これが恋なら、醒めないで



彼は
どこからどう見ても仕事ができて、
ほかの誰よりも周りに愛されている。


2歳年上の先輩。
同じ部署の、一番年の近いひと。
最初はただそれだけだった。


「花木さん」

「あ、はい」

「明日の件、大丈夫ですか?」


教育担当は別の先輩だったから
特別毎日話すような関係ではなかったけど、
新卒一年目の私を見捨てることなく
助けてくれるのはいつも間宮さんだった。

背中にまで目がついてるんじゃないかってぐらい
些細なことにもよく気が付いて、
優しい瞳で、心配してくれた。

王子様みたいなひと。
いや、王子様って柄ではないでしょと同期に言えばつっこまれそうだけど。
それでも私にとっては揺るぎない事実だった。
いつだって手を差し伸べて、すくいあげてくれる、
白馬に乗った王子様に見えた。


「他には何かありますか?」

「あ、えっと、チラシの印刷がまだできてなくて......」

「分かりました。やっとくので、データをチャットで送ってもらえますか?」


申し訳なくなるぐらい、結局何もかも手伝ってもらってしまった。

はじめてのコンペの前日。
周りがあまりにも忙しそうで、私なんかの相談に時間を作ってもらうなんて、申し訳なくなって。
何とかなると思ってたけど、やっぱり何ともならなくて、結局22時まで、会社にいる始末。


この日も彼は
泣きそうになっていた私に唯一気がついて、帰りがけに声を掛けてくれた。

申し訳なくて堪らなかったけど、嫌な顔ひとつしないで、残った仕事をあっという間に終わらせた。
ひとり焦っている私を落ち着かせるように、淡々と。


「まったく、教育担当は何やってるんですかね。」

「ご、ごめんなさい......」

「いや、花木さんは何も悪くないですよ。あの人が杜撰なんです、本当に。」


僕も新人のころ同じような目に遭いましたから、と苦笑いした。
恋に落ちるのなんて時間の問題だった。