「はい。今日の授業では班での意見出し、そして独自の文を作ってみましょう。机を移動してください」
相変わらずな騒がしさを保つクラスに泉谷も混ざるようになった。ぴょっこり飛び出た棘をしまい忘れたまま。
「泉谷!席近くてよかったな」
「まあ……そうかも」
「かもて、酷くね?」
慎重に、そして丁寧にその棘に触れるのは笹宮。
ハリみやと伝えた日の授業内交流で仲を深めたのは笹み……なんか似てんな。
声と動作の同時進行を邪魔しない程度の小声。それがダブルみやだった、せいか中々叱れなかった。
「おい、そこちょっとうるさい……」
ただ、教師として見逃してはいけない。そう思っていた思考を遮るようにあるものが視界に留まる。
手の腹で渦巻いたシルバーチェーン。
それを辿る指の先には少しおもちゃ味のあるイエローシルバーのリング。
「……生徒指導されたくなかったらしまっとけ」
そしてそれを見つめる顔に浮かぶは、毒が抜けるように緩んだ笑顔。
隠すようにポケットに手を突っ込んだ泉谷のその手つきは、焦っているにはあまりにも丁寧だった。
「ええ、てかなんか今日の海りん優しくね?そうゆうの見逃してくんないじゃん!」
「私語はそこまで。そして教師にあだ名はよろしくないですよ」
一部からのブーイングなど気にも留めず俺の指先は迷い惑いで教科書のページを捲った。
__海里先生。
流れるように過ぎた一日にため息も着く暇もなく、声をかけられて目を覚ませば夜は更けていた。
「まだ帰ってなかったのか。どうした?」
怖気づくかのようポケットを握りしめるその大きい手。
「没収するはずだったけど……なんだか私情を挟んでしまったよ」
泉谷の瞳に映る俺は少し老けていた。ただこいつを前にすると変わらないものが大きく目立つ。
「私情……でしたか。いいことを聞けました。ありがとうございます」
それは、こいつがちゃんと好きなものと向き合えている証拠。
「さて、俺も頑張るか。説得力ある大人にならなきゃ理不尽にも程があるもんな」
残された部屋で響く缶の開封音。静かな部屋が最近はなんだか、退屈に感じてしまった。変わらなくていい所ばかり変わっていくもんだな。
俺はまだ未発表の体育大会のプログラム表に手を伸ばす。
相変わらずな騒がしさを保つクラスに泉谷も混ざるようになった。ぴょっこり飛び出た棘をしまい忘れたまま。
「泉谷!席近くてよかったな」
「まあ……そうかも」
「かもて、酷くね?」
慎重に、そして丁寧にその棘に触れるのは笹宮。
ハリみやと伝えた日の授業内交流で仲を深めたのは笹み……なんか似てんな。
声と動作の同時進行を邪魔しない程度の小声。それがダブルみやだった、せいか中々叱れなかった。
「おい、そこちょっとうるさい……」
ただ、教師として見逃してはいけない。そう思っていた思考を遮るようにあるものが視界に留まる。
手の腹で渦巻いたシルバーチェーン。
それを辿る指の先には少しおもちゃ味のあるイエローシルバーのリング。
「……生徒指導されたくなかったらしまっとけ」
そしてそれを見つめる顔に浮かぶは、毒が抜けるように緩んだ笑顔。
隠すようにポケットに手を突っ込んだ泉谷のその手つきは、焦っているにはあまりにも丁寧だった。
「ええ、てかなんか今日の海りん優しくね?そうゆうの見逃してくんないじゃん!」
「私語はそこまで。そして教師にあだ名はよろしくないですよ」
一部からのブーイングなど気にも留めず俺の指先は迷い惑いで教科書のページを捲った。
__海里先生。
流れるように過ぎた一日にため息も着く暇もなく、声をかけられて目を覚ませば夜は更けていた。
「まだ帰ってなかったのか。どうした?」
怖気づくかのようポケットを握りしめるその大きい手。
「没収するはずだったけど……なんだか私情を挟んでしまったよ」
泉谷の瞳に映る俺は少し老けていた。ただこいつを前にすると変わらないものが大きく目立つ。
「私情……でしたか。いいことを聞けました。ありがとうございます」
それは、こいつがちゃんと好きなものと向き合えている証拠。
「さて、俺も頑張るか。説得力ある大人にならなきゃ理不尽にも程があるもんな」
残された部屋で響く缶の開封音。静かな部屋が最近はなんだか、退屈に感じてしまった。変わらなくていい所ばかり変わっていくもんだな。
俺はまだ未発表の体育大会のプログラム表に手を伸ばす。



