16歳、先生になる―女子高生社長の挑戦―

ヴー……ヴー……

(!? ……電話?)

スマホを取り出し、電話に出るとお父さんからだった。

「何? どうしたの?」
「おい! 来たぞ! 問い合わせ!」
「えー!!! やったー!!!」

明日の夕方5時半。初めての保護者の人がやってくる。中3生らしい。

理由は分からないけど、電話を切った後に少し身震いをする。「お父さんがいてくれて……本当に良かった」と心の底から思った。

そして私は智花に電話をかけた――

松下小夏ちゃんというらしい。中学は私たちと同じで、この春から3年生になった。勉強は苦手。

お父さんから聞いた情報はこんな感じ。

夕方になると、アパート近くの外灯に、ぽつり……ぽつりと灯がともる。少し薄暗いけど、こればかりは仕方ない。私たちは書類を用意して、松下さんが来るのを待った。

「いよいよだね……緊張するなぁ……お父さんがいてくれて、良かったよ……」
足の震えが止まらない。智花も何だか、顔が真っ青になってる気がする……。

「ははっ……そうだな。しかも初めての……英智ゼミ、記念すべき1人目だしな」
「お父さんは何でそんなに余裕なのよ……」
「……ん? お父さんが大人だからじゃないか?」

「こんにちはぁ……」
ドアは開けっ放しにしてある。外から女性のか細い声が部屋の中に聞こえた。

「はっ……はいぃ!」
思わず声が裏返ってしまった。学校だったら大爆笑が起きたであろう裏声も、ここでは誰も笑わない。私と智花に緊張が走る……。

2人で狭い玄関口まで出て行くと、保護者らしい女性が立っていた。「ここで合ってるのかな」と言わんばかりの表情をしている。

「あっ……あの、松下さま……ですか?」
「はい。ここ……塾で合ってます?」
まさか女子高生が出てくるなんて、思ってもいなかったのだろうか……きょとんとした顔をされてしまった。

「あ、どうぞ。お待ちしておりました」

お父さんが後からゆっくりと出てきて、穏やかに女性に向かって話かける。

「良かった」という表情を浮かべながら……女性は靴を脱いで、6畳ほどの教室に置いてあるテーブルに向かって歩き出した。

「どうぞ、お座り下さい」

智花に促されて、女性はゆっくりと椅子に腰を下ろす。