「はぁ……嫌だなぁ……この合言葉」
「え、嫌って、どういう内容なの?」
隷属の首輪を外すには、設定された合言葉を唱えるだけで外せる仕組みだった。
もちろん、その言葉を知っていなければ外す事はできない。無理に外そうとすれば激痛が全身を襲うと解析結果に出ていた。
その合言葉だが……さすが鈴木だなって内容だ。
レイアに耳打ちすると、彼女も苦笑いを浮かべた。
「手伝うわね」
「うん、頼むよ」
「なんでぃ。そんな変な言葉なのか?」
「まぁね。んっんっ――『天下無双、無敵の究極アルティメット鈴木尚人』」
兄貴の首輪に触れた状態で合言葉を口にすると、隷属の首輪の留め金がシャキっと音を立てて開いた。
たったこれだけで首輪が外れたのだ。
「は、外れた……本当に外れた!?」
「ぶはっ。な、なんちゅー合言葉だ。確かにこいつぁ、唱えたかねぇよな。ぶわっはっはっは」
「笑ってないでアッパーおじさんも手伝ってくれよ」
「わしゃ手がねぇ」
そうだった……。
じゃあ獣人族にお互いでと思ったけど、こちらも無理とのこと。
「お前ぇ、気づいちゃいねえな。そいつはな、解除するにもある程度の魔力が必要なのさ」
「え、そうだったのか?」
「そうよ、志導くん。これ、魔法のアイテムだから使うにも解除するにも、魔力が必要なのよ」
そういや獣人族は極端に魔力が低いって言ってたな。だから解除できないのか。
俺とレイアで手分けして隷属の首輪を外して回る。
獣人族は全部で二十五人いて、気づけば順番待ちの列が出来ていた。
「天下無双、無敵の究極アルティメット鈴木尚人――っと。これで最後だよね?」
見渡して、まだ首輪が外れてない人はいないか確認する。
そういや、途中で逃げた獣人族もいたっけな。
「パティ、大丈夫か? 首は痛くないか?」
「兄ちゃん、アタシは大丈夫。兄ちゃんの方こそ怪我をしてるじゃん」
「見せて。私が治してあげるから」
兄貴と呼ばれた男の腕からは、今だに出血していた。ユタにつけられた傷だ。それをレイアが魔法で治癒する。
「傷が浅くてよかった。ユタが本気を出してたら、もっと深い傷だっただろうし」
「す、すまない……。お前たちを襲ったというのに、逆に助けられてしまった」
「いいのよ。お礼なら志導くん……彼に言って。彼があなたたちを救おうとしたのだから」
えぇっ、お、俺?
いや、俺はなんていうか……鈴木みたいな奴に命令されている獣人族が不憫に思えて、それで。
「もちろん。もちろんだとも。いや、もちろんです志導様」
「うぇ!? し、志導様? い、いや、そんな様って呼ばれるようなことは――」
「そんなことありません志導様っ。お命を狙おうとしたアタシらに、救いの手を差し伸べてくださったんだ。アタシらは志導様にご恩をお返ししなきゃ。ね、兄ちゃん」
「いやいやいや、そんな恩返しなんて」
元はと言えば鈴木が全部悪いわけで。同じ世界の、同じ学校の、同じクラスだった俺の方が、申し訳なく思うのに。
それに。
彼らはボロボロだ。戦闘でボロボロになったんじゃない。
初めから、着ている服はもちろんだけど、痩せ細っているしあちこち擦り傷青痣だらけだったし。そんな彼らに恩返しをしてもらうなんて。
「志導。散り散りに逃げてた獣人たちを捕まえて来たわ。どうする……あら、みんな解放したのね」
「隷属の首輪、どうやって外したのだ志導殿」
「あ、姿が見えないと思ったら奥さんたちは彼らを追いかけていたのか。首輪の方は俺の解析眼で、外すための合言葉がわかったからさ。それでね」
「便利なスキルねぇ~。この子たちね、一度は逃げたけど仲間が気になってたんでしょうね。その辺の空き家に隠れてたのよ」
なるほど。そして奥さんたちに捕まったのか。あまり抵抗した様子もないし、仲間がいるから大人しく連行されてきたようだ。
「バ、バサラ。どうして自由に!?」
「志導様が外してくださったのだ。お前たちも彼に頭を下げて許しを乞え。そうすれば――」
