16歳、先生になる―女子高生社長の挑戦―

「栄ケ丘高校です」
「あら!? 凄いねぇ! そしたら大丈夫か……」

話を聞いていると、倉田真衣ちゃんは、千夏ちゃんと同じ三年生。勉強はきっと……千夏ちゃんと同じくらいできない。

吹奏楽でトロンボーンをやっているらしい。

「どの辺りの高校をお考えなんですか?」お父さんが倉田さんに尋ねた。

「私と主人は……できたら公立高校に行って欲しいんですけどね……学力が……」

下を向いて、お母さんが苦々しい顔で笑う。上手く言えないけど……「何かあるのかな?」と感じた。

「お子様は……どうおっしゃっていますか?」続けるようにお父さんが、また尋ねる。
「……高校、行きたがらないんですよ」

「行きたがらない……? ですか?」
「正確に言うと……音楽を本格的にやりたいみたいで。その辺りで悩んでるみたいですね……」

「なるほど……そういう事ですか」

お母さんは公立高校に行って欲しい……。学力的に公立高校は無理だろうから、つまり音楽は諦めて勉強に専念して欲しいという事。

でも、まだ会った事は無い真衣ちゃんは……公立高校にはあまり興味が無く、音楽をメインにやっていきたいって事か……。

(千夏ちゃんとは……全然状況が違うんだなぁ……)

次の週の火曜日と木曜日。千夏ちゃんと同じ時間帯での体験が決まり、倉田さんのお母さんは帰って行った。

「全然違うんだね。千夏ちゃんと」
「あっ、智花もそう感じた? 私も」

「……大丈夫かなぁ」
「何が? 千夏ちゃんと同じくらいの学力みたいだから……平気じゃない?」

「そうじゃないよ。真衣ちゃんの気持ちだよ。だって……本人は音楽やりたいんでしょ?」
「あっ……そっちか。それは私も思ったよ。まぁ……会ってみないことには何とも言えないけどね」

「……それはそうだけど」

一抹の不安を覚え、ちょっと心の中がもやっとしたけど、「とりあえず体験だしな」と思い直し、真衣ちゃんの体験用の教材を準備した。