真夏の埼玉県神川町は、多治見と大差ない猛暑である。山の中にあるグランピング施設は、市街地と同様全然涼しくない。それでも、グランピングに誘ってくれた陽キャ達は、「暑いね」と言いながら暑さなんて気にせずはしゃいでいる。
「ピザ、焼くよー!」
俺が呼ばれた。生地は先程から寝かせてある。歪な円形に広げ、各自好きな具材をトッピングしてもらい、いざピザ窯に入れようとしたとき、俺は自分のポンコツ具合に気づいた。
ピザ窯って、オーブンじゃないじゃん!
そこは、陽キャの気遣いが一枚上手だった。
「スタッフ呼んできたよ!」
俺は、これまで避けていた陽キャの優しさに感謝した。しかし、呼ばれて来たスタッフを見て、我が目を疑った。それは、滝本や陽依も同様だった。人手が足りないから手伝ってほしいというのは、このことだったのか?
「閑真!」
「しーちゃん!」
綺麗な顔をマスクで隠し、大きな手と細長い指をニトリルグローブで保護しても、ビジュ良いじゃん。彼は気まずそうに憂いて俯く。気を遣い過ぎて距離を置くモードに入っている。
「知り合い?」
「もしかして、教育学部の家庭科王子? 段田が嫌ってた」
「段田の場合、事情が事情じゃん。落ち着くまで見守ろうよ」
この場にいない段田の名前が出たが、ゼミ生と違って陽キャは段田を非難しない。そんな会話の最中も、閑真はピザ生地を、雪かきスコップみたいな道具に乗せてピザ窯に入れる。
「しーちゃん、ここのスタッフ?」
マスクの下で大きく一息ついた閑真に、陽依が大きな胸を押しつけて絡む。陽依はその気が無いので、嫌味も無い。が、閑真は一度頷いただけで後は黙ってしまう。
「暑いだろ? 休めば」
滝本が、キャンプ用の椅子を勧めるが、閑真は首を横に振って断ってしまう。冷たい飲み物も断ってしまう。
「タッキー、王子様困ってんじゃん。スタッフは客の持ち物を使ったり、何かもらっちゃ駄目なんじゃないの?」
陽キャの指摘に、閑真が頷いた。
「ねえねえ、王子様よ。バイトが終わったら、あんたもおいでよ。もしかして、それも難しい?」
閑真は、首を傾げた。脈アリかも。
窯の中で生地の向きを変え、焼き上がったピザは、オーブン焼きと違って炭の香りがする。
「焼き立て、美味い!」
陽キャのテンションがさらに高くなる。アルコールでなくソフトドリンクで済むところが真面目だ。
「生地、余ってるけど、どうする?」
あと2枚分のピザ生地が手つかずだ。この暑さだと、過発酵してしまう。
「目ぼしい材料は使っちゃったからなー」
ピザソースとウインナーも、照り焼きチキンとマヨネーズも、生のトマトとガーリックレモンも、使ってしまった。
ちょっと待ってて、と言うような身振り手振りをして、閑真が事務所の方に行ってしまった。しばらくして、彼にしては猛ダッシュで戻ってくる。彼が持ってきたのは、板チョコ、マシュマロ、蜂蜜。
慣れた手つきでピザ生地を綺麗に円く広げ、マシュマロを散らしてまだ冷たい板チョコを手で割ってマシュマロの隙間に入れてゆく。もう1枚の生地には、ピザチーズと、誰も酒を飲まないのに誰かが買ってきたワインのお供セットを乗せる。お高いチーズとベーコン画少しずつ。その2種類のピザを窯に入れ、焼き上がったのは、ひとつがマシュマロとチョコレートが溶けた熱々のピザ、もうひとつがチーズたっぷりのピザ。チーズたっぷりのピザに蜂蜜をかける。
「スモアとクワトロフォルマッジ!」
陽キャが気づき、閑真が頷いた。なるほど、マシュマロとチョコレートのスモア風スイーツピザと、数種類のチーズに蜂蜜をトッピングしたクワトロフォルマッジ風だ。
「え、凄い! 凄い!」
「家庭科の先生じゃなくて、お店やりなよ!」
「でも、野外学習でピザ焼いたら、生達大喜びだよ!」
「先生ー、俺達も野外学習に連れてって下さーい」
「うちら生徒じゃないじゃん」
陽キャの中で、閑真の株が爆上がりだ。俺はやっぱり閑真に勝てない悔しさと、閑真の良さに気づいてもらえた安心が交ざりあって、複雑だ。
閑真は黙ってぺこぺこ頭を下げ、事務所の方に行ってしまった。しかし、すぐに戻ってきた。マスクを外して。
「……ここに泊まれって、伯父と伯母が」
それを聞いた陽キャ達が、沸いた。
「大歓迎!!」
「ピザ、焼くよー!」
俺が呼ばれた。生地は先程から寝かせてある。歪な円形に広げ、各自好きな具材をトッピングしてもらい、いざピザ窯に入れようとしたとき、俺は自分のポンコツ具合に気づいた。
ピザ窯って、オーブンじゃないじゃん!
