『久々だなーこのゲーム。アップデートするって聞いた時、絶対にやらないとって思ったんだよなー』
ヘッドフォンから聞こえてくるいつもと同じ心地の良い佑真さんの声に、俺はそっと胸をなで下ろした。
「う、うん。楽しみだね」
(よかった、いつもの佑真さんだ)
つい先日、佑真さんに会いたくないのかと聞かれ、きちんと返事ができなかった俺は、佑真さんがどう感じたか不安になっていた。
俺は平静を装いつつ、ボイスチャットをしながら目の前のパソコンでゲームを起動させた。
(でも、嬉しいな……。あの時のゲームだって覚えていてくれて……。いや、別に佑真さんにとって、そんな記憶に残る出来事でもないか……。単に前からやってたってだけで……)
『千隼をもらう』
深い意味はないと分かっていながらも、佑真さんの言葉を俺は今でもはっきりと覚えている。
たった一週間しか練習時間がなかったにも関わらず、チームメイトとの試合結果は圧倒的な差で、佑真さんと俺の勝利だった。
佑真さんの大胆かつ的確な状況判断力と、冷静に佑真さんの指示をこなす俺との相性は抜群だったからだった。
『このゲームは、千隼をアイツらから奪った思い出のゲームだからなぁー』
「……。佑真さん、覚えてたんだ……」
自分だけだと思っていた俺は嬉しくて、思わず顔を綻ばせてしまう。
(あっ……)
顔が見えないと分かっていながらも、俺は慌てて口元を隠すように手を当てた。
『あっ、ひでぇー。千隼はオレが忘れたと思ってたんだな』
「だ、だって……」
『忘れるわけないだろ。このゲームで勝ったから、今こうやって千隼と遊べているわけだし。そういや、あいつらからまだ連絡とか来んの?』
「あ、いや……今はないよ」
試合以降、何度も元チームメイトからゲームに誘われたが、俺はやんわりと断り続けた。
すると、いつのまにか俺に対しての誹謗中傷が、掲示板などへ書き込まれるようになった。
そんな状況に怒った佑真さんは、俺が気付かないうちに色々動いてくれて、嫌がらせはぴたりとなくなった。
『まさか、今でもオレの知らないところで何かされてないだろうな?』
「されてない! されてない!」
(本当に優しいな、佑真さんは……。こんな俺のこと心配して、助けてくれて……)
自分なら黙ってただ我慢するところを、佑真さんは自分のことのように怒ってくれる。
そんな佑真さんの優しさに、俺はまた、胸がいっぱいになる。
(いつか……ちゃんとあの時のお礼を伝えたいな……。でも……)
そう頭では分かっていても、行動を起こせない俺は自分自身が嫌になる。
マイクをミュートに切り替えた俺は、パソコンマウスの脇に置いていたコーヒーカップを手に取ると、そっとコーヒーに口をつけ、静かに息を吐き出した。
『ならいいけどさー。それより、待たせてごめんな。また配信長引いちゃってさー。千隼だって早くやりたかっただろ? 先に始めててもよかったんだぜ。千隼も最近忙しいだろ?』
佑真さんと定期的にゲームをする仲になって少し経った頃、佑真さんはゲームの実況配信を始めた。
ゲームがうまいだけでなく、佑真さんの明るくて人を惹きつけるトークやリスナーとのやりとりが、どんどん人気を加速させた。
(ああ、俺……佑真さんのこと……)
今思えば出会ったときからだが、佑真さんは俺の最推しとなった。
俺はそんな佑真さんの少しでも役に立ちたいと、自分から佑真さんの動画編集などを手伝いたいと名乗りをあげ、独学でデザインや映像系の勉強を始めた。
そのおかげで、最近は佑真さんを通じて様々な人から編集などの仕事を依頼されることが増えてきた。
俺はマイクのミュートを解除して、コーヒーカップをソーサーに置き直した。
「ううん、ちょうど落ち着いたところ。それに、俺も佑真さんとやりたかったんだ」
『オレと?』
「うん」
『オレと……だけ?』
「う、うん……?」
『はぁー……』
佑真さんの深い溜息がヘッドフォンから聞こえ、俺は途端に不安が募った。
「えっ、何? 俺、何か気に障ること言った?」
『違う、違う。こっちの話だから気にしないで』
「……うん」
(ああ……。こんな時、顔を見て表情とか分かれば不安にならないのになって思っちゃうのは、俺の勝手なワガママだな……。最近、声を聞けば聞くほど……)
『お、更新データのダウンロード終わったな。じゃあ、始めるか』
『……。てか、あれ? もしかして、千隼の誕生日って明日?』
「えっ……?」
突然佑真さんに言われ、俺はパソコン画面に表示されている日付を確認すると、たしかに明日は自分の誕生日だった。
「ほんとだ……。でも、なんで俺の誕生日って分かったの?」
佑真さんに一度も誕生日を教えたことがなかったため、何故分かったのか俺は不思議に思う。
『いや、このゲームのアカウント名の数字の並び見て、もしかしてと思って……。てか、なんで早く言わないんだよ』
「えっ? なんでって言われても……」
『あー……。いや、オレがそもそも聞かなかったのがいけなかったわ……。よし、じゃあ明日オレがそっち行くわ』
「えっ? そっちって、どこに?」
『決まってるだろ。千隼のとこにだよ』
「えっ……?」
『当たり前だろ。せっかくの千隼の誕生日なんだし』
突然言い出した佑真さんに、俺は頭が混乱してしまう。
(佑真さんが会いに来る……? 誕生日だから? えっ……?)
