「ちょ、ちょっと。え、な、何言って……そんなの無理だって……」
『まぁー、いきなりだしな。家が難しいなら駅で待ち合わせして、なんか美味いもの食おうぜ。オレ、千隼の住んでる街も見てみたいし、おすすめとか教えてくれよ。あ、ちょっと前に話してた、あのアミューズメントパークに行くのもいいよな』
勝手にどんどん話を進める佑真さんに、俺は慌てふためく。
「い、いや、ちょっと待った。無理無理、絶対ムリだから」
『だから、なんで無理なんだよ? オレがそっちに行くって言ってんだし、いいじゃん』
「いや,仕事が……」
『落ち着いたって言ってたよな?』
「予定が……」
『自分の誕生日忘れてたのに?』
「天気が……」
『全国的に晴れらしいぞ』
(うぅ……)
八方塞がりな上、いつもであれば諦めてくれる佑真さんが今日はなかなか引き下がってくれなかった。
だが、ここで俺も引き下がるわけにもいかなかった。
「あ、あのさ……そもそも俺の誕生日なんてお祝いすること自体が無駄だと思うんだよね。俺なんかのために、忙しい佑真さんの大事な時間をもらうなんてできないよ」
『……。はぁー……』
「佑真……さん?」
俺は佑真さんの深い溜息が聞こえ、また途端に不安が募り、胸の鼓動が速くなるのを感じた。
『……。なあ、千隼……自分のこと、なんかとか言うなよ。自分を卑下するような言い方するの、千隼の悪い癖だぞ』
「ご、ごめん……」
真剣な声で佑真さんに注意されてしまい、俺は萎縮して喉が詰まったような感覚に襲われた。
『あー……別に謝って欲しいわけじゃ……。オレの言い方が悪かった。ごめんな、言い方キツくて』
「いや、俺が……あっ……」
(また、やっちゃった……)
佑真さんに注意されたことをすぐに繰り返してしまったと、俺はさらに焦ってしまう。
『……』
「……」
(どうしよう、どうしよう……)
俺たちの間に続いた沈黙は短いはずであったが、俺にはとても長い時間のように感じられた。
『……。千隼は……さ。もっと自分に自信持てよ。オレに会わないのも、その辺が原因なのか?』
「……」
『……。何も言わないのか?』
「……ッ」
俺はなんとか返事をしようと声を出そうとするが、喉に何かが詰まっているかのように、息が吐き出されるだけで声にならなかった。
『はぁー……だんまりか。なぁ、この際だからはっきり聞くけど、そんな頑なにオレと会おうとしない理由は何? 理由くらい、そろそろ教えてくれてもいいんじゃねーの?』
(そ、それは……)
焦る気持ちがさらに俺を追い込んでいく。
(ど、どうしよう……ちゃんと言わないと……)
心臓の音が耳のすぐそばで警報のように鳴っていると俺は感じると、さらに息が詰まっていった。
『それも言えない……か。そんなにオレと会いたくないんだな……』
「そ、そんなこと……ない……」
俺は胸元で手を強く押し当て力を込めると、何とかか細いながらも声を出すことができたが、まるで走った後のように息が苦しかった。
呼吸を整えようと、俺は焦る気持ちを抑えながら、マイクを一瞬だけミュートにして大きく深呼吸をした。
『やっと返事したな。で、何でなんだよ?』
「だから……会いたくないとかじゃない……。俺は……」
(会いたいよ……。でも、やっぱり本当のことは言えないよ……)
正直に全て話してしまおうという考えが頭を過ぎったが、俺は佑真さんに嫌われることの方が怖くて、どうしてもできなかった。
自分に駄目だと必死に言い聞かせるように、俺は首を何度も横に振って、もう一度胸に置いた手に力を込めた。
「だ、だって佑真さん、遠いし……。悪いから……」
『はぁー……。それが千隼が言う理由なんだな……。じゃあ、アイツらとは会ったことあるのか?」
「え……? あ、アイツらって?」
『千隼の元チームメイトだよ』
「それは……。あ、あるよ……。全員じゃないけど、家が近かった人とはね……」
俺はよく考えずに、咄嗟に嘘をついてしまう。
オフ会の誘いが昔あったのは本当だったが、俺はもちろん行ける筈もなく、詳しく聞かれてしまったらどうしようかと焦りが募っていく。
『……』
「さ、さっきも言ったけど、佑真さんと俺とじゃ離れすぎてるよ。だって、新幹線や飛行機に乗る距離だよ? だ、大体、なんでそんなに必死になるの? あ、もしかして配信の雑談ネタにとか思ってる? もう、佑真さんは仕事熱心だなー」
俺は嘘がバレないようにと必死になり、思いついたことを考えなしに口に出してしまう。
『なぁ、千隼……それ本気で言ってる?』
「えっ?」
今まで聞いたことのない低い佑真さんの声に、俺は身体中の血液がフッと足元へと下がったように感じた。
『オレがそんな理由で千隼に会いたいって、言っているのかって聞いてるんだよ!』
「……!」
声を荒げる佑真さんに驚いた俺は、頭が真っ白になり、もう何も考えられなかった。
『……。ごめん、オレ……。今、頭に血が上ってるわ。誕プレだけ送りたいから、今すぐ住所だけ送っておいて』
そう言って、佑真さんはボイスチャットとゲームからログアウトしてしまった。
「あっ……」
何が起こったのかすぐには理解できず、俺はただパソコン画面を見つめてしまう。
「佑真……さん……」
(どうしよう……。こんなことになるなんて………)
佑真さんを怒らせてしまったと理解した時には全身から力が抜け、俺には椅子の背もたれに身体を預けることしかできなかった。
