「大したものが用意できなくてすまない。肉ならいくらでもあるんだけど、野菜は栽培を始めたばかりでさ」
獣人族を教会へと招いた。
後から合流した人数も含め。獣人族は三十七名。全員の腹を満たせるほどの野菜は――ない。
けど肉なら十分あるので、少量の野菜とたっぷりの肉で食事を作った。
さすがにこの人数分をレイアひとりで作るには無理がある。ということで、今日は万能クラフト料理だ。
ステーキ風に焼いた肉、そこに茹でた野菜を添えた単純な料理だけど、彼らは目を輝かせて食べてくれた。
「味のある肉、久しぶり。すっごく久しぶりだよ」
「そうか、よかった」
「美味い……美味い……」
味付けは塩のみ。それでもこんなに美味しいと言って食べてくれる。
「なぁ、おい……わしらのニンジン……」
「心配するなって、おじさん。明日、拡張した畑にニンジンを追加するって。だから泣くなよ」
「泣いてねぇよ。ぐすっ」
泣いてるじゃないか。
「ア、アルパディカ様の食事を奪ってしまったのか、オレたちは」
「奪ってはねぇよ。はぁ……たまには肉を食うか……」
バサラ――黒ヒョウのような獣人族の青年が慌てて俺を見て、それから突然、土下座をした。
「え、ちょ、バサラ?」
「志導様っ」
「いやだから、その様ってのは止めてくれよ」
「いいえ、志導様。どうか……どうか志導様に仕えさせてください!」
……へ?
「それいいね、兄ちゃん! 志導様、アタシもお仕えします!」
「お、俺も!」「私も!」「僕も!」
いやいやいや、待って。急にどういうこと?
「なんでもやります。なんでもお申し付けくださいっ」
「アタイ……志導様のためならなんだってします! も、もし、志導様が求めるなら……」
「パ、パティ!?」
俺が求める? 何を?
「ダメェーッ! ダメダメダメダメッ。そんなのダメ、絶対!」
声を上げたのはレイアだ。
レイアは俺が何を求めているのか知っているのか? それともパティが言わんとしたことが?
「ア、アンタは志導様の何なのさ」
「わ、私は……私は、志導くんの……」
いろいろ説明しづらいこともあるもんなぁ。
「レイアは友人で、命の恩人で先生でもあるんだ」
「志導くん……」
「はぁ、そうじゃねーんだけどなぁ」
「そうじゃないって、何がだよアッパーおじさん」
「自分の頭で考えな」
な、なんだよそれ。俺の頭で?
んー……?
「ふぅーん。その程度ってわけね」
「うにゃっ」
いったい二人で何の話をしているのやら。
「さぁ、食べ終わったら後片付けだ。この人数だ。さすがにこっちで全員分の片づけをするのは大変だからね」
「やります! アタシが志導様の分までやるよ!」
「だからその『様』っての止めてくれよ。なんかこう、恥ずかしいから」
「はい! 志導様っ」
人の話はちゃんと聞いて欲しい。
はぁ。
「それが終わったら子供たちは休んでいいよ。と言っても……」
ここにはベッドがない。そしてこの人数分のハンモクを作れるだけの糸も足りない、だろうな。
他所の家にあるベッドは、この前みたく体重をかければ壊れてしまうだろうし。
どうしよう。
そう考えていると、バサラが俺の前に歩み出た。
「志導様。我らは普段から硬い床の上で眠らされていた。気遣い無用だ」
「バサラ……」
でもそれってつまり、俺も鈴木と同レベルの環境しか用意してやれないってことで。
明日は……明日は絶対、床で眠らせるなんてことはしない!!
「志導様、お片付け終わったよ」
「ご苦労さん。じゃ、パティはもう休んでいいよ」
「え……ど、どうして? アタシはもっと志導様のお役に立ちたいのに」
「どうしてって、君も子供だろう。子供は寝る時間だぞ」
「こ、子供!? アタシが子供!?」
いや、どこからどう見ても子供だろう。
それとの獣人族の基準だと、大人なのか?
