私の存在はすべてが嘘でできている。


好きな食べ物はいちご。


好きな飲みものはいちごみるく。


好きな音楽は『はつこい』。



―好きな人は


海瀬くん。



これは、私のひと夏の物語。


理想の自分になりたくて。誰かに必要とされる人になりたくて。


でも、なれなくて。



だから、私は今日も嘘をつく。


今までも、そして―これからも。



きっと、この嘘には終りが来る。


すべて、押し殺しながら、自分が誰なのかも分からないまま、なんとなく生きてきた。


その理由なんて、もう忘れた。


ただ、今日も、偽りの自分だけが笑っている。


―わらっている。



偽善者なのだ。


被害者のふりをして今日も生きてゆくけれど、きっと、ずっとはいられない。


きっと、バレてしまうから。


『大丈夫』って笑うけど、ほんとは大丈夫なんかじゃない。


でも、気づいてくれる人はいない。


いらない。


私だけがわかっていればいい。


私だけが味方でいい。


なんにもいらない。


つめたい。


さむい。


しんどい。


そんな感情さえ捨ててしまった私にはなにが残っているんだろう。



生きるのだ。


ただ、それだけなのだから。