さよならの記憶写真館

ヒューマンドラマ

さよならの記憶写真館
作品番号
1768337
最終更新
2025/12/10
総文字数
0
ページ数
0ページ
ステータス
未完結
いいね数
0
 私の願いは、ただ一つ。夫と、私の妹が結婚すること。

 32歳と2ヶ月。私は病によって、この世を去った。
 26歳で夫と結婚し、二児をもうけ、家族に看取られて最期を迎えた。
 幸せな人生だった。……私はね。

 だけど夫は4歳と2歳の娘を育てる責任があり、子ども達は母を恋しがる年頃。
 私の妹は自分の人生より、私が残した家族を守ろうとしてくれている。
 自分の気持ちを押し込めて。

 夫、妹、私は幼馴染。しっかり者の妹に、頼りっきりだった夫と私。
 それは大人になってからも同じで、私の病気が発覚して泣いていた夫の背中を、優しくさすってくれたのは妹だった。

 妹は夫に、好意を抱いている。いつからだったなんて分からない。同級生だった二人は、私が知らない時間を共に過ごしてきたのだから。

 妹と夫が結婚するべきだった──。

 その未練により、私の魂は一軒の写真館に辿り着いていた。

 記憶写真館。
 私の悔いに関連する写真が貼り出された、異質な空間。
 そこを管理する主人と、助手だと名乗る黒猫のクロ。
 ここは悔やみながら死を迎えた、彷徨える魂が辿り着く場所。
 時間を巻き戻し、記憶写真を修正出来る、不思議な写真館。
 時間の巻き戻しには約束があった。


1.期間は成仏する49日間
2.生まれた時に巻き戻し、一から始めないといけない
3.時間の流れを速めるリモコンで、時を進められる
4.私は、過去の私に関与は出来ない
5.過去を変えたい場面だけ、過去の私を乗り移り、自分の意思で行動が取れる
6.過去を変えられるのは、写真に写っている場面だけ
7.過去の自分に乗り移ること、感情の揺れは、私の魂に大きな負担がかかる。極限を過ぎると魂は砕け散り、生まれ変わることができなくなる


 過去を変えることは当然未来にも繋がっていくことであり、私の子ども達は妹の子に修正される。
 四人で写る、家族写真。そこに居るのは私ではなくなってしまう。

 覚悟を決めて手を伸ばしたのは、一枚の写真。制服姿に身を包む、過去の夫と私。
 年頃故に離れてしまった私達が、同じ時を過ごすキッカケとなった日の、思い出写真。

 あの日、夫と会わなければ未来が変える一つの因果になるかもしれない──。

 こうして始まる、手探りの模索。四十九日間の彷徨い。
 そして、32年間の人生を否定する虚無の旅が。

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