「そうだぞ、パティ。お前はもう寝ろ」
「兄ちゃんまで!?」
「そうね。パティはまだ子供だもの。寝た方がいいわよ」
「ぬうぅぅっ。わ、私だって大人だもん!」
と言っていたパティだったが、その十分後にはバサラの膝枕で眠っていた。
やっぱりまだまだ子供だな。
「いやぁ、この人数だとさすがに捗るな」
「元々故郷では畑を耕していたので、むしろ懐かしく思えたほどです、志導様」
「そっか。俺は本格的な畑仕事はやったことないし、助かるよ。ところでその志導様っていうのは、止めてくれないかな。なんか恥ずかしくなるからさ」
「……で、ではなんとお呼びすれば?」
普通に志導でいいんだけどなぁ。まぁバサラの年齢は二十一歳だというのは昨日聞いた。
間違っても『兄貴』とは呼ばれたくない。それこそなんか、鈴木みたいだからな。
志導さんも変だし、志導くんは……。うぅん。
「志導殿、でいいんじゃねえか?」
「シドードド」
「ユタ、かなり違うぞそれ」
「では、志導殿と呼ばせていただきます!」
「あ、うん。様よりはだいぶんマシだね」
ま、それでいいか。
獣人族は日の出と共に畑へ出て種まきを行った。
元々耕す予定じゃなかった範囲まで、アルパディカのルナさんが張り切って畝にしてしまったのだけれど。それも午前中までに全部の畝に種を撒き終えてしまった。
種、集められるだけ集めていてよかった。
「でもこれは耕しすぎじゃないかな、ルナさん」
「そうかしら? これでも足りないんじゃないかと心配しているのですよ。だって人が増えたのだもの」
「いや、増えたと言っても一時的なものだし」
彼らは痩せ細っている。聞くと、一日一食しか鈴木は用意してくれていなかったらしい。
鈴木たちのアジトはここからずっと西にあって、そこからあちこち連れまわされていたらしく体力も落ちている。
万全の状態だったら昨日のあの戦いは、結果が違っていたかもしれない。
故郷へ戻るにしても、まずは体力が回復してからだ。
彼らだってすぐにでも故郷へ戻りたいだろうが、体力の少ないうちは危険だ。せめてここでゆっくり休んでもらおう。
「たたたたたたたた、大変だよ志導様ぁ~~~~っ」
あぁ、ここにも様問題が。
慌てて駆けて来るパティの腕には、猫の姿になったレイアが抱えられていた。
「ねね、ね、猫がレイアに!? じゃなかった、レイアが猫に!!」
「うん、知ってる。レイアは――」
レイアはエリクサーポーションを追加で飲まなかったのか。
今朝、彼女からポーションの件で相談された。変身のこと、どうしようって。
彼らがいる間、ずっと飲み続けるのは残量的に心もとない。いっそ見せてしまった方がいいんじゃないかって答えたんだ。
彼らなら、きっとレイアの苦しみも理解してくれるはず。そう思ったから。
「私、太陽が出ている時間は猫の姿になる呪いを受けてるの」
レイアがパティを見上げ、そう話す。
なかなか隠すのは難しいもんな。本当の事、伝えるのだって勇気がいるはずだ。
でもレイアは――風見さんは強い女の子だから、大丈夫だって信じてるよ。
何かあれば、必ず俺がフォローするからさ。
「のろ、い……ええぇぇー!? レイアも実は獣人族だったのぉー!?」
何故そうなる?
獣人族を教会へと招いた。
後から合流した人数も含め。獣人族は三十七名。全員の腹を満たせるほどの野菜は――ない。
けど肉なら十分あるので、少量の野菜とたっぷりの肉で食事を作った。
さすがにこの人数分をレイアひとりで作るには無理がある。ということで、今日は万能クラフト料理だ。
ステーキ風に焼いた肉、そこに茹でた野菜を添えた単純な料理だけど、彼らは目を輝かせて食べてくれた。
「味のある肉、久しぶり。すっごく久しぶりだよ」
「そうか、よかった」
「美味い……美味い……」
味付けは塩のみ。それでもこんなに美味しいと言って食べてくれる。
「なぁ、おい……わしらのニンジン……」
「心配するなって、おじさん。明日、拡張した畑にニンジンを追加するって。だから泣くなよ」
「泣いてねぇよ。ぐすっ」
泣いてるじゃないか。
「ア、アルパディカ様の食事を奪ってしまったのか、オレたちは」
「奪ってはねぇよ。はぁ……たまには肉を食うか……」
バサラ――黒ヒョウのような獣人族の青年が慌てて俺を見て、それから突然、土下座をした。
「え、ちょ、バサラ?」
「志導様っ」
「いやだから、その様ってのは止めてくれよ」
「いいえ、志導様。どうか……どうか志導様に仕えさせてください!」
……へ?
「それいいね、兄ちゃん! 志導様、アタシもお仕えします!」
「お、俺も!」「私も!」「僕も!」
いやいやいや、待って。急にどういうこと?
「なんでもやります。なんでもお申し付けくださいっ」
「アタイ……志導様のためならなんだってします! も、もし、志導様が求めるなら……」
「パ、パティ!?」
俺が求める? 何を?
「ダメェーッ! ダメダメダメダメッ。そんなのダメ、絶対!」
声を上げたのはレイアだ。
レイアは俺が何を求めているのか知っているのか? それともパティが言わんとしたことが?
「ア、アンタは志導様の何なのさ」
「わ、私は……私は、志導くんの……」
いろいろ説明しづらいこともあるもんなぁ。
「レイアは友人で、命の恩人で先生でもあるんだ」
「志導くん……」
「はぁ、そうじゃねーんだけどなぁ」
「そうじゃないって、何がだよアッパーおじさん」
「自分の頭で考えな」
な、なんだよそれ。俺の頭で?
んー……?
