サークル合宿に飛び入り参加した謎の後輩に、なぜか執着されている


「それで?蓮くんは?」

明日香さんに尋ねられてキョトンとする蓮。

「蓮くんは、彼女とかは……?」
「いないです。いたことないです」

明日香さんの目に、ブワッと火が灯った。いや、明日香さんだけじゃない。彩葉も海未も、目が燃えている。
何があった。

「彼女どころか、友達も、いないです。学校、上手く馴染めなくて」

長いまつ毛を伏せ、目に影が落ちる。
落ち込んだ様子さえ、絵みてぇ。
イケメンすげぇな。

「まあまだ5月だし!始まったばっかじゃん?」
「そうそう!それに蓮くんはもうこの『映画同好会』の仲間なんだし!」
「私たちとか、伊織先輩を頼ったらいいよ!」
「は?」
「「そうそう!」」

なんで俺?
てか本当、女子3人仲良いな。
打ち合わせしてきたかのように、息ぴったりに蓮を励ます。

「あ、そうだレンレン、LINE教えてよ」
「レンレン?」
「そーだった!蓮、俺らのLINEグループあるんだよ!入って!」

明日香さんの突然の名付けは華麗にスルーして、圭太もスマホを取り出す。

「俺が招待するから、後でそれぞれ蓮を友だち追加しといて」
「「「はーい」」」

言われるがままにスマホを取り出して、LINE交換をする蓮。
圭太の明るい声に流されて、さっきまでの暗さは消えて、今は少し頬が赤い。

「…ありがとう、ございます」
「蓮くん、そこは、『よろしくお願いします』でいいんだよ。僕もメンバーが増えて嬉しい!年も近いし、仲良くしてね」
「あ、はい!千冬…さん!」
「ええ〜?千冬、早速、先輩風吹かすじゃん?まあ部長の俺が1番頼りになるから、何かあったら俺に言って!」
「2人に言えない相談は、俺が聞くよ」
「圭太さん、マキさん…、はい!ありがとうございます!」

ニカっと、綺麗な白い歯を見せて無邪気に笑う蓮。
俺より背も高いし、すっげぇイケメンだけど
、こうやって笑ってると、やっぱり年下なんだなと思う。
なんなら大学生よりもっと子供っぽく見える気もするけど…、まぁ1年生なんてそんなもんか。


ちょうどいい温度になったお好み焼きを口に運ぶ。

2年前になんとなく入ったサークルだったけど、メンバーはいい奴ばっかだ。


…居心地、いいな。


みんなのやりとりを見て、誰にも気付かれないように、ちょっと口の端を上げた。









「はぁ〜食べた〜!あ、肉まんだ!」
「圭太先輩、まだ食べるんですか?」
「あ、私買い物したい!」
「私も!商店街見て回りたいです!」
「豚まんと肉まんの違いって知ってる?」

好き勝手言っているみんなの声を聞いて、千冬がスマホで時間を確認する。

「自由行動にしましょう。夕方には天王寺まで移動しますから、2時間後にここに集合です」
「「「はーい」」」

元気よく返事して、バラバラと解散する。
千冬に旗とか持たせてやった方がいいかもな。旅行会社のガイドさんが持ってるみたいな。
…いや、ピンク頭がいい目印になってるからいっか。


「伊織さん、手」
「あ?」
「手、つなご?」
「…」

いつのまにか横にいた蓮。
疑問文に聞こえたけど、答えるより先に手は握られている。
ま、いいか、別に。

すると、ピンクの髪をふわっと跳ねさせながら千冬が駆け寄ってきた。

「蓮くん!僕とアメリカ村まで行ってみない?伊織先輩も一緒に……」

千冬が俺と蓮の繋がれた手を見て、一瞬黙る。
そして、優しく手を解く。

「……もう、大学生が手繋いで買い物なんて、恥ずかしいですよ」

俯いているせいか、心なしか顔が暗い。

ベルトで散歩よりはマシだから、俺は気にしねぇけど。
まぁ、一緒に歩く人からしたら恥ずかしいか。

「さ、行きましょう!」

顔を上げた千冬は、いつもの可愛らしい顔で柔らかく笑った。











「あー、なんか雰囲気あるな」
「道頓堀も賑やかでしたけど、こっちはこっちで、また違った賑やかさですよね」
「あ…、」
「あ、蓮くん、あの古着屋気になった?僕も!行こう、蓮くん!」
「うん…、はい!」

仲良く店を見て回るピンクと金の頭。
カラフルな壁画や、派手なアート、個性的な古着屋なんかが並ぶこの通りに、2人はよく馴染んでる。
髪色もさながら、やっぱ顔面か?
むしろ俺の方が浮いてる気ぃすんな…。

「千冬さん、これ絶対似合います!」
「え、ほんと?」
「あとこれも!その髪色もめっちゃ似合ってるし!」
「!、蓮くん〜!なぜかみんな触れてくれないから、ちょっと不安だったんだよー!ありがとっ!」
「そうなんですか?俺は好きです!」
「ふふっ。あ、これは蓮くんに似合うよ、絶対!」

女子会?いや、子犬の戯れ?
店の中で親睦を深める2人はいいけど、周りに少しずつギャラリーができてきてる。主に女性の。
俺はギャラリーの後ろで、自分用のピアスを眺めることにする。
無関係のフリをしよう。

「僕ちょっと試着してこよっと」
「待ってます!」
「ありがと!」

何着か服を片手に試着室に消えた千冬を見送った蓮が、俺に声をかけた。

「伊織さん、ピアス開いてるの?」
「あ?ああ、ここな」
「ほんとだ、知らなかった…」

髪を耳にかけて見せる。
右に3箇所、左に1箇所。
右耳は、1つは軟骨に開いてる。これはマキさんが開けてくれたやつ。

「俺も、開けようかな…」
「いいんじゃねぇの?お前ならなんでも似合うだろ」
「ほんと!?」

満面の笑み。似合うって言われただけでそんな嬉しいのかよ。
店内のスポットライトに照らされた金髪も、透明感があって、コイツの笑顔を余計に美しく引き立てている。

「てか、服は?お前は試着しねぇの?」
「あ、えっと…」

ピアスもそうだけど、服だって、こいつなら何を着てもブランド品かと思うくらいカッコよく着こなすだろう。
それどころか、多分半裸で歩いてても、コイツなら(ギリ)許されるだろうな。
…イケメンって得だよな。

「お金、なくって…」
「は?」
「合宿の交通費とかホテル代とかで、結構ギリギリで…、ちょっと、節約してる」

あー、そっか。
まだ1年生だしな。バイトもそんなできねぇだろうし。

「普通の大学生らしいところもあんだな」
「え?」
「いや、何でもねぇ」

「蓮くん、伊織先輩、お待たせしました!」

店の奥から買い物袋を持って出てきた千冬が、明るく声をかける。
着替えのせいか、ピンク髪が乱れてる。
軽く手で整えてやると、千冬が一瞬固まった。

「何」
「あ、いえ…。……ありがとう、ございます」

自分の髪をちょっとつまんで、礼を言う千冬。


声ちっさ。