『まぁー、いきなりだしな。家が難しいなら駅で待ち合わせして、なんか美味いもの食おうぜ。オレ、千隼の住んでる街も見てみたいし、おすすめとか教えてくれよ。あ、ちょっと前に話してた、あのアミューズメントパークに行くのもいいよな』
勝手にどんどん話を進める佑真さんに、俺は慌てふためく。
「い、いや、ちょっと待った。無理無理、絶対ムリだから」
『だから、なんで無理なんだよ? オレがそっちに行くって言ってんだし、いいじゃん』
「いや,仕事が……」
『落ち着いたって言ってたよな?』
「予定が……」
『自分の誕生日忘れてたのに?』
「天気が……」
『全国的に晴れらしいぞ』
(うぅ……)
八方塞がりな上、いつもであれば諦めてくれる佑真さんが今日はなかなか引き下がってくれなかった。
だが、ここで俺も引き下がるわけにもいかなかった。
「あ、あのさ……そもそも俺の誕生日なんてお祝いすること自体が無駄だと思うんだよね。俺なんかのために、忙しい佑真さんの大事な時間をもらうなんてできないよ」
『……。はぁー……』
「佑真……さん?」
俺は佑真さんの深い溜息が聞こえ、また途端に不安が募り、胸の鼓動が速くなるのを感じた。
『……。なあ、千隼……自分のこと、なんかとか言うなよ。自分を卑下するような言い方するの、千隼の悪い癖だぞ』
「ご、ごめん……」
真剣な声で佑真さんに注意されてしまい、俺は萎縮して喉が詰まったような感覚に襲われた。
『あー……別に謝って欲しいわけじゃ……。オレの言い方が悪かった。ごめんな、言い方キツくて』
「いや、俺が……あっ……」
(また、やっちゃった……)
佑真さんに注意されたことをすぐに繰り返してしまったと、俺はさらに焦ってしまう。
『……』
「……」
(どうしよう、どうしよう……)
俺たちの間に続いた沈黙は短いはずであったが、俺にはとても長い時間のように感じられた。
『……。千隼は……さ。もっと自分に自信持てよ。オレに会わないのも、その辺が原因なのか?』
「……」
『……。何も言わないのか?』
「……ッ」
俺はなんとか返事をしようと声を出そうとするが、喉に何かが詰まっているかのように、息が吐き出されるだけで声にならなかった。
『はぁー……だんまりか。なぁ、この際だからはっきり聞くけど、そんな頑なにオレと会おうとしない理由は何? 理由くらい、そろそろ教えてくれてもいいんじゃねーの?』
(そ、それは……)
焦る気持ちがさらに俺を追い込んでいく。
(ど、どうしよう……ちゃんと言わないと……)
心臓の音が耳のすぐそばで警報のように鳴っていると俺は感じると、さらに息が詰まっていった。
『それも言えない……か。そんなにオレと会いたくないんだな……』
「そ、そんなこと……ない……」
俺は胸元で手を強く押し当て力を込めると、何とかか細いながらも声を出すことができたが、まるで走った後のように息が苦しかった。
呼吸を整えようと、俺は焦る気持ちを抑えながら、マイクを一瞬だけミュートにして大きく深呼吸をした。
『やっと返事したな。で、何でなんだよ?』
「だから……会いたくないとかじゃない……。俺は……」
(会いたいよ……。でも、やっぱり本当のことは言えないよ……)
正直に全て話してしまおうという考えが頭を過ぎったが、俺は佑真さんに嫌われることの方が怖くて、どうしてもできなかった。
自分に駄目だと必死に言い聞かせるように、俺は首を何度も横に振って、もう一度胸に置いた手に力を込めた。
「だ、だって佑真さん、遠いし……。悪いから……」
『はぁー……。それが千隼が言う理由なんだな……。じゃあ、アイツらとは会ったことあるのか?」
「え……? あ、アイツらって?」
『千隼の元チームメイトだよ』
「それは……。あ、あるよ……。全員じゃないけど、家が近かった人とはね……」
俺はよく考えずに、咄嗟に嘘をついてしまう。
オフ会の誘いが昔あったのは本当だったが、俺はもちろん行ける筈もなく、詳しく聞かれてしまったらどうしようかと焦りが募っていく。
『……』
「さ、さっきも言ったけど、佑真さんと俺とじゃ離れすぎてるよ。だって、新幹線や飛行機に乗る距離だよ? だ、大体、なんでそんなに必死になるの? あ、もしかして配信の雑談ネタにとか思ってる? もう、佑真さんは仕事熱心だなー」
俺は嘘がバレないようにと必死になり、思いついたことを考えなしに口に出してしまう。
『なぁ、千隼……それ本気で言ってる?』
「えっ?」
今まで聞いたことのない低い佑真さんの声に、俺は身体中の血液がフッと足元へと下がったように感じた。
『オレがそんな理由で千隼に会いたいって、言っているのかって聞いてるんだよ!』
「……!」
声を荒げる佑真さんに驚いた俺は、頭が真っ白になり、もう何も考えられなかった。
『……。ごめん、オレ……。今、頭に血が上ってるわ。誕プレだけ送りたいから、今すぐ住所だけ送っておいて』
そう言って、佑真さんはボイスチャットとゲームからログアウトしてしまった。
「あっ……」
何が起こったのかすぐには理解できず、俺はただパソコン画面を見つめてしまう。
「佑真……さん……」
(どうしよう……。こんなことになるなんて………)
佑真さんを怒らせてしまったと理解した時には全身から力が抜け、俺には椅子の背もたれに身体を預けることしかできなかった。