「いやいや、頭なんて下げなくていいから。と、とりあえず並んで。レイア、まだいける?」
「もちろんよ。私より志導くんが心配。眩暈がしたり、力が抜けて立ってるのも辛いとかはない?」
眩暈はないけど、力か……。首輪を外すとき、確かに首輪の方に何か吸い取られている感じはするけど。立っているのも辛いとか、そういったことは一切ない。
「んー。いや、ないけど。どうして?」
「魔力が減り過ぎると、そういう症状が出るの。それでも無理して魔力を消費すると、倒れちゃうのよ」
「魔力が枯渇すんだよ。気を付けねぇとは、ヘタするとおっ死ぬこともあんだぜ」
うわ、マジか。
「だけど志導の魔力は、結構多いわよ。魔術を使わないのがもったいないぐらいだもの」
「おう。かーちゃんの言う通りだぜ」
魔術かぁ。でも俺、魔法スキル持ってないし。
「アッパーが教えてあげればいいんじゃない?」
「オッチャ、オシエテヤレヤ」
あ、ユラ!
「ユラ、おかえり。駆け付けてくれてありがとう。助かったよ」
ユラの側にはユタがぴたっとくっついている。よっぽど嬉しいんだろうな。
ったく。まだまだ甘えん坊だよ。
「べ、別に戻る予定ではなかったのよ。でも、あいつらがね、町の様子を窺っていたからちょっと、ちょっとだけ気になったの。心配とか別にしていないわ」
まったく。素直じゃないなぁ。
「心配ぇしてたんだろう? 素直になれよぉ、ユラ」
「うるさいわねアッパー! おだまりっ」
「げはっ」
ユラの尻尾がアッパーおじさんの横腹にクリーンヒットする。
余計なこと言わなくてよかった……。
「え、嫌って、どういう内容なの?」
隷属の首輪を外すには、設定された合言葉を唱えるだけで外せる仕組みだった。
もちろん、その言葉を知っていなければ外す事はできない。無理に外そうとすれば激痛が全身を襲うと解析結果に出ていた。
その合言葉だが……さすが鈴木だなって内容だ。
レイアに耳打ちすると、彼女も苦笑いを浮かべた。
「手伝うわね」
「うん、頼むよ」
「なんでぃ。そんな変な言葉なのか?」
「まぁね。んっんっ――『天下無双、無敵の究極アルティメット鈴木尚人』」
兄貴の首輪に触れた状態で合言葉を口にすると、隷属の首輪の留め金がシャキっと音を立てて開いた。
たったこれだけで首輪が外れたのだ。
「は、外れた……本当に外れた!?」
「ぶはっ。な、なんちゅー合言葉だ。確かにこいつぁ、唱えたかねぇよな。ぶわっはっはっは」
「笑ってないでアッパーおじさんも手伝ってくれよ」
「わしゃ手がねぇ」
そうだった……。
じゃあ獣人族にお互いでと思ったけど、こちらも無理とのこと。
「お前ぇ、気づいちゃいねえな。そいつはな、解除するにもある程度の魔力が必要なのさ」
「え、そうだったのか?」
「そうよ、志導くん。これ、魔法のアイテムだから使うにも解除するにも、魔力が必要なのよ」
そういや獣人族は極端に魔力が低いって言ってたな。だから解除できないのか。
俺とレイアで手分けして隷属の首輪を外して回る。
獣人族は全部で二十五人いて、気づけば順番待ちの列が出来ていた。
「天下無双、無敵の究極アルティメット鈴木尚人――っと。これで最後だよね?」
見渡して、まだ首輪が外れてない人はいないか確認する。
そういや、途中で逃げた獣人族もいたっけな。
「パティ、大丈夫か? 首は痛くないか?」
「兄ちゃん、アタシは大丈夫。兄ちゃんの方こそ怪我をしてるじゃん」
「見せて。私が治してあげるから」
兄貴と呼ばれた男の腕からは、今だに出血していた。ユタにつけられた傷だ。それをレイアが魔法で治癒する。
「傷が浅くてよかった。ユタが本気を出してたら、もっと深い傷だっただろうし」
「す、すまない……。お前たちを襲ったというのに、逆に助けられてしまった」
「いいのよ。お礼なら志導くん……彼に言って。彼があなたたちを救おうとしたのだから」
えぇっ、お、俺?