そこは、陽キャの気遣いが一枚上手だった。
「スタッフ呼んできたよ!」
俺は、これまで避けていた陽キャの優しさに感謝した。しかし、呼ばれて来たスタッフを見て、我が目を疑った。それは、滝本や陽依も同様だった。人手が足りないから手伝ってほしいというのは、このことだったのか?
「閑真!」
「しーちゃん!」
綺麗な顔をマスクで隠し、大きな手と細長い指をニトリルグローブで保護しても、ビジュ良いじゃん。彼は気まずそうに憂いて俯く。気を遣い過ぎて距離を置くモードに入っている。
「知り合い?」
「もしかして、教育学部の家庭科王子? 段田が嫌ってた」
「段田の場合、事情が事情じゃん。落ち着くまで見守ろうよ」
この場にいない段田の名前が出たが、ゼミ生と違って陽キャは段田を非難しない。そんな会話の最中も、閑真はピザ生地を、雪かきスコップみたいな道具に乗せてピザ窯に入れる。
「しーちゃん、ここのスタッフ?」
マスクの下で大きく一息ついた閑真に、陽依が大きな胸を押しつけて絡む。陽依はその気が無いので、嫌味も無い。が、閑真は一度頷いただけで後は黙ってしまう。
「暑いだろ? 休めば」
滝本が、キャンプ用の椅子を勧めるが、閑真は首を横に振って断ってしまう。冷たい飲み物も断ってしまう。
「タッキー、王子様困ってんじゃん。スタッフは客の持ち物を使ったり、何かもらっちゃ駄目なんじゃないの?」
陽キャの指摘に、閑真が頷いた。
「ねえねえ、王子様よ。バイトが終わったら、あんたもおいでよ。もしかして、それも難しい?」
閑真は、首を傾げた。脈アリかも。
窯の中で生地の向きを変え、焼き上がったピザは、オーブン焼きと違って炭の香りがする。
「焼き立て、美味い!」
陽キャのテンションがさらに高くなる。アルコールでなくソフトドリンクで済むところが真面目だ。
「生地、余ってるけど、どうする?」
あと2枚分のピザ生地が手つかずだ。この暑さだと、過発酵してしまう。
「目ぼしい材料は使っちゃったからなー」
ピザソースとウインナーも、照り焼きチキンとマヨネーズも、生のトマトとガーリックレモンも、使ってしまった。
ちょっと待ってて、と言うような身振り手振りをして、閑真が事務所の方に行ってしまった。しばらくして、彼にしては猛ダッシュで戻ってくる。彼が持ってきたのは、板チョコ、マシュマロ、蜂蜜。
慣れた手つきでピザ生地を綺麗に円く広げ、マシュマロを散らしてまだ冷たい板チョコを手で割ってマシュマロの隙間に入れてゆく。もう1枚の生地には、ピザチーズと、誰も酒を飲まないのに誰かが買ってきたワインのお供セットを乗せる。お高いチーズとベーコン画少しずつ。その2種類のピザを窯に入れ、焼き上がったのは、ひとつがマシュマロとチョコレートが溶けた熱々のピザ、もうひとつがチーズたっぷりのピザ。チーズたっぷりのピザに蜂蜜をかける。
「スモアとクワトロフォルマッジ!」
陽キャが気づき、閑真が頷いた。なるほど、マシュマロとチョコレートのスモア風スイーツピザと、数種類のチーズに蜂蜜をトッピングしたクワトロフォルマッジ風だ。
「え、凄い! 凄い!」
「家庭科の先生じゃなくて、お店やりなよ!」
「でも、野外学習でピザ焼いたら、生達大喜びだよ!」
「先生ー、俺達も野外学習に連れてって下さーい」
「うちら生徒じゃないじゃん」
陽キャの中で、閑真の株が爆上がりだ。俺はやっぱり閑真に勝てない悔しさと、閑真の良さに気づいてもらえた安心が交ざりあって、複雑だ。
閑真は黙ってぺこぺこ頭を下げ、事務所の方に行ってしまった。しかし、すぐに戻ってきた。マスクを外して。
「……ここに泊まれって、伯父と伯母が」
それを聞いた陽キャ達が、沸いた。
「大歓迎!!」


