_________覚えているのは、

肩を抱いて夜道を歩いてくれたこと。


凍えるほど寒い日だったはずなのに
それだけで暖かった。



「はい、着きましたよ。」

「ありがとぉ、ございますー、」

「お酒弱いなら無理に飲まなくてよかったのに」

「だって、間宮さんと、嬉しくてえ、」

「はいはい、ここ玄関なんでもう少し歩いてください。」


靴を脱いだ後、
肩を引き寄せられながら
冷たい廊下をゆっくり歩いたのを覚えてる。


「間宮さん、
もう、これ以上は無理なんですよ?わたし、」


無意識だったと思う。
気付いたら口から溢れて止めようもなかった。
どれもこれも、内緒にしてた本音。
間宮さんにも、自分自身にも。


「何がですか?」


あと一歩踏み込んで、自覚してしまうだけで、
もう二度と戻れなくなると分かっていたから。

気付かないふりをして、見ないふりをして
その方がきっと幸せだと、思ったから。

それなのに最後の最後の気の緩みでこんな、
お酒の力で、全てが台無しになる......

ああでも、もう、頭が回らない。


「好きに、なっちゃいます」


腰を下ろした柔らかなベットに背を預けたとき
何が何だか分からないまま、不意にこぼれた。



_________目が、合った。