「ふぅーん。その程度ってわけね」
「うにゃっ」
いったい二人で何の話をしているのやら。
「さぁ、食べ終わったら後片付けだ。この人数だ。さすがにこっちで全員分の片づけをするのは大変だからね」
「やります! アタシが志導様の分までやるよ!」
「だからその『様』っての止めてくれよ。なんかこう、恥ずかしいから」
「はい! 志導様っ」
人の話はちゃんと聞いて欲しい。
はぁ。
「それが終わったら子供たちは休んでいいよ。と言っても……」
ここにはベッドがない。そしてこの人数分のハンモクを作れるだけの糸も足りない、だろうな。
他所の家にあるベッドは、この前みたく体重をかければ壊れてしまうだろうし。
どうしよう。
そう考えていると、バサラが俺の前に歩み出た。
「志導様。我らは普段から硬い床の上で眠らされていた。気遣い無用だ」
「バサラ……」
でもそれってつまり、俺も鈴木と同レベルの環境しか用意してやれないってことで。
明日は……明日は絶対、床で眠らせるなんてことはしない!!
「志導様、お片付け終わったよ」
「ご苦労さん。じゃ、パティはもう休んでいいよ」
「え……ど、どうして? アタシはもっと志導様のお役に立ちたいのに」
「どうしてって、君も子供だろう。子供は寝る時間だぞ」
「こ、子供!? アタシが子供!?」
いや、どこからどう見ても子供だろう。
それとの獣人族の基準だと、大人なのか?
「そうだぞ、パティ。お前はもう寝ろ」
「兄ちゃんまで!?」
「そうね。パティはまだ子供だもの。寝た方がいいわよ」
「ぬうぅぅっ。わ、私だって大人だもん!」
と言っていたパティだったが、その十分後にはバサラの膝枕で眠っていた。
やっぱりまだまだ子供だな。
「いやぁ、この人数だとさすがに捗るな」
「元々故郷では畑を耕していたので、むしろ懐かしく思えたほどです、志導様」
「そっか。俺は本格的な畑仕事はやったことないし、助かるよ。ところでその志導様っていうのは、止めてくれないかな。なんか恥ずかしくなるからさ」
「……で、ではなんとお呼びすれば?」
普通に志導でいいんだけどなぁ。まぁバサラの年齢は二十一歳だというのは昨日聞いた。
間違っても『兄貴』とは呼ばれたくない。それこそなんか、鈴木みたいだからな。
志導さんも変だし、志導くんは……。うぅん。
「志導殿、でいいんじゃねえか?」
「シドードド」
「ユタ、かなり違うぞそれ」
「では、志導殿と呼ばせていただきます!」
「あ、うん。様よりはだいぶんマシだね」
ま、それでいいか。
獣人族は日の出と共に畑へ出て種まきを行った。
元々耕す予定じゃなかった範囲まで、アルパディカのルナさんが張り切って畝にしてしまったのだけれど。それも午前中までに全部の畝に種を撒き終えてしまった。
種、集められるだけ集めていてよかった。
「でもこれは耕しすぎじゃないかな、ルナさん」
「そうかしら? これでも足りないんじゃないかと心配しているのですよ。だって人が増えたのだもの」
「いや、増えたと言っても一時的なものだし」
彼らは痩せ細っている。聞くと、一日一食しか鈴木は用意してくれていなかったらしい。
鈴木たちのアジトはここからずっと西にあって、そこからあちこち連れまわされていたらしく体力も落ちている。
万全の状態だったら昨日のあの戦いは、結果が違っていたかもしれない。
故郷へ戻るにしても、まずは体力が回復してからだ。
彼らだってすぐにでも故郷へ戻りたいだろうが、体力の少ないうちは危険だ。せめてここでゆっくり休んでもらおう。
「たたたたたたたた、大変だよ志導様ぁ~~~~っ」
あぁ、ここにも様問題が。
慌てて駆けて来るパティの腕には、猫の姿になったレイアが抱えられていた。
「ねね、ね、猫がレイアに!? じゃなかった、レイアが猫に!!」
「うん、知ってる。レイアは――」
レイアはエリクサーポーションを追加で飲まなかったのか。
今朝、彼女からポーションの件で相談された。変身のこと、どうしようって。
彼らがいる間、ずっと飲み続けるのは残量的に心もとない。いっそ見せてしまった方がいいんじゃないかって答えたんだ。
彼らなら、きっとレイアの苦しみも理解してくれるはず。そう思ったから。
「私、太陽が出ている時間は猫の姿になる呪いを受けてるの」
レイアがパティを見上げ、そう話す。
なかなか隠すのは難しいもんな。本当の事、伝えるのだって勇気がいるはずだ。
でもレイアは――風見さんは強い女の子だから、大丈夫だって信じてるよ。
何かあれば、必ず俺がフォローするからさ。
「のろ、い……ええぇぇー!? レイアも実は獣人族だったのぉー!?」
何故そうなる?



