「もう受験生なんですけど……全然勉強しなくてですねー……」
この時期になって問い合わせをしてくる方は、きっと勉強が苦手な生徒だから……
と遠藤先生に言われていた通りだった。
それに、新しくできた塾には、どちらかというと勉強が苦手な生徒が集まるらしい。
栄ケ丘高校を目指すような生徒さんは、大手の学習塾に入って行ってしまうとの事だった。
「そうなんですね。これまで塾に行かれたご経験はありますか?」
「いえ……初めてです。何ていうか……どの塾に行っても、断られそうで」
松下さんが何かを思い出すように笑っている。
それほど成績がヤバいということだろうか……智花は真剣な眼差しで、松下さんを見つめる。
「高校は……どの辺りをお考えなんですか?」
「うーん……今のままだと、選べるような状況ではないので……とにかく頑張って欲しいとしか言えないんですよね……」
「なるほど、得意な教科も……特には無いですかね」
流石、お父さん。色々と話を振りながら、松下さんから話を聞き出している。
「いずれは自分達でできるようにな」とは言っていたけど……できるようになる気がしない。
「お2人は……生徒さん……ですか?」
松下さんが、私と智花に視線を向けながら質問してきた。
「あっ……私たちが責任持って、教えます!」智花が表情を変える事無く、喰い気味に答えた。
「……そうなんですか、お2人、教えるんですね……」
「ええ。私は保護者の皆様とお話をさせて頂きますけれど……実際は藤本と東堂が責任持って、勉強を教えますから。2人とも成績優秀ですから。大丈夫ですよ」
お父さんが優しく松下さんに語りかける。
私はショックを受けていた。
当然予想はしていたけど……ここまで唖然とした表情をされるとは思っていなかったから。
松下さんの表情からは明らかに不安の色が滲み出ている。
(だよね……でも、負けちゃダメ! ここから始まるんだから……)
気持ちをグッと引き締めて、自信に満ちた表情を作る。本当は家に帰って……暗い部屋で落ち込みたい気分……。
智花はどう感じているんだろう。
「先ずは、体験がありますので……」
その後の話はあまり覚えていない。
できるだけ悟られないように……と思いながら、表情を作る事に意識を集中し過ぎたからだと思う。
お父さんと松下さんが2人でずっと話をしていた事しか思い出せない。先ずは体験を受けてもらう事が決まった。
「今日はありがとうございました。では……明日からお待ちしておりますので」
「はい、こちらこそ、ありがとうございます」
靴を履きながら、松下さんはお父さんに挨拶を返す。
その言葉は……私には向けられていないように感じた。
「それでは、お気を付けてお帰り下さい」
お父さんが頭を下げるのを見て、私と智花も慌てて頭を下げる――
悔しいような悲しいような気持ちが、胸の奥から込み上げてくる……。
「はぁ。……2人とも、お疲れ様!」
「……」
「人生初の、保護者との面談。どうだった」
「……うわぁぁぁ……」
智花が急に声を上げて泣き出す。
初めて見る、智花が泣く所……。
私は泣きはしなかったけど、悔しくて涙ぐんで……言葉を出す事ができなかった。
この時期になって問い合わせをしてくる方は、きっと勉強が苦手な生徒だから……
と遠藤先生に言われていた通りだった。
それに、新しくできた塾には、どちらかというと勉強が苦手な生徒が集まるらしい。
栄ケ丘高校を目指すような生徒さんは、大手の学習塾に入って行ってしまうとの事だった。
「そうなんですね。これまで塾に行かれたご経験はありますか?」
「いえ……初めてです。何ていうか……どの塾に行っても、断られそうで」
松下さんが何かを思い出すように笑っている。
それほど成績がヤバいということだろうか……智花は真剣な眼差しで、松下さんを見つめる。
「高校は……どの辺りをお考えなんですか?」
「うーん……今のままだと、選べるような状況ではないので……とにかく頑張って欲しいとしか言えないんですよね……」
「なるほど、得意な教科も……特には無いですかね」
流石、お父さん。色々と話を振りながら、松下さんから話を聞き出している。
「いずれは自分達でできるようにな」とは言っていたけど……できるようになる気がしない。
「お2人は……生徒さん……ですか?」
松下さんが、私と智花に視線を向けながら質問してきた。
「あっ……私たちが責任持って、教えます!」智花が表情を変える事無く、喰い気味に答えた。
「……そうなんですか、お2人、教えるんですね……」
「ええ。私は保護者の皆様とお話をさせて頂きますけれど……実際は藤本と東堂が責任持って、勉強を教えますから。2人とも成績優秀ですから。大丈夫ですよ」
お父さんが優しく松下さんに語りかける。
私はショックを受けていた。
当然予想はしていたけど……ここまで唖然とした表情をされるとは思っていなかったから。
松下さんの表情からは明らかに不安の色が滲み出ている。
(だよね……でも、負けちゃダメ! ここから始まるんだから……)
気持ちをグッと引き締めて、自信に満ちた表情を作る。本当は家に帰って……暗い部屋で落ち込みたい気分……。
智花はどう感じているんだろう。
「先ずは、体験がありますので……」
その後の話はあまり覚えていない。
できるだけ悟られないように……と思いながら、表情を作る事に意識を集中し過ぎたからだと思う。
お父さんと松下さんが2人でずっと話をしていた事しか思い出せない。先ずは体験を受けてもらう事が決まった。
「今日はありがとうございました。では……明日からお待ちしておりますので」
「はい、こちらこそ、ありがとうございます」
靴を履きながら、松下さんはお父さんに挨拶を返す。
その言葉は……私には向けられていないように感じた。
「それでは、お気を付けてお帰り下さい」
お父さんが頭を下げるのを見て、私と智花も慌てて頭を下げる――
悔しいような悲しいような気持ちが、胸の奥から込み上げてくる……。
「はぁ。……2人とも、お疲れ様!」
「……」
「人生初の、保護者との面談。どうだった」
「……うわぁぁぁ……」
智花が急に声を上げて泣き出す。
初めて見る、智花が泣く所……。
私は泣きはしなかったけど、悔しくて涙ぐんで……言葉を出す事ができなかった。