いや、俺はなんていうか……鈴木みたいな奴に命令されている獣人族が不憫に思えて、それで。
「もちろん。もちろんだとも。いや、もちろんです志導様」
「うぇ!? し、志導様? い、いや、そんな様って呼ばれるようなことは――」
「そんなことありません志導様っ。お命を狙おうとしたアタシらに、救いの手を差し伸べてくださったんだ。アタシらは志導様にご恩をお返ししなきゃ。ね、兄ちゃん」
「いやいやいや、そんな恩返しなんて」
元はと言えば鈴木が全部悪いわけで。同じ世界の、同じ学校の、同じクラスだった俺の方が、申し訳なく思うのに。
それに。
彼らはボロボロだ。戦闘でボロボロになったんじゃない。
初めから、着ている服はもちろんだけど、痩せ細っているしあちこち擦り傷青痣だらけだったし。そんな彼らに恩返しをしてもらうなんて。
「志導。散り散りに逃げてた獣人たちを捕まえて来たわ。どうする……あら、みんな解放したのね」
「隷属の首輪、どうやって外したのだ志導殿」
「あ、姿が見えないと思ったら奥さんたちは彼らを追いかけていたのか。首輪の方は俺の解析眼で、外すための合言葉がわかったからさ。それでね」
「便利なスキルねぇ~。この子たちね、一度は逃げたけど仲間が気になってたんでしょうね。その辺の空き家に隠れてたのよ」
なるほど。そして奥さんたちに捕まったのか。あまり抵抗した様子もないし、仲間がいるから大人しく連行されてきたようだ。
「バ、バサラ。どうして自由に!?」
「志導様が外してくださったのだ。お前たちも彼に頭を下げて許しを乞え。そうすれば――」
「いやいや、頭なんて下げなくていいから。と、とりあえず並んで。レイア、まだいける?」
「もちろんよ。私より志導くんが心配。眩暈がしたり、力が抜けて立ってるのも辛いとかはない?」
眩暈はないけど、力か……。首輪を外すとき、確かに首輪の方に何か吸い取られている感じはするけど。立っているのも辛いとか、そういったことは一切ない。
「んー。いや、ないけど。どうして?」
「魔力が減り過ぎると、そういう症状が出るの。それでも無理して魔力を消費すると、倒れちゃうのよ」
「魔力が枯渇すんだよ。気を付けねぇとは、ヘタするとおっ死ぬこともあんだぜ」
うわ、マジか。
「だけど志導の魔力は、結構多いわよ。魔術を使わないのがもったいないぐらいだもの」
「おう。かーちゃんの言う通りだぜ」
魔術かぁ。でも俺、魔法スキル持ってないし。
「アッパーが教えてあげればいいんじゃない?」
「オッチャ、オシエテヤレヤ」
あ、ユラ!
「ユラ、おかえり。駆け付けてくれてありがとう。助かったよ」
ユラの側にはユタがぴたっとくっついている。よっぽど嬉しいんだろうな。
ったく。まだまだ甘えん坊だよ。
「べ、別に戻る予定ではなかったのよ。でも、あいつらがね、町の様子を窺っていたからちょっと、ちょっとだけ気になったの。心配とか別にしていないわ」
まったく。素直じゃないなぁ。
「心配ぇしてたんだろう? 素直になれよぉ、ユラ」
「うるさいわねアッパー! おだまりっ」
「げはっ」
ユラの尻尾がアッパーおじさんの横腹にクリーンヒットする。
余計なこと言わなくてよかった……。