ヘッドフォンから聞こえてくるいつもと同じ心地の良い佑真さんの声に、俺はそっと胸をなで下ろした。
「う、うん。楽しみだね」
(よかった、いつもの佑真さんだ)
つい先日、佑真さんに会いたくないのかと聞かれ、きちんと返事ができなかった俺は、佑真さんがどう感じたか不安になっていた。
俺は平静を装いつつ、ボイスチャットをしながら目の前のパソコンでゲームを起動させた。
(でも、嬉しいな……。あの時のゲームだって覚えていてくれて……。いや、別に佑真さんにとって、そんな記憶に残る出来事でもないか……。単に前からやってたってだけで……)
『千隼をもらう』
深い意味はないと分かっていながらも、佑真さんの言葉を俺は今でもはっきりと覚えている。
たった一週間しか練習時間がなかったにも関わらず、チームメイトとの試合結果は圧倒的な差で、佑真さんと俺の勝利だった。
佑真さんの大胆かつ的確な状況判断力と、冷静に佑真さんの指示をこなす俺との相性は抜群だったからだった。
『このゲームは、千隼をアイツらから奪った思い出のゲームだからなぁー』
「……。佑真さん、覚えてたんだ……」
自分だけだと思っていた俺は嬉しくて、思わず顔を綻ばせてしまう。
(あっ……)
顔が見えないと分かっていながらも、俺は慌てて口元を隠すように手を当てた。
『あっ、ひでぇー。千隼はオレが忘れたと思ってたんだな』
「だ、だって……」
『忘れるわけないだろ。このゲームで勝ったから、今こうやって千隼と遊べているわけだし。そういや、あいつらからまだ連絡とか来んの?』
「あ、いや……今はないよ」
試合以降、何度も元チームメイトからゲームに誘われたが、俺はやんわりと断り続けた。
すると、いつのまにか俺に対しての誹謗中傷が、掲示板などへ書き込まれるようになった。
そんな状況に怒った佑真さんは、俺が気付かないうちに色々動いてくれて、嫌がらせはぴたりとなくなった。
『まさか、今でもオレの知らないところで何かされてないだろうな?』
「されてない! されてない!」
(本当に優しいな、佑真さんは……。こんな俺のこと心配して、助けてくれて……)
自分なら黙ってただ我慢するところを、佑真さんは自分のことのように怒ってくれる。
そんな佑真さんの優しさに、俺はまた、胸がいっぱいになる。
(いつか……ちゃんとあの時のお礼を伝えたいな……。でも……)
そう頭では分かっていても、行動を起こせない俺は自分自身が嫌になる。
マイクをミュートに切り替えた俺は、パソコンマウスの脇に置いていたコーヒーカップを手に取ると、そっとコーヒーに口をつけ、静かに息を吐き出した。
『ならいいけどさー。それより、待たせてごめんな。また配信長引いちゃってさー。千隼だって早くやりたかっただろ? 先に始めててもよかったんだぜ。千隼も最近忙しいだろ?』
佑真さんと定期的にゲームをする仲になって少し経った頃、佑真さんはゲームの実況配信を始めた。
ゲームがうまいだけでなく、佑真さんの明るくて人を惹きつけるトークやリスナーとのやりとりが、どんどん人気を加速させた。
(ああ、俺……佑真さんのこと……)
今思えば出会ったときからだが、佑真さんは俺の最推しとなった。
俺はそんな佑真さんの少しでも役に立ちたいと、自分から佑真さんの動画編集などを手伝いたいと名乗りをあげ、独学でデザインや映像系の勉強を始めた。
そのおかげで、最近は佑真さんを通じて様々な人から編集などの仕事を依頼されることが増えてきた。
俺はマイクのミュートを解除して、コーヒーカップをソーサーに置き直した。
「ううん、ちょうど落ち着いたところ。それに、俺も佑真さんとやりたかったんだ」
『オレと?』
「うん」
『オレと……だけ?』
「う、うん……?」
『はぁー……』
佑真さんの深い溜息がヘッドフォンから聞こえ、俺は途端に不安が募った。
「えっ、何? 俺、何か気に障ること言った?」
『違う、違う。こっちの話だから気にしないで』
「……うん」
(ああ……。こんな時、顔を見て表情とか分かれば不安にならないのになって思っちゃうのは、俺の勝手なワガママだな……。最近、声を聞けば聞くほど……)
『お、更新データのダウンロード終わったな。じゃあ、始めるか』
『……。てか、あれ? もしかして、千隼の誕生日って明日?』
「えっ……?」
突然佑真さんに言われ、俺はパソコン画面に表示されている日付を確認すると、たしかに明日は自分の誕生日だった。
「ほんとだ……。でも、なんで俺の誕生日って分かったの?」
佑真さんに一度も誕生日を教えたことがなかったため、何故分かったのか俺は不思議に思う。
『いや、このゲームのアカウント名の数字の並び見て、もしかしてと思って……。てか、なんで早く言わないんだよ』
「えっ? なんでって言われても……」
『あー……。いや、オレがそもそも聞かなかったのがいけなかったわ……。よし、じゃあ明日オレがそっち行くわ』
「えっ? そっちって、どこに?」
『決まってるだろ。千隼のとこにだよ』
「えっ……?」
『当たり前だろ。せっかくの千隼の誕生日なんだし』
突然言い出した佑真さんに、俺は頭が混乱してしまう。
(佑真さんが会いに来る……? 誕生日だから? えっ……?)


