「今度…東京で母親の写真展があるんだ」

「へぇー?いつ?行くの?」

「…ついでに…俺の写真も飾られるんだ。
ミミに…見て欲しい…」

 東京へ行く約束をした後、テテのお母さんが写真展を開くから一緒に行こうと誘われた。

学校へ行く時のように自転車や電車を乗り、空港へ向かう。少し混み合う車内、僕は人より転んだりよろける事が多いらしくテテに出来るだけ寄り添い、テテの手が僕の腰にも手を添えられていた。くすぐったいし、テテの熱を思い出してしまう…

「……2人乗り…とか…好き…」

「……え?」

「ミミとこうやってくっつくの、好き…」

「……ああ…僕だって…
2人乗りに関しては…
ずっと一緒にいたいからだし…」

「……普通じゃないんだけど…」

「……え?」

「…触りたくて…一緒にいたくて…
くっついてたくて…
…誰にもこんな気持ちになった事無いし
普通ならないでしょ…こんなに…」

「……」

こんな電車の中で、隣に立つ知らないおじさん達にももしかしたら聞かれてるかも。
混み合ってる中で寄り添う僕達は自然だけど、もっと…不自然に見られてもしがみつきたくなるし、抱きしめたら涙が出ちゃうかも。

「……ミミ…?……泣いてる…?」

「…泣いてない。…けど泣きそう…」

頭がテテの両腕で包まれる。
テテと会う前、田舎は移動時間が長くて僕の人生は無駄な時間が多いと思っていた。その時間を、テテが…とっても特別な時間にしてくれたんだ。
僕の人生で貴重な、心が愛で溢れ…踊り動く時間。

不自然に抱きしめられていても、僕は顔が隠れてるし…テテがいいなら…ずっと、降りるまでこのまま。テテの温もりにしがみついた。


 銀座のギャラリー、目的地到着。

「俺、後で見る…ミミ、先に見て来て?」

着いた途端に、ソワソワしだすテテ。

「……いいけど…後から来る?
僕、早く見たいから行っちゃうよ?」

「……うん。恥ずかしいから後から行く…」

…恥ずかしい…?テテが恥ずかしがるのは相当な事…写真、初めて人に見せる事は撮る人からしたら恥ずかしいのか…そんなあどけない挙動も可愛いと思うし僕まで緊張してしまう。

「わかったよ。お母さんの写真見て、
テテの写真も探してくる…」

人は思ったより多くて、写真を眺める人達をすり抜けながらテテの母親が撮った写真を見て進む。自然の美しさ、色の強さが強烈だった。
進むに連れて周りの人達の視線が僕へ…何となく感じた。
不思議に思いながらも進むと、写真を飾る雰囲気、壁紙が変わった。
都会の風景や空がいくつか並び、続いて僕も見た事がある自然の中の風景がいくつか並んでいた。
…テテが撮ってきた、見てきた、世界だ。
どちらもモノクロで都会の写真は冷たく感じる。
…これじゃ…淋しさが伝わるのは気のせい?テテの気持ちが…表れてそう。何となく見た事がある、公園だったり山だったりの写真はモノクロでも温かい感じ。
更にその先へ進むと景色の写真の倍以上の大きさ、ポスターくらいの大きな写真は………僕だった。
僕がこっちを見て凄い笑顔で笑ってる。テテにこんな緩んだ顔してるんだ…僕。

…これを1人で見せるとか、ズルイ。泣くぞ。僕。1人で…
暫く自分の幸せそうな顔を見つめて、この写真だけ下に題名がある事に気付く。

〔愛する息子の愛する被写体〕