胸元で握りしめていた手に俺は必死に力を込めたが、緊張して声が上擦ってしまう。
 
 すると、頬が熱くなり、身体全体に血が巡り始めたような火照りと足の震えを感じた。
 
 あの時の感覚を思い出しそうになり、俺は必死に抑えるようと握りしめた手へ、さらに力を込めた。
 
「そんなの決まってるだろ。千隼(ちはや)に会いたかったからだ」
 
(……。会いた……かった……)
 
 迷いのない佑真(ゆうま)さんの真っ直ぐな言葉に、俺は思わず胸が締め付けられ、涙が溢れそうになる。
 
「千隼に会って、謝りたくて……ちゃんと伝えたかったんだ」
 
「俺に……会いに……」
 
 俺は自然と、佑真さんの言葉を口に出して繰り返していた。
 
(会いたかった……謝りたかった……?)
 
 もう一度、今度は心の中で佑真さんの言葉を繰り返すと、胸の奥底に抑えていた感情が取り止めもなく湧き上がってきた。
 
「……っ!」
 
(俺、バカだ……。佑真さんにここまでさせて……。なのに……)
 
「千隼……?」
 
(俺だって、ずっと言いたかった。会いたいって……! ずっと、ずっと……! けど……!)