「分かったよ」
「英里と智花ちゃんの気持ちはね」
組んでいた腕を緩めて、静かに私と智花に向かってお父さんが呟く。
「……うん。分かった」
もう一度……静かにお父さんは自分に向けるように小声で言った。
「買ってみるかな……その気持ち」
「やってみたら良い。チャレンジしてみたら良い」
絶対に「駄目だ」と言われ……何だったらお説教すらされるんじゃないかと思っていた私は……言葉を出す事ができなかった。
「本当!? 良いの!?」
「あぁ。その代わり、途中で投げ出さない事が条件だ」
「やった! やったぁー!!」
周囲のお客さん達が「何だ?」という顔をして私を見てきた。……興奮し過ぎて、大きな声を出してしまった……。智花も大きく目を見開いて、両手を口に当てている。私みたいに声を出さないのが、何とも智花らしい。
「智花! やったねぇ!」
「……うん!」
ようやく智花の笑顔を見る事ができた。私たちは手を取り合って椅子の上で小躍りする。本当だったら……外を一周走りたいほどの気分……!
「お父さん……ありがと!」
「本当にありがとうございます!」
私と智花は、改めてお父さんにできる限り……生まれて初めて頭を下げた。
「おいおい……やるのは英里と智花ちゃんだぞ? お父さんはアドバイザーだからな」
そういうお父さんは、嬉しそうでもあり、困惑もしているような表情を浮かべていた――
◇ ◇ ◇ ◇
「ちょっと色々と考えてみるから」とお父さんは言った。私と智花は何をどうして良いのか分からない状況だったから……素直に従う事にした。2日後、最後の数学Ⅰの授業が終わる頃、お父さんからDMが届いていた。
『まだ学校か? もし学校だったら、16時にこの前のカフェに智花ちゃんと来れるか?』
(あ……! 何か決まったのかな……!?)
私は急いで6組の智花の元に走って行った。これから何か素敵な事が始まる気がする……私の心は踊っていた。これまでの人生の中で1番。こんなに毎日が楽しいなんて……栄ケ丘高校に入学して初めてだった。
「智花!」
ズザッ……と6組の前でブレーキをかけて、教室の中をぐるりと見回す。智花は教科書をカバンに詰め込んで、正に帰る直前だった。
「……どうしたの?」
「お父さんから! DM来た!」
「えっ……?」
大きく目を見開いて、驚く智花。きっと智花も……そわそわしていたに違いない。私と同じ気持ちで2日間過ごしていたはず。
「本当?」
「うん! 午後4時に智花と、あのカフェに来てって」
「4時……」
智花が教室の前に掛けてある時計に視線を向ける。時間は午後3時を少し回った所だった。
「行こっ!」
「……うん!」
こんなに無邪気な表情をする智花を見るのは……いつ振りだろう? そんな事を考えながら、私たちは昇降口を出て、校門へと向かって行った。桜の絨毯も、そろそろ消えて無くなろうとしている。
「……私さ」
太ももに力を入れて、坂道を下っている途中、思い詰めたかのような声で、智花が言ってきた。
「どうしたの? ……何かあった?」
「部活……休部届出してきた」
「……そっか。一応、休部にしといたんだ」
「うん。これからどうなるか分からないからね……一応」
「智花も色々と考えながら頑張ってるんだなぁ」と思い、磯子駅に向かう私の心は……一層引き締まっていくような気がした。
「英里と智花ちゃんの気持ちはね」
組んでいた腕を緩めて、静かに私と智花に向かってお父さんが呟く。
「……うん。分かった」
もう一度……静かにお父さんは自分に向けるように小声で言った。
「買ってみるかな……その気持ち」
「やってみたら良い。チャレンジしてみたら良い」
絶対に「駄目だ」と言われ……何だったらお説教すらされるんじゃないかと思っていた私は……言葉を出す事ができなかった。
「本当!? 良いの!?」
「あぁ。その代わり、途中で投げ出さない事が条件だ」
「やった! やったぁー!!」
周囲のお客さん達が「何だ?」という顔をして私を見てきた。……興奮し過ぎて、大きな声を出してしまった……。智花も大きく目を見開いて、両手を口に当てている。私みたいに声を出さないのが、何とも智花らしい。
「智花! やったねぇ!」
「……うん!」
ようやく智花の笑顔を見る事ができた。私たちは手を取り合って椅子の上で小躍りする。本当だったら……外を一周走りたいほどの気分……!
「お父さん……ありがと!」
「本当にありがとうございます!」
私と智花は、改めてお父さんにできる限り……生まれて初めて頭を下げた。
「おいおい……やるのは英里と智花ちゃんだぞ? お父さんはアドバイザーだからな」
そういうお父さんは、嬉しそうでもあり、困惑もしているような表情を浮かべていた――
◇ ◇ ◇ ◇
「ちょっと色々と考えてみるから」とお父さんは言った。私と智花は何をどうして良いのか分からない状況だったから……素直に従う事にした。2日後、最後の数学Ⅰの授業が終わる頃、お父さんからDMが届いていた。
『まだ学校か? もし学校だったら、16時にこの前のカフェに智花ちゃんと来れるか?』
(あ……! 何か決まったのかな……!?)
私は急いで6組の智花の元に走って行った。これから何か素敵な事が始まる気がする……私の心は踊っていた。これまでの人生の中で1番。こんなに毎日が楽しいなんて……栄ケ丘高校に入学して初めてだった。
「智花!」
ズザッ……と6組の前でブレーキをかけて、教室の中をぐるりと見回す。智花は教科書をカバンに詰め込んで、正に帰る直前だった。
「……どうしたの?」
「お父さんから! DM来た!」
「えっ……?」
大きく目を見開いて、驚く智花。きっと智花も……そわそわしていたに違いない。私と同じ気持ちで2日間過ごしていたはず。
「本当?」
「うん! 午後4時に智花と、あのカフェに来てって」
「4時……」
智花が教室の前に掛けてある時計に視線を向ける。時間は午後3時を少し回った所だった。
「行こっ!」
「……うん!」
こんなに無邪気な表情をする智花を見るのは……いつ振りだろう? そんな事を考えながら、私たちは昇降口を出て、校門へと向かって行った。桜の絨毯も、そろそろ消えて無くなろうとしている。
「……私さ」
太ももに力を入れて、坂道を下っている途中、思い詰めたかのような声で、智花が言ってきた。
「どうしたの? ……何かあった?」
「部活……休部届出してきた」
「……そっか。一応、休部にしといたんだ」
「うん。これからどうなるか分からないからね……一応」
「智花も色々と考えながら頑張ってるんだなぁ」と思い、磯子駅に向かう私の心は……一層引き締まっていくような気がした。



