16歳、先生になる―女子高生社長の挑戦―

「まぁ、オーナーはお父さんだけどな」
「分かってるよ! 例えだって。た・と・え!」

「でも……良かったじゃないか。智花ちゃんにも早く知らせてあげないと」
「そうだね! DMだとあれだから……ちょっと電話してくる!」

「とりあえず、おめでとう」

狭い団地。家の中から電話するのが恥ずかしく、私は外に出てエレベーターホールまで走った。

エレベーターホールの横には、自転車を止める事ができる広い駐輪場が広がる。私は駐輪場のど真ん中で、智花の番号に電話をかける。

「何? どうしたの」

ついさっきまでカフェでお茶していたからなのか……さっきまでとは違って、いつものテンションの低い智花の声。

「聞いて! お父さんが言ってたんだけど……千夏ちゃん、塾入ってくれるって!」
「えーーーっ!?」

思わずスマホから耳を離してしまった。あまりに大きい智花の声。こんな声を聞くのはきっと初めて。

「ほんとなのぉ!?」
「本当だってば! 私たちがお茶してる時、千夏ちゃんのお母さんから電話が来たんだって!」

「やったぁーー……嬉しいなぁー……」

一瞬スマホの向こう側から小さく「ぐすん」と聞こえた気がした。きっと智花も苦しい1日だったに違いない。

「やったね……! 智花」
「うん。良かった……良かった……」

「ここが私たちの英智ゼミ、スタートだねぇ!」
「ね。頑張らないとね」

「ま、今日はそんなトコかな! じゃ……また明日ね」
「うん。電話ありがと」

やった!
やった!
やった!

英智ゼミ、初めての生徒。本当に嬉しい。

ふわりと風が入り込む駐輪場で、私はずっと外を眺める。塾に入ってくれるという事は、上手く言えないけど……

何だか自分を認めてもらえたような気がした。