16歳、先生になる―女子高生社長の挑戦―

「なるほどねぇー……大変だったね」

千夏ちゃんのお母さんと面談をした後に、急遽連絡を取ったら……遠藤先生は「来て良いよ」と快く言ってくれた。

土曜日の夕方6時。生徒さんがお弁当を食べ賑やかな中、私たちは光成塾にいた。

「……大変でしたよ」
「はははっ! 顔に出てるねぇー」

カラカラと私たちの苦労も知らないかのように、遠藤先生は笑っている。

「はぁ?」と思ったけど……自分が面談で責められたと感じた私は、何も言い返す事ができなかった。

「何。心、折れた?」
「……折れますよ」

「ははっ……そんなんで心が折れてたら、今後、心がいくつあっても足りないよ?」

コーヒーが入ったマグカップを口元に持っていく。

「えぇー………」
「ま、冗談冗談。真面目な話すると……最初はそんなもんだよ」

「そうなんですか……」
「んっとね……そうだなぁ……ちゃんと教えておいてあげるよ」

「……はい」

そう言うと、遠藤先生は「こっち来て」と言って、私たちを奥の小さな部屋へと呼び寄せた。

「何で向こうじゃダメなんですか」
「生徒に聞こえちゃうからさ」

「ふぅん……」
「えっと……ま、座ったら」

6畳ほどの狭い部屋。テキストが乱雑に積んであるから……物置として使ってるっぽかった。

「そうだなぁ。何から話そうか」
「……」

「先ずね、お客さん。つまり保護者だね。お客さんは結果を求めて、お金を払うんだ。成果って言い換えても良い」
「……」

「合格を成果って捉える方もいる。点数が上がる事を成果って捉える方もいる。今までゲームしかして無かった子が、机に向かうだけで成果って捉える方もいる。……言ってる意味、分かる?」

「はい。意味は分かりますけど……」
「今回の問題は、そのお母さんにとっての成果が何なのか……藤本と東堂が掴んでいなかった事が、原因の1つだね」

「千夏ちゃん、今まで全然勉強して無かったんですよ? 週2回ですけど……塾に来るだけでも立派だと思うのに……」
「さあ? 僕は教えてないからね。分からないよ」

「でもまぁ……点数もそりゃ上がった方が良いか……」
「だから。僕は教えてないから分からないってば」

「……じゃ、どうすれば良かったんですか?」

遠藤先生はにこっと笑いながら、私と智花に視線を向け続ける。腕を組みながら……静かに続けた。

「分かる?」
「……えっ? 何がですか」

「藤本と東堂がどうすれば良かったか? って事だよ」
「……」

「そのために、最初の面談があるんだろ」
「……!」

ビリリ!と頭に雷が落ちたような……数学の問題で閃く時と同じ感覚があった。

「あーっ!」
「そうだよ。面談ってのはね、そのためにするんだよ」

「あー……」

私と智花は、顔をお互い見合わせる。