今は何時だろう?
スマホを見れば解決できそうな疑問をそのままにして、先行くアキラ先輩のシマシマを追う。やっぱりあのリュックには何も入っていない気がする。軽々と飛び跳ねるシマシマは、どこまで行ってもシマシマ。
ていうか、横断歩道って、なんでシマシマなんだろう?
アキラ先輩のペースに引っ張られて、すっかり忘れていた。誰も教えてくれない答えを知りたいな。
公園を後にした俺は、「カラオケ行きたい!!」というアキラ先輩に引っ張られながら歩いていた。得意な歌は演歌らしい。意外すぎるチョイスにすこしだけ笑いながら、俺なら何を歌うか考えた。俺はロックバンドが好きだな。
あれ、待って。アキラ先輩ってお金を思ってないじゃん。もしかして、カラオケ代も俺がお金を支払うのか? そんなにお金があったっけ?
いろんな考えが頭を巡り、モヤモヤっとしていたとき、背後から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「神崎!」
「お、沢渡じゃん」
驚いたような表情の沢渡は、ここまで走ってきたのか肩で呼吸をしている。
「沢渡じゃん、じゃないよ! 大丈夫か!?」
「え?」
沢渡はアキラ先輩の存在に気づいていないのか、まったく見向きもしない。
勢いよく俺にタックルして、そのまま体を前後に揺らした。
「なんかすげぇ独り言を言いながら歩いてる人がいるって話題になってるよ!? 大丈夫!? やっぱりあの衝撃で頭がおかしくなってんじゃないの!?」
すごい剣幕で沢渡は俺の体を揺らし続ける。
揺らされながらアキラ先輩を見ると、微笑みながら謎のピースを浮かべていた。
「てか、沢渡。もう学校終わったん?」
「時間もよくわかってないのかよ! そうだよ、学校終わったよ!」
「部活は? サッカー部もないん?」
「部活どころじゃないから、休んで神崎を探してたんだって!」
沢渡は大きな溜息をついて「でも見つかってよかった」と呟き、俺の肩を強く掴む。「帰るよ」と言うから「待って、先輩が」と言って引き止める。
しかし、どこを見渡しても、アキラ先輩の姿はなかった。



