いちごチョコレートチーズケーキ抹茶フラペチーノ。トッピングにバニラアイス。
 このカフェに来るのは初めてだったけれど、ほんとうにそんな名前のメニューがあって驚いた。俺は悩みながらも普通のカフェオレ注文し、両手にカップを持って外に出た。
 入り口の前に置かれていたベンチに座っていたその人は、俺が持つフラペチーノを見て目を輝かせる。キラキラという表現が適格すぎるくらい、目をキラキラさせていた。
「はい、どーぞ」
「ありがとうなぁ、神崎!!」
 わーいと言いながらフラペチーノを受け取り、嬉しそうにストローを口にくわえる。
 まるで大型犬が尻尾でも振っているかのような様子の彼に、なんとなく俺は呆れたような溜息が漏れた。急に肩を叩かれて、連れてこられたこの場所。だいたいこの人について、同じ学校の人、という情報しかないのに、俺の中ではもう警戒心が解けていた。
 しばらくふたり並んで飲んでいると、店先に現れた他校の女子が俺の方を見て「えっ!?」と声を上げた。
 知り合いかと思ったけれど、そうではない。なら隣に座るこの人か?
 疑問に思いながら視線を横に向けると、女子は「フラッペ、浮いてる!?」と言ったのだ。でもすぐにその子は目を擦って「いや、そんなわけ」と呟いて、店内に入っていく。
 店先には、また何もなかったかのような空気が流れ始めた。
 どういうこと?
 拭えない疑問を抱いたまま、隣に視線を向ける。嬉しそうに微笑んだまま、一生懸命に中身を吸っていた。
「……ところで、君の名前はなんですか?」
「え、オレのこと知らない?」
「知りませんけど」
「ハーッ!!」
 わざとらしく両手を叩き、そのまま天を仰ぐ。
 真っ青な空に浮かぶ白い雲。ゆったりと流れる風を感じていると、また肩に衝撃が走った。
「オレ、3年のアキラ」
「……先輩だったんですか」
「気づいてなかったの!?」
 この人——アキラ先輩は、すこしだけ残っていたフラペチーノの飲み切り、「ごっちそーさま!」と言って両手を合わせた。
 俺も手に持っていたカフェオレを一気に流し込む。ぬるくなったカフェオレは微妙だな……なんて考えながら、先輩が持っていた容器を手に取り、ゴミ箱に向かう。
 ていうか——フラッペ、浮いてるって何?