアクションになるような気がするから……。
私と智花がずっと心に引っかかっていた事。意外にも、真衣ちゃんの想いは違ったらしい。
「千夏ちゃん……塾、辞めたくないって言ってます……」
真衣ちゃん1人になった教室。隠しても仕方が無いし、すぐにバレてしまう事だから……私と智花は真衣ちゃんと千夏ちゃんの話になる。
でも、「千夏ちゃんは続けたがっている」と聞いて、驚いた。
「そうなんだねぇ……続けたいって言ってくれてるんだぁ……」
「そうですよ!? 『お母さんが勝手に決めた』って……学校で落ち込んでますもん……」
「……そっか」
この時初めて、私は気付いた。
カフェみたいなお店は、コーヒーを飲みたい人が、コーヒー代を払うけど、塾はコーヒーを飲みたい人と、お金を払う人が違うという事に。
どうしようも無い事もあるんだ……。
「いつかまた……戻ってきてくれると良いなぁ……」
真衣ちゃんは寂しそうな表情で、ぽつりと呟いた。「絶対1人じゃ寂しいよな」という想いもあったけど……
「真衣ちゃんは辞め無さそうだな」と安心している自分もいる事に気が付いた。
(何なの……この気持ち……)
複雑な想いを抱えながら、週に2回。火曜日と木曜日、私と智花は真衣ちゃんの指導に全力を注いでいった。
部活動で遅れながらも、キチンとサボる事無く通い続ける真衣ちゃん。亀の歩みではあるけど……少しずつ塾にも慣れて、勉強もできるようになっていった。
ただ……私の中で、真衣ちゃんに対して気になる想いがむくりと目を覚ました事に、ある日気付いたのだった。
「真衣ちゃん、英単語……全然覚えられてないけど、家での勉強時間、増えてるみたいなんだよね」
英智ゼミの戸締りをして、薄暗い脇道を歩きながら、智花が少し明るい顔で言った。
「……そっか」
「数学は? どんな感じ?」
「まぁ……なかなか厳しいよねぇー……計算でギリギリ。応用問題はね……」
真衣ちゃんは分からない問題はしっかりと質問してくれる。それに対して、私が説明すると、彼女なりに理解してくれるのだ。
「じゃ、良いんじゃない? 質問してくれないよりは全然良いと思うけどね」
「まぁ。そういう意味では……すっごい良い子なんだけどさ」
「……何よ。何か気になるの?」
「うん……何ていうかさ」
ここ最近、ずっと気になっていた事。智花に言うべきがどうか悩んだ。
「……うーん」
「何よ。ちゃんと言いなさいよ」
「そうだなぁ。悪い意味じゃ無いんだけどさ……真衣ちゃん、勉強に向いていないんじゃないかなぁ」
「はぁ? 何よ、その言い方。そんな言い方……無いんじゃない?」
智花が怒ったように言い返してきた。ごもっともだと思う。
私も……上手く言えないけど、そういう事が言いたいんじゃ無いんだけど、言葉が見つからない。
「そういう意味じゃ無いってば」
「じゃ、どういう意味よ」
「勉強が苦手だから……うちに来てくれてるってのは分かるよ。それにうちは、そういう塾だし」
「そういう生徒に、分かりやすくしっかり教える塾なんじゃ無いの?」
「だからさ……そういう事が言いたいんじゃ無いんだよ。上手く言えないけどさ……」
「……」
明らかに不愉快な色を滲ませる智花。
そりゃそうだろうな……私が逆の立場でも、同じようなリアクションになるような気がするから……。



